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「なるほど……焔帝山ですか……」
フィニスとカエデが修道院に戻ると、既に目が覚めて身体を起こしているホムラの隣でアルテアがルシオ達から話を聞いているところだった。
「お、起きたか」
身体を起こしてぼーっとしているホムラに、フィニスが近寄り話しかける。
「はい。色々とご迷惑をお掛けしてしまい、すみませんでした……それと、助けていただきありがとうございます」
「気にするな」
深々と頭を下げるホムラの頭をくしゃくしゃと撫でるフィニス。そんな2人の元へ、カエデがゆっくりと近づいてきた。
「貴方……これから行くあてはあるの?」
「……いいえ」
俯くホムラ。
「そう……それなら私と一緒にくる?」
「……え?」
その言葉に顔を上げ、じっとカエデを見るホムラ。
「私は隣の大陸……アクリムのお城で働いているの。今は仕事でこの人達とアマテラスに来ているだけ。今回の仕事が終わったらアクリムに戻るけど、一緒に来る?」
「……」
黙り込むホムラ。
「私なら、貴方の力の使い方を教えてあげられる。もちろん、無理にとは言わない。決めるのは貴方よ」
「……」
「……」
全員が黙り込み2人のやり取りに耳を傾けていた。
「僕には……もう行く場所がどこにもありません。実の親も知らなければ……育ての親も……」
「……」
「ここにはもう未練はありません……連れていってください!」
フィニスがふっと笑う。
「分かった。私は厳しいからね。それはちゃんと覚悟しておいて」
胸元から先程購入した1本のペンを取り出したカエデ。それをホムラへと手渡した。
「……これは?」
「弟子へのプレゼント。よろしくね」
「っ!!あ、ありがとうございます!」
渡された魔道ペンをまじまじと見つめるホムラ。出会って初めてのキラキラした笑顔に、フィニス達も優しく微笑み、そんなホムラを眺めていた。
⸻
「本当に大丈夫かしら……あの子……」
アマテラスを出てしばらく歩いているフィニス達。ニティアが横目で後ろを見ながらつぶやいた。
ニティア達の後ろでは、お互いにペンを取り出して何かをしているカエデとホムラの姿。
「ホムラが焔帝山への道を知ってるみたいだし……カエデが何があっても守るって言ってたから……まぁなんとかなるだろ」
「まぁそうかもしれないけど……」
今度は首を回して後ろを見るニティア。
「全然魔法を使っていなかった割には上手ですね。術式の構築も実にスムーズです。次は出力を少しだけ……」
早速魔法を教えているカエデ。隣のホムラも難しそうな顔をしながらも楽しそうにしている。
「育ての親を亡くしてしまい、1人きり……今はこうやって誰かと繋がりを感じていた方が、ホムラくんにとってはいいことだと思います。私も最優先でホムラくんを守りますので、安心してください」
優しい目でカエデとホムラのやりとりを見ながら、ニティアの少し前隣を歩くアルテアが答えた。
「それにルシオにエラリス。俺もいるし、なによりお前がいるだろ?」
そう言いながらニティアを見て笑うフィニスに、少しだけ照れながら答えるニティア。
「ま、まぁなんとでもなると思うけどさ」
そう言いながら前を向き直し、人差し指に魔力を込めるニティア。
指先に小さな火の玉を生成し、くすりと笑った後、小さな火の玉を消失させると、はるか前方に見える火山に身を向け、力強く歩いていった。
⸻
「ここの森道を進んでいけば、焔帝山祭壇への入り口があると思います」
森の中の道を指差すホムラ。
「よく知っているわね」
「この国では殆どの人がアマテラス様を信仰していますから……。知らない人の方が少ないかもしれません」
そう言いながらも身体は小さく震えていた。
「へぇ〜……まぁ何にせよ助かるよ!」
「そんじゃ、油断せずにいくぞ」
くしゃくしゃにホムラの頭を撫でるフィニス。そのやりとりを見た時、ルシオは気を引き締めるよう皆に声をかけ、森の中に入っていった。
場所は違えど、先日家族で襲われた薄暗い森の中。身体が震えているホムラ。そんなホムラを見たカエデは、歩きながらサラサラと空中に文字を書き始める。
「それでは、次はこれをできるように頑張りましょうか」
書き記した文字がいくつもの光に分かれ、炎の針へと姿を変える。
「魔物の弱点は知っていますか?」
「えっと……コア……ですか?」
#魔王
チタコロ
48
#探偵
橘靖竜
6,432
自転車和尚
1,223
#魔道具職人
こはる
1,904
「その通りです」
持っているペンをくるりと回すと、歩いているカエデに追従している炎の針がくるくると回転し始めた。
「意外とこの程度の魔法であっても、油断している弱い魔物であれば対処する事はできるものなんです」
「……」
そう言ってペンを胸元にしまうと、カエデの周りで回転していた炎の針がその場でパッと消失してしまった。
「それでは早速やってみてください」
「は、はい!」
一度ペンをギュッと握りしめ、スラスラと空中に文字を書き始めるホムラ。そんなホムラの身体はもう震えてはいなかった。
⸻
しばらく歩いていると、少し開けた空間が目に入った。おそらく参拝する人たちもここで休憩をしているのだろう。木で作られた椅子や火を起こした跡などが残っていた。
「ここら辺でちょっと休憩しますか」
ルシオが盾を近くの椅子に立てかけ、そのまま椅子に腰をかけた。
「そうだね。小腹も空いたし」
エラリスも足元の乾いた草や木の枝を拾い上げ、炭の残っている焚き火の跡に投げる。
エラリスがそのまま小さな火を起こそうと手に魔力を込めようとしたところをカエデが呼び止めた。
「エラリスさん。少し待ってもらえますか?」
「え?なに?」
首を傾げながらカエデを見るエラリス。
「それではホムラ。さっきの魔法をひとつだけ生成。そのままあそこに火を灯してみてください」
「は、はい!」
突然課題を出されたホムラがビシッと姿勢を正す。
「この数分で一体どんな教育をしたのかしら……」
「ふふっ……それだけ素直でいい子って事ですよ」
その様子を見ていたニティアとアルテアが小さく笑う。
一度深呼吸をした後、カエデから渡されたペンを使い、空中に文字を書き始めるホムラ。
カエデの大人っぽい文字とは異なり、子供らしい筆跡。それでもスラスラとスムーズに文字を書き起こしていた。
書いた文字が一つに集まり、大きな炎の塊となり、そのまま細長い針のような形へと変わっていく。
そして、最後に持っていたペンの先を狙った焚き火跡へ向け、まるでピリオドを打つかのように空中で手首をトンっと動かした瞬間……
ヒュン!
炎の針はエラリスの目の前にある焚き火跡に向かって飛んでいき、突き刺さった。
ドスっ!
「ケホッケホッ……」
その衝撃で灰が舞い上がり、軽く咳き込むエラリス。しばらくすると……
パチッ……パチッ……
エラリスが投げ入れた草木に引火し、小さな火が起こり始めた。
「やった!」
小さなガッツポーズをするホムラに、カエデは少しだけ誇らしげに笑っていた。
「上出来ですね」
コメント
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うおおおおおお第98話読み終わったよ!!🔥🔥🔥 ホムラくんがカエデのもとで弟子入りして、魔法の手ほどき受けてるシーンがもう尊すぎて泣いた😭💕 ペン渡された時のキラキラした笑顔、マジで宝物みたいだったね…!! 震えてた身体が魔法練習で止まった描写もエモくて、「もう震えてなかった」の一文にじーんときたよ…。 カエデの「上出来ですね」がもう師匠すぎて最高です!!! 次回、焔帝山で何が待ってるのか気になりすぎる…!!✨