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それから私たちはそつなく、過ごした。

日常の生活、朝活の運動も続いている。

叔父さんが謙太が瘦せたなぁと言ってくれた効果もあってか彼は早起きして一緒に朝活して健康にも気を遣うようになってくれた。ほっと一安心。


セックスの回数は少し増えた。

なぜならなんだか彼と体を合わせると心も温かくなって癒されるからだ。なぜだろう今までにない温かいものが。癒されるわ。


謙太の優しさをなおさら知って私は彼の事をさらに愛おしくなった。


正直鷲見さんとのことは証明されていないけども私たちの関係が安定すればもう邪魔されることは無いのだろう。


どこまでもなにをしても優しい謙太。カウンセリングも二人で受けに行ったのだ。

不妊治療クリニックも今度予約したから二人で行く。二人で共に歩んでいきたい。そう思っている。その気持ちがさらに強くなった。

過去を乗り越えて私たちは生きていきたい。

私は彼にやさしくしてもらった分、それ以上にも彼を癒してあげたい。


美濃里さんとも何回かご飯一緒にして色々話もした。今度清乃さんの家族にも会いに行こう、そう決めた。もちろん謙太も連れてだけど。


仕事の方もちょっと大城さんに任せすぎたかもしれないけど彼女が山田課長と猪狩課長の間を取り持って業務をスムーズにしてくれて本当に助かっている。

職場も育児中だから、時短だからとかでダラダラしていた関係もみんな助け合って意識しあっているおかげで前のときよりも雰囲気も良い。ホッとしている。でも油断しちゃダメだ、どこかで誰かは無理しているかもしれない。まだ気づかないだけで。


あ、どうやら大城さんと山田課長は交際上手くいっているようだと猪狩課長から教えてもらった。

今度あなたが聞いてみたら? と言われてるから明日ランチ一緒にどうかって誘ったら大城さんが山田課長とアイコンタクト取ってハイって答えた。


いいわねぇ、ほやほやのカップル。でも山田課長が離婚した理由ってよくわかってないし高校生の娘さんもいるからね。

困難を極めるのではと思いつつもあまり介入せずに見守ってたらいいかな。仕事に支障があったらいけないし。


あぁ、ほほえましい。


そして今のこの時が本当に充実してて気持ちもよくて晴れやかである。


そういえば……あの謙太の死ぬ日ってどうなるのだろう、このまま来るのだろうか。

すっかり忘れていた。絶対朝は一緒に出勤するって決めている。車通勤でもよかったんだけど交通事故のリスクを考えると……って考え過ぎかしら。


もうこれ以上繰り返すことなんてないよね。これからの選択も大事になると思うけど……私は謙太といろいろ語ってお互いをもっと知っていって私はさらに彼を好きになっていった。


出会った頃よりも付き合ってた頃よりも結婚した時よりも。こんなに多幸感に満ち溢れた毎日。もう謙太を死なせやしない、わたしも寿命を最後まで全うする。




そして多分その日の朝。


謙太とのコーヒータイム。メールの着信。

彼は平然とそのメールを見る。

「やば、お得意さんから連絡来た」

ここで急いじゃ駄目よ、謙太。カウンセラーさんにも言われているけどやっぱり数回のカウンセリングでは性格は変えられないよね。少し焦っている。


私は謙太の手を握って

「焦らず、ゆっくり行きましょう」

というと彼はにこっと微笑んで頷いた。


「……そうだね。でも少し気持ちはやめで良いかな」

「まぁ、そうね。私も一緒に行くから」

と私は身支度をした。



少しずつ動機が……大丈夫、もう謙太は死なない。

自殺でも病死でもない。大丈夫。謙太は死なないんだから。この日を乗り越えれば!


私は彼と共に駅に向かう。大丈夫、大丈夫と言い聞かせながら。


いつも通り。今までの中とは違うのは謙太と一緒にホームで並んでいること。


先頭……。私は後ろに下がった方がいいのではと毎日二列目三列目に謙太と並んでいたけど今朝はなぜか先頭。こんな時に……大丈夫、大丈夫……。


すると謙太が

「梨花ちゃん、大丈夫かい」

って声をかけてきた。人はだんだん増えてきた。毎朝本当に込みあう、この時間帯。

「大丈夫だよ」

「ならよかった」


なんでこうも心配してくれるのだろう。私もあなたの事が心配よ。不意に彼の手を握ってしまった。目の前は壁だし、混みあってるから誰も見ないだろう。

謙太はびっくりして私の方を見ている。

そして私を見てほほ笑んだ。


「心配しなくていいよ。ここに立っていれば大丈夫」

「え?」

ここに立っていれば大丈夫という言葉にふと何で? と思ってしまった。すると謙太はいつも通りにこやかな顔をしていた。


「君だったら気付いてくれるかと思ったけどさ、ここなら大丈夫」

「ここなら?」

「うん、前はここじゃないところに立っていたからさ」

前は……?


「僕、何度もこの生活繰り返しているんだ」




あなたはそうやっていつも微笑んでいた〜タイムループで夫がクズ認定された件〜

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