テラーノベル
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「眠り続ける奇病?」
「はい、それまで元気だった人が急に目を覚まさなくなったとか。最近突然始まって、町の北側に拡がっているらしく。こちらにまでいつ拡がるかと噂に――。今のところ被害は数人らしいのですが」
「ふーん、初めて聞くね」
「私は、カナ様の症状を思い出したのですが」
あぁ、あれってたしか魔獣の……。これもそうだったり?
「魔獣が何かしらしている場合は私達では知覚できませんから。奇病と呼ばれる様になったのでは?」
「かもしれないねぇ。リサちゃん、魔獣は精霊にも知覚出来るんだよね? あとで調べに行こうか」
「うん、ライトはわかっていたから――」
「そこに風の精霊が居たりしてくれるといいんだけど」
なるほど、でも、サイズが人と同じくらいだと正直見分けがつかないんだよね。見えてるか見えてないか、毎回聞くのも大変だし。
「あ、アリスちゃん」
「ん、何?」
「さっきね、温泉でメリエルちゃんによく似たエルフの女の人を見かけたのだけど」
アリスは思い当たる事があるのかすぐに、あぁ、という顔をしながら答えてくれた。
「カノンに会ったのかな? メリエの先祖のお姉さんだよ」
「え?」
「エルフは長寿だからね」
もしかして? と思って聞いてみたら、本当に親戚だった。しかもご先祖様の姉弟って、いったい幾つなのだろう。女性の年齢は聞いちゃ駄目なんだと思うけれど。とても気になる!!
「彼女、弟を盗られたって思ってるから、人の事をあまりよく思ってないんだ」
「そうなんだ」
だから、少しだけ、つんけんした感じだったのかな。
「メリエル様の……、ご挨拶に伺わないと」
「ルード、今の話聞いてた?」
「そう、ですが――」
ルードは唇に指をあて何か考え事をしていた。
カトル王子の婚約者の遠い親戚。微妙に遠い関係者だけど、カトル王子の側近だからご挨拶くらいって思うのかな?
本当に、彼は律儀だなぁ。
ーーー
日が落ちて、暗くなった、水車と風車が静かな音をたてて回る街。空には三つの月がそれぞれの色でぼんやりと光っている。
もうすぐ雨でも降るのかな?
川沿いにだいぶ歩いて、街の北へとやってきた。
山の裾にあたるのか、かなり傾斜がある。
「この辺かなぁ?」
「うん、たぶんね」
受付の人に噂話の事を聞きに行き、目を覚まさせることが出来るかもしれないと伝えると、眠って起きない人の家を教えてもらえた。
ルードは少し後ろからついてきている。他に何か探しているのかな?
緑の看板の家、ここだ。
「なんて書いてるの?」
「手摘み山菜料理のお店だねぇ」
「山菜料理のお食事処!」
「の、ご主人が倒れてるから、お休みみたいだよ」
小さな看板が入り口に掛けられていた。
「リサ様、先程、食事をお取りになりませんでしたか?」
ルードが冷静に突っ込んできた。
うぅ、だって美味しそうなものって食べてみたいなって思っちゃうよ? さっきのご飯も美味しかったけど、それとこれは別なのよ!
これは気合いを入れて、治せそうなら治さないと!!
少し動機が不純になってしまったが、私は気合いを入れた。
トントンとアリスがお店の入り口を叩くと、中から奥さんだろうか、女性のエルフが出てきた。
「はい」
「ボク達、ご主人の話を聞いて――」
エルフの女性に説明をすると、「どうぞ」と店の中に案内された。
「旅をしている方なら、どこかで似たような症状や、薬を知っていたりしませんか?」
女性のエルフは、ノッテ、ベッドの上に静かに眠る男性のエルフはブラウという名前だそうだ。
いつから眠っているなどを一通り教えて貰ったあと、すがるように聞いてきた。
アリスは落ち着いてと、ノッテをなだめている。
たしかに、カナちゃんのあの時みたいだけれど……。と、いうことは、またアレをして向こうに行かないといけないのかな?
「その役目! アタシが貰ったわ!」
いえ、結構です。
「……」
ウォータはルミナのことでも考えてるのかしら。
「「僕達の出番?」」
嬉しそうにミニライト達が飛び跳ねている。
皆何処に行ってたの? 私の後ろがとても賑やかになった。
「おい、リサ。そこの耳元にいるぞ」
え?
「そこの男の耳元だ」
そう言って、ウォータはブラウさんを指差していた。
後ろから、あー! とか、何言っちゃってくれてるのよー! とか聞こえる気がするけれど。
「すいません、少し近くで診てもいいですか?」
ノッテに許可をとり、ブラウに近付いて耳元を見た。
あっ……。小さなネズミ? 違う、これはもぐら? エルフの長い耳の陰に小さな動物がすやすやと眠っている。もしかして、この子が原因?
「アリスちゃん」
ちょいちょいと手招きして、彼に確かめる。
「ここ、見える?」
指差して見えているかを問うが彼は顔を横に振った。
じゃあ、これはちっちゃい魔獣さん?
「そうだ。それは魔獣だな。小さいし、少し驚かせれば逃げるだろう。わたしの名を呼べ」
ウォータがそう言うので、ブーブー言ってる精霊達をスルーしながら彼の名を呼んだ。
この魔獣を驚かせろ。
「ウォータ」
小さく呟くと、ブラウの耳元に小さな水球が出来た。魔獣が中に閉じ込められている。
急に水中に沈むことになった小さなもぐら魔獣は、パッと目を覚まし前足でパシャパシャと泳ぎ進めて水球から脱出していた。
ごめんよ、もぐらくん。
水球から、出てきたもぐら魔獣は、ぱたぱたと何処かへ逃げていった。
これで、上手くいったかな?
「ん、んぁー?」
「ブラウ!?」
すぐに目を覚ましたブラウを、ノッテは抱きしめていた。
「よかった、ブラウー、わーん!」
何が起こったのか分からないブラウは、他人が居るためか、ノッテを抱きしめて良いのかどうしようと戸惑っていた。
コメント
1件
読了しました!今回もほっこりしました〜。睡魔の魔獣がまさかの小さなもぐらちゃんだったのが可愛い反面、リサちゃんが「ごめんよ、もぐらくん」って心の中で謝ってる優しさがじんわり来ました。ウォータの水球であっさり解決するのも、精霊たちとの距離感が絶妙で好きです。100話超えても毎回新鮮な空気があって、花月夜れんさんの安定した筆力を感じますね🌷
月城 蓮桜音
34
羽海汐遠
14,514
#オリジナル
ゆいらーめん
512