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「うおおっ、なんだその馬っ! そっちのが早そうじゃん! そっちにしよっ! はよ! そっちに!」
「ダメだ。俺は別の用事で少し違うところに寄ることになる。その後すぐに合流するから先に向かっててくれ」
ダリルってにいちゃんは一緒には来てくれないみたい。まあ、用事があるってなら仕方ないな。とりあえずこの最強の巨人とやけにごっついドワーフが来てくれるんだっ。
「ならにいちゃんはあとでな! 早くっ! 父ちゃんが死んじまうっ!」
あれからもう4日らしい。今でもまだ閉じ込められたままの父ちゃんはもしかしたらもう……なんて思ってしまうけど、俺までそう言っちゃほんとに死んでしまうかもしんねえから、どこか嬉しそうで悲しい顔した姉ちゃんも連れて早く行かなきゃっ!
荷物を載せるみんなと、俺たちの馬にエサをくれているにいちゃん。ダリルにいちゃんはいい奴だ。馬を大事にする奴はいい奴だって父ちゃんが言ってたからなっ!
「お、お、おう⁉︎ なんか馬たちが元気じゃね? 荷台引っ張ってんのに……よっぽど退屈だったんかな? ごめんよ、ほったらかしにしちゃってさ」
街に出たり平地で活動する時のために馬たちを飼っているけど、広い平地で放し飼いだから街でずっと繋がれて辛かったのかも知れない。速さがいつもの5割増しで、なのに元気いっぱいだ。
「でもそれよりも巨人族ってあんななのかな? ちょっと怖い──いや、すごいんだけど……あれは……」
俺が乗ってはしゃしでいた馬の後ろを半裸で走る巨人族のジョイスにいちゃんを見てスンッと冷静になれた。
あのデカブツがのれる馬ってどんなだろうってキョロキョロ探してた俺の目の前で「筋肉ダッシュか、気合いが入るなっ」とか言って服を弾けさせた時から何かスゴいものだとは思ったけど、俺と二人乗りで荷台引いてるとは言え、姉ちゃんがあわあわ、するくらいのスピードの馬に脚でついてくる生き物がいるとは知らなかった。
ダリルはその頃、別の山にある断崖絶壁で白い百合科のような花を摘んでいる。
「うええっ! すんげええっ、まじか! にいちゃんマジなのかぁ⁉︎」
「ひいっ! 落とさないで下さい〜!」
「まかせろぉっ、わあっはっはっはっぁー!」
麓に到着した俺は、ここから1時間ほど登ればもう村に到着だって言ったんだ。
そしたら巨人にいちゃんが、「そんな悠長な事をしてる場合じゃないだろう! 筋肉トレッキングだぁっ!」と既にない服が弾け飛ぶような姿を錯覚させる勢いでポージングしたかと思うと、俺たちを肩に乗せて山道を飛び跳ねながら走り出したんだ。
巨人にいちゃんの呟きによれば、「ヒラメ筋が歓喜しておるわっ」らしい。
巨人にいちゃんが変態的にすごいのもそうだけど、俺たちと同じドワーフっていうバルゾイおじさんも凄い。俺たちの荷物をひとまとめにして背負っているのに、この速さに遅れていない。
ボサボサ頭の白髪で、髭もじゃ。鹿の毛皮のベストの下は地肌らしくって、首には同じく鹿のツノで作られた首飾りが今は振動で跳ねている。
腰にはこれも何かの毛皮のようだけどミノのようにしてあり、ズボンは薄茶色で膝下あたりから足首までは布で巻き付けて絞ってある。その身体は逞しいけどドワーフらしく身の丈は150cmくらい。
俺たちはドワーフとはいえあそこまでデカい筋肉はないし、服装も街で買えるシャツやジャケット、ズボンにブーツ。どうもはぐれのドワーフというのは色々と俺たちとは違うらしい。
その頃、ダリルは山の頂にて木の実をついばんでいた氷雪幻鳥と呼ばれる巨鳥を嘴を鷲掴みにして力ずくでねじ伏せていた。