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3 - 第1話「となりのセキセイ男子」

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2025年07月04日

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第1話「となりのセキセイ男子」

春の午後。風間琴葉の部屋には、窓越しに明るいさえずりが届く。


「ピヨ、今日も元気ね」


ベランダで籠ごと日向ぼっこしているのは、隣の家で飼われているセキセイインコ。

体は水色とレモン色のグラデーション、ほっぺには小さな斑点がある。琴葉が鼻歌を歌いながら水やりをしていると、彼はたまに現れる。


そんなある日。


「…ねぇ、もっと歌って?」


後ろから声がして振り返ると、そこには見知らぬ少年が立っていた。

水色のシャツに、羽のような柄のある薄手のブルゾン。髪は淡い水色、目はインコそっくりのくるんとした丸い瞳。腕には黄色い羽根がちらちらと混ざっている。


「ぼく、ピヨ。となりの鳥」


琴葉の口から思わず息が漏れる。


「うそ……鳥が、しゃべってる?」


「前からしゃべってたけど。ことばの意味、今日になってわかるようになっただけ」


少年——いや、擬人化したセキセイインコのピヨは笑った。とても無邪気に、まるで小型の太陽のように。


「君の声が好きだった。ことばがわかるようになったら、もっと好きになった」


その真っ直ぐな言葉に、琴葉はドキリとする。

鳥のくせに、いや、鳥だからこそ、こんなにも真っ直ぐ。


「わたしの歌……また聞きたい?」


「うん。となりの窓からじゃなくて、となりの席で聞きたいな」


ピヨは翼の代わりに手を差し出した。そこには、羽の形をしたヘアゴムが結ばれていた。きっと、どこかで拾ってきたものだろう。


琴葉は、それを受け取りながら思った。


——これは始まり。となりのベランダから、となりの心へと飛び込んでくる恋の物語。

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