「私はママみたいになるっ!!…あぅっ、」
「夢を語るのは結構だけど、高校受験は目の前だぞ」
「…はぁ、わかってないねぇお姉ちゃん☆私はアイドルになる人間だよ?芸能科がある高校は面接重視!学力なんて参考程度☆アイドルになれば受験勉強なんてしなくて良くてっ!一石二鳥☆「豆知識感覚で人生掛けたギャンブルすんな」
「、むぅ、」
「アイドルを夢見るのは構わんけどさ、アイドルに夢を見るなよ」
「、」
「基本薄給だし、30手前で定年だし、日常生活は常にファンの監視が付きまとう。卒業後の業界生存率も低くて、結局他業種に就職する人がほとんどで、こんなにコストとリターンが見合ってない仕事も無い。」
「、っだからなんだって言うの?したいことをするのが人生でしょ?コストとかリターンとか言ってたら何も出来ない!何も出来ないまま終わる人生だってあるんだよ?、私はそんなの嫌!」
「……勝手にしろ。監督の所行ってくる」
ーーーーーー
「……」
『、はいっ!』
「星野ルビーさんのお電話で宜しいでしょうか?」
『はい!星野です!』
『はい…!』
『はいっ!』
『……はあ、そうですか…ありがとうございます、』
「では、次回のご参加をご期待しております」
「……ありがと、監督。」
「……、双子の妹も騙せるんだから、役者としては中々だ。本物の担当者から電話掛かってきたらどうする。」
「…ルビーの携帯から辞退のショートメッセージ送ってあるし、番号も着信拒否設定しておいた。抜かりはないよ。」
「、俺にはわからんねぇ、なんでそこまでして妹の夢を潰そうとする?あの子は相当美人だし、案外イケるかもしれんだろ、」
「……皆まで言うなよ、ルビーをアイドルにはさせない。アイと同じ轍を踏ませない。絶対に。」
「……、このシスコンが、過保護が過ぎるぞ、」
…俺一人でいい。俺一人が、『それ』をやり遂げるから…
ー〜
「「スカウトされたぁ!?」」
「そう!所謂地下アイドルなんだけどねー!これって運命だと思うの!前々から地下アイドルのメンバー募集とか眺めてたんだけど!ママもスカウトでアイドルになったでしょ?やーっぱ『導かれてる』ーって思わない!?」
「…それ本当にアイドルグループ?」
「なんか怪しい仕事じゃなくて?」
「そんなんじゃないし!」
「……どういう契約か、ちゃんと確認してる?」
「今度〜!ライブ見せさせてくれるって!その後契約とかするみたい!」
「「ふーーーん……」」
「楽しみだな〜〜!」
〜〜〜
「……全く面倒な……。どうにかして辞めさせないと」
「またそう言う、アイさんの件があって、可愛い妹に同じ道を歩ませたくないって気持ちには賛同できるわ。…私だって、あの時ああしていたら、今ならこうしていたのに…って、未だに考える。あんな気持ちは二度と御免。」
「……ルビーを娘だと思って育ててきた。この子は絶対守ってみせる、…でも、娘だからこそ、ルビーの気持ちは止められない。顔立ちもどんどん、アイに似てきてる…残念ながら『資質』がある。……どの道、こうなっていたのよ。」
「…良い悪いとか考える前に、やることがある。……ちょっと、事務所の名刺借りるよ。」
「えっ?」
「…何する気?」
ーーーーーー
「こんにちは。ちょっといいかな?」
「…なんですか?」
「俺、こういうものなんだけど…」
「…えっ、苺プロ!?」
「、知ってる?」
「はいっ!B小町のですよね!うちのママがファンで〜!!」
ーー
「わ〜〜!ここが苺プロ!…スカウトさん若いし、タチの悪い勧誘かと思いました〜w」
「あはは、 」
「ららちゃんは今イリブって事務所で活動してるんだよね」
「はいっ!」
「うちは、そこより良い条件を出したいと思う」
「「!!/!?」」
「今、どういう感じの条件で働いてるの?」
「えっと…ライブ全部出る前提の最低保証給がちょっとと、あ、そこからライブ後のチェキ会で撮影枚数に応じてバックがあって、それがメインの収入。そこから衣装代とか諸々引かれていって、移動費とかメイク代も自腹だから…月収10万行かないことが殆どかな、…」
「……今のグループに不満はある?」
「そりゃありますよ!今運営に推されてる子居るんですけど、めちゃくちゃ贔屓で!
なんでかって言ったら、運営と付き合ってるみたいな?歌が上手いわけでも、顔がそこまでいいわけでも無いし、ガチ恋釣りで他のメンバーの客取るような子なのにさぁ……
私は真面目にやってるのに、運営がしっかりしてないから跳ねないんだよ。、
メンバー内の空気最悪だし、何人か抜ける気配してて…運営もなんかスカウトしまくってるって聞くし、苺プロに移籍出来るなら私は____」
〜〜
「地下アイドルの運営って、実績ある人もいるけど、アイドル好きが高じてやってる、半分趣味みたいな人も多いのよ。
もちろん、今の子の話が本当かどうかも怪しいわよ?メンバー内の嫉妬や軋轢、運営に対する不満は、ありもしない噂を産むなんてザラにある。
そもそも若い女の子の集団をまとめるのって、めちゃくちゃ大変なんだから。B小町の時も、アイばっか人気だったもんだから、『贔屓』って…ぁ”あ…思い出したら胃が…」
「……どの道そんな噂立つようなグループに、ルビーを入れる訳には行かない。」
「じゃあ、どうするの?」
「…やりようはいくらでもあるよ。探偵雇ってネットにバラまいて…」
「…そういう冗談は……」
「冗談じゃないけど?」
「……俺はルビーにアイドルやらせるつもりは無い。…少なくとも、信頼できない運営の元では。」
「……ちなみにどう?今の子本当に雇うってのは。」
「うちはアイドルもうやってないの知ってるでしょ。……それに、仲間を悪く言う子を入れるつもりは無いわ。」
〜〜
「お先、失礼します」
「お疲れ様ー、…」
「…はぁ、………」
ーーー〜〜〜ーーー
「…えへっ、」
「じゃーんっ☆ねぇ、どう!?」
「可愛いわよ?」
「えへへ、やっぱり大事な日はオシャレしなきゃだよねー!☆はー、楽しみだなぁ〜っ!☆」
…本当に……
「…ルビー、あなた本気なのね?」
「……、うん。」
「……あなたがこれから入ろうとする世界は、大変な所よ。売れなくて惨めな思いをするかもしれない。…給料面だけじゃない。私生活でも___「分かってるよ!…それはアクアにも言われたって、」
「ストーカー被害だって、そこら中にありふれた話よ。それでも__「当たり前だよ!…だって、なれるんだよ?やっと私もアイドルに……。絶対、ママみたいになるんだ!!」
「……本気か?」
「本気だよ。」
「…ならそのグループに入るのはやめなさい。」
「、え…なんで、私…っ本気でアイドル…っ!」
「本気なら、うちの事務所に入りなさい。」
「…っ!」
「苺プロは、10数年ぶりに、新規アイドルグループを立ち上げます。」
ーー〜〜
「ここに割印、押して」
「わりいん?よく分かんないけど、ここに押せばいいんだ。」
「はい、これでルビーは苺プロ所属のタレント。なんかしたら訴訟するからね?」
「めちゃこわ」
「…冗談じゃないからね」
「えへ、〜〜♪♪」
「…芸能科入るために必要な手続きでもあるから、怒らないでよアクア」
「……別に反対してない。」
ーーーーーー
ぴーーんぽーん。
「アクアちゃんよく来たわね!!」
「監督、起きてますか?」
「寝てるけどいいわよ〜、叩き起こしちゃって!今日もご飯食べていく?」
「いえ、お構いなく」
「……おぉ、来たか。」
「おはようございます。」
「いい感じに編集してくれ。」
「りょーかい。」
俺はまだ中学生。バイトも出来ない歳だから、現場で経験を積むことも出来ない。だから監督の元で、弟子みたいな形で映画製作の手伝いをさせてもらってる。
「…なるほど、結局妹はアイドルの道に進む訳か。…いいのかよ。お兄ちゃん的には。」
「どこの馬の骨か分からんグループでやられるよりは。身内が運営なら、悪いようにはならないだろ。」
「姉妹共々、芸能の道か。」
「共々じゃない。今の俺は裏方志望。…あと兄妹って言え。姉妹はなんか嫌だ。」
「また役者やる気になったんじゃないのか?妹と同じ高校受けるんだろ?」
「芸能科受けるのはルビーだけ。俺は一般科。」
「……お前が俺に弟子入りしてきた時は、絶対役者になるって顔してたもんだが、」
「……」
俺にとって役者というのは、単なる手段だ、
アイを死に追いやった男を…俺の父親を見つけ出して、アイの受けた苦しみを味合わせるための。
奇しくもやつを探し出す鍵は、俺自身にある。体毛や粘膜のDNA鑑定で特定出来るはずだ。だけどその為には、芸能人に直接接触できるポジションを得る必要がある。
役者はそのための最短手段だが、芸能界に関わるってだけなら、ADでも裏方でも構わない。
「…端役とはいえ、監督の作品に何本か出演させてもらってよく分かった。…俺には演技の才能が無い。『頑張ってるが売れない役者』って言う、世の中に腐るほど居る人間のひとりでしか無かった。…俺は、アイみたいに特別な何かが無い。分不相応な目的を持つべきじゃないんだ。」
「…はっ、ガキが夢見なくて誰が夢見んだよ。夢を諦めるなんて、大学生になってからでもまだ遅いぞ。
…いいか、20年夢を見続けてる 中年からのアドバイスだ。1度しか言わねぇからよく聞けよ。……誰にでも夢を見る権利はある。宝くじだって、買わなきゃ当たら「泰志ー?ご飯できたわよー?」
「か、母ちゃん!!今いい話してんだから、割って入るな!!」
「そんなこと言われたって分からないわよ!!来るの待ってたら味噌汁冷めちゃうでしょ!?」
「話が終わったら行くから!!」
「……俺もお前みたいに燻ってる時期はあった。……だけど、」
「あーあーもうこんなに散らかしてっからに……ったくもー、」
「早く行ってくれ!!」
「……なぁ、もう四十半ばだろ?親元からそろそろ離れたら?」
「都心に実家あったら出るメリットないの!俺みたいなやつ意外と多いから!!クリエイターあるあるだから!!!」
「……ともかくだな、宝くじも買わなきゃ当たらねえ。もっと自分の____」
…子供部屋おじさんの言うことって響かねえな。
「……俺にもアイみたいな才能があると、信じてた時期があった。だけど俺には、アイみたいには……「アイアイアイアイうるせぇな、お猿さんかよ…」
「確かにアイは凄かったよ。本当に特別な人間だったのかもな。」
「……だけど、お前はアイにはなれないし、アイもお前にはなれない。アイに今のお前みたいな制作の知識があったか?お前みたいに頭の出来が良かったか?
……1度や2度の挫折でひよってんじゃねぇ。そういう言葉は、使える武器全部使ってから吐け。凡人ヅラするには10年はえぇよ。役者やりてぇんだろ?顔に書いてある。」
_______『アクアは役者さん?』
「……なぁ、監督。」
「ん?」
「……俺は、」
「アクアちゃんもご飯べてくわよねー!!お茶碗よそっちゃうわよー?」
「今早熟がなんかいいこと言おうとしてたところだろ!?入ってくるな!!」
「知らないわよ!!」
………
ーーー〜〜〜ーーー
ここは、陽東高校。中高一貫で、日本でも数少ない芸能科のある学校。
この芸能科は、誰でも受けられるわけでは無く、芸能事務所に所属している証明書が必要となる。
「…星野愛久愛海、です。」
「、すごい、名前だね??」
「偏差値70!?なんで、偏差値40のうち受けたの!?」
「…校風に惹かれまして……」
「そこまで校風に魅力を感じたの!?」
〜
「どうだった?」
「多分平気!そっちは?」
「問題無い。万一弾かれるとしたら、名前のせいだろうな。」
「あっははは!☆確かに本名、「星野アクアマリン」だもんね!みんな面倒くさがって『アクア』って呼ぶけど!」
「………あくあ、?」
「「?」」
「星野アクア!?」
「アクア!?アクア!?!?あなた、星野アクア!?」
「……誰、だっけ」
「あ!あれじゃない!?……重曹を舐める天才子役」
「10秒で泣ける天才子役!!」
「映画で共演した、有馬かな!!」
「…あぁ、久しぶり。ここの芸能科だったのか。」
「良かった…ずっと辞めちゃったのかと、……やっと会えた……」
「…入るの!?うちの芸能科!入るの!?」
「……いや、一般科受けた」
「なんでよ!?!?」
コメント
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また神作だ 続き楽しみにしてます!
有馬はアクアの事を男性だと思ってるのか女性だと思ってるのか……!続きが楽しみです!
これから百合物語が始まるのか…()