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#オフィスラブ
ゆうクロ。
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#イラスト部屋
ゆるまくさん
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プロローグ 天灯共同医療福祉院
死後の世界には、天界と灯台という二つの領域がある。
人々の祈りや魂を受け止める天界。
世界線と、そこに刻まれた記録を見守る灯台。
その二つが共同で運営している施設がある。
天灯共同医療福祉院。
通称――天灯院。
ここは、単なる病院ではない。
傷ついた身体や魂を診る者がいる。
乱れた香や記憶を整える者がいる。
任務から戻れなくなった者の復帰を支える者もいる。
そして、この施設には、人間だった魂だけが来るわけではない。
仙人。霊獣。精霊。
かつて獣として野を駆けていた者。
空を飛んでいた者。
川や海を泳いでいた者。
中には、生前一度も人間として生きたことのない魂もいる。
そんな彼らが死後、人の姿を得ることがある。
けれど――姿が人になったからといって、人間の暮らしまで突然分かるわけではない。
魚だった者にとって、服を着る理由は自明ではない。
鳥だった者なら、寝台より高い場所の方が安心することもある。
草食獣だった者にとっては、衣の擦れる小さな音が、背後から何かが迫る気配に聞こえるかもしれない。
厠へ行くこと。
衣を着ること。
不快な時には脱ぐのではなく、まず誰かに伝えること。
人間にとっては当たり前の生活習慣も、彼らにとっては初めて出会う文化である。
だから天灯院では、人型化する前から少しずつ準備を始める。
身体に布を乗せてみる。
決まった場所へ移動することを覚える。
嫌なら嫌だと伝える。
苦しくなったら、その場で耐え続けずに助けを求める。
それでも、うまくいかないことはある。
水場と厠の違いが分からない。
服がどうしても気持ち悪い。
寝台が怖くて、棚の上で眠ってしまう。
人の姿になった途端、自分の身体をどう扱えばいいのか分からなくなる。
けれど、天灯院ではそれを、
「人間らしくできない」
とは考えない。
犬だった者と、魚だった者では、これまで生きてきた世界が違う。
鳥だった者と、鹿だった者では、安心できる場所も違う。
できるのが早いか、遅いかではない。
これまでの生き方を、新しい身体と暮らしへ翻訳する方法が違うだけだ。
そして、その翻訳に付き合う職員たちがいる。
澄明(ちょうめい)
天灯院の福祉部門を統括する司救局長。
生前も、人々の救済や保護を担う司救として働いていた。
穏やかで、相手の話をよく聞く。
ただし、何でも本人の望みどおりにしてくれる人ではない。
本人がどうしたいのか。
その選択で本人は壊れないか。
周囲の誰かを傷つけることはないか。
それらを見たうえで、必要なら制限もする。
失敗した者を責めるより、
「なぜ失敗したのか」
「次は何を変えればいいのか」
を考える人である。
彼にとって救うとは、願いをすべて叶えることではない。
その者が壊れず、他者も壊さず、存在を続けられる形を整えること。
それが、生前から死後まで変わらない澄明の仕事である。
栖梧(せいご)
霊獣や動物由来魂の由来生態を、人型生活へ翻訳する専門家。
生前は獣医だった。
動物の身体を診るだけではなく、その動物がどんな環境で暮らし、何を安心とし、何を危険と感じるのかを見てきた。
その視点は、死後も変わらない。
服を嫌がる霊獣がいれば、我慢が足りないとは考えない。
布の重さか。
擦れる音か。
身体を締めつける感覚か。
尾や耳や翼に当たっているのか。
まず、理由を探す。
水から離れたがらない魚由来魂がいれば、水への執着を消そうとはしない。
代わりに、水を必要とする身体の感覚を、人型生活の中でどう残せるかを考える。
栖梧の仕事は、獣だった魂を人間らしくすることではない。
その魂の由来を残したまま、新しい暮らしへ移すこと。
だから彼は、問題行動を見つけると時々こう考える。
――本当に、本人の問題だろうか。
合っていないのは、環境の方ではないだろうか、と。
汀生(ていしょう)
天界所属の調律官。
生前は、音楽を治療や心身の安定に用いる音楽療法士だった。
死後はその経験を生かし、音、間、響き、香の揺れから、言葉になる前の感覚を拾っている。
天灯院には、
「痛い」
「怖い」
「嫌だ」
その一言さえ、まだ言えない者がいる。
言葉を覚えていないからとは限らない。
そもそも生前、言葉で意思を伝える生き物ではなかったのかもしれない。
尾の動き。
耳の伏せ方。
呼吸の変化。
水の揺れ。
小さな声。
あるいは、長い沈黙。
汀生は、それらを簡単に「無反応」とは決めつけない。
言葉になるより先に出ている、その者なりの音を拾う。
そして、やがて本人自身が、
「苦しい」
「やめてほしい」
「ここから離れたい」
と伝えられる方法を探していく。
彼にとって調律とは、乱れたものを正しい音へ直すことではない。
その者が、自分自身の響きを失わずにいられるよう整えること。
それが汀生の仕事である。
天灯院には、今日もさまざまな魂がやってくる。
初めて服を着る者。
初めて二本の脚で歩く者。
人の姿になっても、どうしても水辺でなければ眠れない者。
高いところへ登ってしまい、降り方が分からなくなった者。
人間なら知っていて当然だと思われることを、一つも知らない者。
ここでは、そんなことも珍しくない。
職員たちは今日も、一つずつ付き合っていく。
時には真剣に。
時には頭を抱え。
時には、
「そこから先は脱がないでください」
と全力で止めながら。
由来は、消さなくていい。
人間になる必要もない。
ただ、これから暮らす世界で、自分も周囲も傷つけずに生きていく方法を探せばいい。
できないのではない。
まだ、翻訳の途中にいる。
これは、死後の世界にある少し変わった医療福祉施設――
天灯共同医療福祉院と、そこを訪れる魂たちの物語である。
コメント
1件
うわああああこの世界観、めっちゃ素敵すぎる!!😭💕 「人間らしくできない」じゃなくて「翻訳の途中」って視点がもう優しさに溢れてて、読んでてじんわりしたよ…。魚だった子が服を嫌がるとか、鳥が高い場所に登っちゃうとか、そういう生態を否定せずに付き合う職員たちの姿勢が最高。澄明さん達のプロフィールだけでキャラの深みが伝わってきて、もう続きが気になって仕方ない!!この施設でどんな物語が紡がれるのか、ゆめかは全力で追いかけますッ📚🔥