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―コンコン、扉をノックする音が耳に入った。
「ど〜ぞ入って。どうせしよりちゃんでしょ?」
冗談交じりに笑いながらそんな事を言うと、扉はすぐに開いた。部屋に一歩足を踏み入れてから、扉をゆっくりと閉めた。
…二人の気配。
一人はしよりちゃんだろう。普段から会っているから、扉越しでもすぐに分かった。
なら、もう一人の気配は誰だろうか?
今現状でしよりちゃんと一緒に来そうなのはさっきの重症を負っていた人だけど…いくら魔法で治してもらったとはいえど、そんなにすぐに回復していくものなのか。と疑問に思ってしまい、あの人だ、と確信する事はできなかった。
生憎と今は先程の連絡のせいで、振り向いて誰かを確認する程の余裕がない。
一度振り向いて誰かを確認してから作業に戻るのもありだとは思うけれど、流石にそれは気が引けるな…と頭を悩ませていると、それに気がついたのかついていないのか、最初に発言をしたのはしよりちゃんだった。
「…先程目が覚めたのでその報告と、リハビリついでに会いに来ました。」
私の忙しそうな様子を見たからか、申し訳なさそうにしながらそう言ったしよりちゃん。
それを聞いて、やっぱりさっきの人だったか…という呆れの様な諦めの様な感情と、流石にちゃんと振り向いた方がいいかな?という考えが頭に入ってきた。
迷うくらいなら。そう考え、くるり、と椅子を回転させて後ろを振り向いた。そうしてしよりちゃんとさっきの人が私の視界に映った。
(…やっぱり回復するの早くない?私が感覚おかしいだけ?もしかして世間だとこれが普通だったりしない?…なんか心配になってきた…。)
そんな事を思いながらも表情は変えず、素直に聞きたい事を聞いてみる事にした。とは言ってもどうやって聞こう、なんて考えている間に、少し時間は経っているかもしれないけれど。
「もう歩いても大丈夫なの?」
「…動いても問題ないくらいには回復したから。」
…あ、結局無難な聞き方に落ち着いたのは内緒ね。
まぁ、とにかく無事そうで良かったかな。あの時気がついて良かった。なんて思いながら、それを伝えるのをすっかり忘れてしまったのは言うまでもないだろう。