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この体に生まれてからバレーボールを触ったのは初めてで、前世であれだけ触っていたからとはいえ、じゃあもうなんでも出来ますね、とかそういう軽いノリでは上手くなれなかった。体が小さいから動かしにくいのも理由の一つだけど、やっぱり一番の理由はボールのサイズ感に慣れなかった。だから俺がまともにボールを操れるようになったのは練習を始めてから二ヶ月も後のこと。
また、俺の家は山の方にあって、周りの目を気にせず思いっきり走り回れるし、バレーの練習もできるから、次第に俺はバレーの技術を身につけながら体力もつけていった。
それで、俺が生まれてから約五年ちょっと経過したその日、毎日飽きずにバレーに明け暮れる俺を見かねた両親が、「バレークラブ入ってみる?」と何とも魅力的な話を持ちかけてきたのだ。断る理由なんてない。早く自分以外の人とパス練がしたい。それにスパイクも打ちたい。何度も何度も、首が取れるんじゃないかってくらい頷く俺に、両親は「頑張ってね」と笑い、俺のくせっ毛で、親譲りのオレンジ色の髪を優しく撫でた。
母「じゃあ今日からこの子をよろしくお願いします」
コーチ「はい。こちらこそよろしくお願いします」
母「怜、あまり迷惑をかけちゃダメだからね。あと大きな怪我には気をつけて!」
「うん!」
そして待ちに待った日。俺が本格的にバレークラブに入る日だ。もう今日から本格的にボールに触る練習をするらしい。このクラブは場所が山の方にあるということもあり、そこまで入っている子供が多くない。人数的に言えば、ギリギリ六体六の試合ができるくらいだ。でも全然それで構わない。むしろ今まで一人で練習してきた俺からすれば、パス練の相手をしてくれる人が一人もいてくれるだけで有難いことだから。
「俺、日向怜! よろしくなぁ!」
この辺りはさすがは子供と言った感じで、全員気さくな子供ばかりだった。お陰様で孤立なんてしなかったし、むしろ俺がレシーブする度に「すごい上手!」と言ってくれたりと、本当にいい子たちばかりだ。このクラブの中で俺が一番年下だったということもあり、皆からはたいそう可愛がられる日々が続く。
皆と練習を重ねていく中で気づいたことがある。この体はやけにバネとスピード、そしてスタミナがあった。嬉しいことなんだけど。
俺の中で、考えないようにしていたことが現実味を帯びてくる。
この髪色、苗字、家の場所、そしてこの体。
……この体は、日向翔陽なのではないか。