村に到着しても、立ち寄る事なく荷物だけ置き去りにして坑道の入り口まで来た筋肉トレッキング。
そこには掘っては崩れ、一進一退の作業に疲れ果てた仲間たちの姿があった。そうやって俺の居ない間も必死で作業してくれていたことに涙が出る。
「ひいっ? 魔獣の襲来かっ⁉︎」
「くそっこんな時にっ……っておまえはトマスかっ⁉︎ リエまで。もういいのか? いや、その魔獣は⁉︎」
「みんな、ありがとう! もうこれで解決するよ!」
魔獣と呼ばれて怖がられたのに巨人にいちゃんはちょっと嬉しそうだ。何故だろう。
そして、このあとの展開には驚くつもりはない。ワクワクしかない。姉ちゃんは隣で四つん這いになって鼻水と涙を垂らしてえぐえぐ言っている。
そして始まるんだ、筋肉フェスのクライマックスが!
「バルゾイ殿っ! サポートはお任せしますぞ!」
バルゾイおじさんは白い魔石を手にして、「殿……?」と戸惑っている。
「筋肉ぅっ……マイニングっ!」
「うおおっ! まさかとは思ってたけどにいちゃんマジ半端ねえっ!」
崩れたあとのとはいえ、ツルハシやスコップでやっと掘り進められる山肌ににいちゃんの手刀が突き刺さる。抜く時には一塊のつちくれや岩が握られていて、それが延々と繰り返されている。
ある時はツルハシのように、けれど丸ごと削り取る勢いで、ある時は下から掬い上げるようにして後方へ投げ飛ばして。そんなだから誰も近づけない。
それらを避けながらバルゾイおじさんは手からキラキラを振りまいている。そしてそれはだんだんと奥へと進む道を覆うように巨人にいちゃんが掘り進めるペースに合わせて微調整しているようだ。ドワーフなのに思ってたのと違う。
そうして出来てきた道はこれまでと違って崩れる事なくそこにある。どちらの仕業かといえばバルゾイおじさんのキラキラだと思う。見た感じでは崩れてておかしくない壁や天井の状態なのにしっかりと固定されている。
そんな中、とうとう父ちゃんが掘り出された。両肘で踏ん張り、崩れた坑道の中で空気を確保していたのだろう。まだ辛うじて息をしているその身体は、あちこちが押し潰された酷い有り様で、助け出せた安堵と同時にもう助からないんじゃないかって思った。
その頃ダリルは人間ではたどり着く事叶わずと言われる清水にて俗に聖水と呼ばれる精霊の祝福に満ちた水を採水し終えて合流にむかっていた。
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