夏休みが近づくころ、ひなたとひよりは毎日のように一緒に遊び、楽しく過ごしていた。二人は水族館や映画館に行ったり、近所の公園でピクニックを楽しんだりした。その笑顔と楽しい時間が、ひよりにとっては宝物だった。
しかし、ある日突然、ひなたが学校で倒れてしまった。慌てて病院に運ばれたひなたの姿を見たひよりは、心底不安に押しつぶされそうになった。先生からの連絡で駆けつけたひなたの両親も、深刻そうな表情だった。
数日後、ひなたの病状が明らかになった。重い病気であり、長期入院と治療が必要だというのだ。その知らせにひよりはショックを受け、涙が止まらなかった。ひなたがいなくなってしまう恐怖と悲しみで、心が張り裂けそうだった。
病院のベッドで横たわるひなたは、いつもと変わらぬ笑顔でひよりを迎えてくれた。「心配しないで、僕は大丈夫だよ」と言うひなたの言葉に、ひよりは少しだけ心が軽くなった。しかし、やはり不安は消えなかった。
「ひより、私のお願いを聞いてくれる?」ある日、ひなたは穏やかな声でひよりに話しかけた。ひよりが「何でも言って」と耳を傾けると、ひなたは続けた。「君の歌声でみんなを幸せにしてほしいの。僕、君の歌声が大好きだから。」
その言葉はひよりの心に深く刺さった。ひなたの願いを胸に、彼女は決意を新たにした。「私、ひなたのためにもっと歌うね。そして、たくさんの人を幸せにするから。」ひよりの目には涙が浮かんでいたが、その眼差しには確固たる決意が宿っていた。
それからというもの、ひよりは毎日病院に通い、ひなたに歌を届け続けた。病院の中庭で歌うひよりの姿を見て、他の患者や医療スタッフもその美しい歌声に耳を傾けるようになった。ひなたと過ごす時間が、ひよりにとって何よりも大切なものだった。
しかし、ひなたの病状は次第に悪化していき、ひよりの心はますます重くなっていった。それでも、ひなたはひよりの前では弱音を吐かず、「君の歌声がある限り、僕はいつも幸せだよ」と微笑み続けた。その言葉にひよりは救われ、ひなたのために歌い続けることができた。
季節が移り変わる中で、ひよりはひなたと過ごす日々の尊さを感じ、彼女の願いを胸に刻むようになった。どんなに辛くても、ひなたの笑顔とその願いがひよりを支えていた。
こうして、ひなたの病はひよりに新たな決意を与え、ひよりは歌い続けることを誓った。
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