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密室殺人が起きた。
白いレースのカーテンの隙間から、外の土の匂いがする。
昨晩は雨だった。
塵と埃、砂が混じり合った臭い。
湿った地面の照り返しでレースが光る。
日の光を感じて体を起こしてみると、まさにそこが密室殺人事件の現場だった。
この事件の被害者は僕だ。
鍵が内側から掛かった扉、窓は開け放たれ風でレースが揺れる。
部屋は完全な密室だった。
風に涼しさを感じると目の前で縄が、首を括るのに適した縄がちらちら揺れる。
犯人は凶器を持ち去ったようで、死因を推定できるようなものは部屋に残されていない。
この事件の最大の謎は、僕がどうやって殺されたのか分からないことだ。
部屋の扉は、昨晩僕が鍵を掛けて閉めた。
だから部外者の犯行は考えられない。
窓は、外で雨が降っていたので、しめたと思い喜んで開けた。
僕はずぶ濡れになった。
強い風に煽られて僕の体に当たる飛沫。
この部屋に天井はないので雨がそのまま体に当たっていた。
僕は椅子に立ち、上から吊るされた縄に首を差し出した。
そして、自分の首を絞めたのだった。
天から伸びたその縄は、空にいる犯人によって引き上げられ、僕のことをミノムシのように揺らしながら引き上げて、この部屋から姿を消した。
こうして出来上がったのがこの密室。
だから今朝は誰も死んでいない。