テラーノベル
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第5話!!
スタート!!
午後四時。
静かだった家に、最初の音が響く。
「ただいまー!」
だいすけだ。
ランドセルを勢いよく置いて、靴もそこそこにリビングへ直行。
「まま!今日さ、アニメの新情報が——」
「まず手洗い」
「はーい!」
言われ慣れている声で、ちゃんと洗面所へ向かう。
その後ろ姿を見ながら、亮平は小さく笑う。
元気に帰ってくる。
それだけで十分だ。
少しして、玄関がまた開く。
「……ただいま」
りょうただ。
「おかえり。家庭科どうだった?」
「うん、うまくできた」
そう言いながら、エプロンをカバンから取り出す。
「今日、夜なに?」
「まだ考え中」
「手伝うよ」
当たり前みたいに言うのが、この子らしい。
亮平は少しだけ肩の力を抜く。
「ままぁ……」
小さな声。
こうじが帰ってきて、真っ先に亮平のそばへ来る。
「写真、撮れた?」
「うん」
カメラを見せる顔は、少し誇らしい。
「あとで見せて」
「うん!」
甘えたいけど、自分の好きもちゃんと持っている。
それが嬉しい。
ドン、と少し大きめの足音。
「ただいま」
ラウール。
年長にしては背が高いけれど、
リュックを下ろす姿はまだ小さい。
「今日なにしたの?」
「外あそび」
「走った?」
「うん。いちばん」
短い言葉の中に、ちゃんと自信がある。
「すごいじゃん」
そう言うと、少しだけ口元がゆるむ。
玄関が騒がしくなる。
「ただいまー!」
高校生組だ。
「疲れたー」
たつやはそのままソファへ倒れ込む。
「制服しわになる」
「あとで直す」
絶対直さないやつだ。
ひかるは冷蔵庫を開ける。
「タピオカある?」
「ない」
「えっ」
「冗談。ある」
「よし!」
本当にわかりやすい。
少し遅れて、
「……ただいま」
しょうた。
亮平は顔を見る。
「今日は?」
「まあまあ」
それだけで十分。
鞄を置いて、静かに座る。
「お腹は?」
「……だいじょぶ」
無理はしていない声。
亮平はそれ以上聞かない。
最後に、ドアが開く。
「りょうへいー!」
蓮だ。
帰ってくるなり、一直線。
「ただいま!」
「はいはい」
当然のように抱きつく。
「今日さ、仕事で褒められた」
「よかったね」
「でもさ、りょうへいに言いたくて」
子どもたちが見ているのに、気にしない。
「ぱぱ、距離近い」
たつやが言う。
「いいだろ」
まったく悪びれない。
亮平は少し呆れた目をしながらも、
その腕を振りほどかない。
夕方。
リビングはそれぞれの音で満ちている。
だいすけはアニメの話を止めず、
ひかるはタピオカを幸せそうに飲み、
りょうたはキッチンで包丁を握り、
こうじは写真を見せ、
ラウールは積み木を積み、
たつやはゲームの画面を見せつけ、
しょうたはソファで静かにスマホをいじる。
そして蓮は——
「りょうへい、座って」
「なに」
「今日もおつかれ」
隣をぽんぽん叩く。
亮平は一瞬だけ迷って、座る。
少しだけ、胃が重い。
でも、まだ笑える。
「今日も、通常運転だね」
そう言うと、子どもたちが口々に話し出す。
うるさい。
騒がしい。
落ち着かない。
でも。
亮平は思う。
――この音が、好きだ。
完璧じゃなくていい。
少し崩れても、また整えればいい。
目黒家の夜は、まだこれからだ。
続き!お楽しみに~✴️
コメント
2件
最高👍