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#幽霊
凛道桜嵐 新
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がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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コメント
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番外編、めちゃくちゃ面白かったです!狭山さんが咲ちゃんに和泉さんと千歳さんの事情を説明するシーン、あの「建前」の流れがすごく活きてて、咲ちゃんの「なんでそうなるの?」連発に思わず笑いました。怨霊が子孫作らせる方向にシフトするとか、発想がぶっ飛んでるのに家族の会話として成立してるのが好きです。最後の「メイキャッパーメス堕としの顔は出さないでよ」のツッコミもナイスでした!
夜。妹の咲にラインビデオ通話を頼んだら、快諾してくれた。流石に顔を見ながら話したいからな、こういうことは。
「え、もう和泉さんにメンズメイク頼まれたの?」
「うん、ディスコ経由で」
「あのさあ、もしよかったらなんだけどさ、僕から言い出したことなんで、メイクに関しては、和泉さん本当に仕事の上で知りたいことで、他意はないんだけどさ」
「うん?」
僕は、和泉さんが婚活をしなければならないことと、咲がよかったら和泉さんとそういう可能性も含めて会ってみないかと打診した。
咲は目をパチクリした。
「えー、そんな話持ってこられると思わなかった!」
「あの、こういう話しした理由はもうひとつあってさ」
咲は家事が嫌いだし苦手だ。できないわけじゃないんだけど、苦手なのでものすごく脳の容量を食うため、他に何もできなくなってしまうとのこと。大学で一度一人暮らし始めたんだけど、一年で実家に帰ってきてしまった。
「和泉さんはね、家事全般やってくれる同居人がいるんだけど、結婚してもその人と住み続けなきゃいけないんだ。で、その人自身も割と付き合いやすくて素直な人なんだよね」
「え、和泉さんの同居人さんって、いるのは知ってるけど、彼女さんじゃないの?」
咲は再び目をパチクリした。
「あー……そもそも女の人じゃない。ちょっと生まれに事情があって、心身も戸籍も性別がない」
「へ!?」
「まあ、性分化疾患のノンバイナリーと思ってくれれば」
「あー、性分化疾患って、お兄が前に小説のネタで調べてて断念したの?」
「そう」
僕の力量で扱うにはデリケートすぎると思ったんだよな。いや話はそれではなく。
「和泉さんは……あの、その、例の話だと思ってほしいんだけど」
例の話というのは、僕が家族に話している【建前】だ。僕の心霊業界の仕事について、僕は家族に包み隠さず説明しているが、前置きに必ずこう言っている。
「言えないこととかぼかさなきゃいけないこともあるから、とんでもないことを言い出したなと思ったら、それは全て何らかのたとえだと思って」
なので、僕の四代前が化け狸で、そのせいで僕に心霊的な素質があり、心霊的にすごく目が良くてお祓いの手伝いをすることになったことと、あかりさんとはそのルートでお見合いすることになったことはちゃんと話してある。でも、すべてをそのままその通りには受け取られていない。たぶん、あまり本気にされてない。
「和泉さんはね。二年くらい前に、転んで近所の祠を壊しちゃって。その祠に封印されてた怨霊が、ものすごく強い怨霊で」
「ふんふん」
「祠が壊れたから封印解けて、怨霊はすごく怒って、和泉さんを『子々孫々まで祟ってやる!』って、和泉さんのところに行ったんだ」
「はあ」
「でも和泉さん、当時すごく体壊してて、仕事も満足にできない状態だったから「自分で末代だよ」って言って、怨霊は困っちゃったんだ」
「困るんだ?」
「で、その怨霊は、和泉さんの身の回りの世話をすごくして、和泉さんに子孫を作らせる方にシフトしたんだ」
「なんでそうなるの?」
咲は明らかに訝しげな顔をした。
「なんでだろうね……で、その怨霊が和泉さんの同居人。怨霊の世話で和泉さんすごく体良くなって、仕事も順調に行くようになって、怨霊とも仲良し」
「なんでそうなるの?」
「なんでだろうね……ただ、僕は二人とも知ってるけど、二人とも付き合いやすい人だな。怨霊は僕の小説のファンになってくれたし」
「ふーん」
「で、そういう経緯だから、その怨霊は和泉さんから離れないんだ。でも、付き合いやすい人だし、和泉さんが結婚しても家事全般やるって言ってるし、なんなら子守もするって」
「そ、そうなの……」
咲は若干引いた顔をした。
「で、和泉さんの方はそういう条件の人なんだけど、どうかな?」
「どうかなって言われても」
咲は難しい顔になった。
「和泉さんは悪い人じゃなさそうだけど。会ってみないとわかんないよ。和泉さんだけじゃなくて、その怨霊さんにも。怨霊さん、名前なんて言うの?」
「金谷千歳さん」
「ん? あかりさんの親戚?」
「戸籍上きょうだい。戸籍作る時についでに養子縁組した」
「いや、そんな人ならもう少し早く教えてよ!!」
最もなつっこみだ。ごめん。
「いや、そうなんだけど、千歳さんは和泉さんちの人って扱いになんとなくなってるからさ……」
「まあ、身元は確かなんだ?」
「そうだね」
「んー、とりあえず、メイクはしたいから、和泉さんには会うよ」
「メイキャッパーメス堕としの顔は出さないでよ」
メイキャッパーメス堕とし。咲のYouTubeでの呼び名である。どんな男性でも美女美少女にしてしまい、大部分を女装に目覚めさせてしまうことからの名前だ。
咲は、ニヤーッと笑った。
「いやー、和泉さんは逸材だからあ、なんとか口説き落としてさあ」
「おいこら」
「ていうかさあ、結婚前提での付き合いどうか、って言うなら、自分の趣味は見せとかなきゃじゃん。絶対隠せないし」
それは……そう。
「……普通のメンズメイクも教えてあげてよ?」
「そりゃもう、バッチリ」
咲はグッと親指を立ててみせた。