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遥か下の方から赤褐色に照らされている洞窟内。
下方から発せられたマグマの熱が、洞窟の天井や壁から反射され、身体全体が焼け付くような暑さに包まれていた。
「暑い……」
「流石火山……」
先頭を歩いているルシオとエラリスが、項垂れながら歩いている。
「この暑さ……砂漠の比じゃねーな……」
「全身を内側まで焼かれるような感じですね……」
「そんなことより、あの子は大丈夫なの?」
マグマの上に作られている足場を歩きながら、ニティアが後ろを振り返ると……
「どうかした?」
「?」
平然とした顔で歩いているカエデとホムラ。
「あんた達……暑くないの……?」
「まぁ少しは……」
「小さい頃に何度か来たことありますから」
同じ国出身だからなのか……それとも同じ一族の末裔だからなのか……そんなことを言いながら、外を歩いている時と変わらない様子の2人。話し終えると再び術式についての話をし始めていた。
「羨ましい限りだ……」
そんな2人を見ていたフィニスがそう呟き、汗の吹き出す顔を手で仰ぎながら笑っていた。
「おい!あれ!!」
先頭を歩いていたルシオが前の方を指差して声を上げる。そこには、火山の中とは思えないほど立派な装飾が施された扉が設置されていた。
その扉の前で立ち止まるフィニス達。そんな中、ホムラがゆっくりと口を開いた。
「確かこの先は……参拝する人たちが順番待ちをしたり、ちょっとした休憩ができるような広いスペースになっています。そのへやの奥に祭壇があるはずです」
「ここまで皇子や摂政達はいなかったわよね?この先にいるのかしら……」
そう言い、扉に手をかけるニティア。
ガチャッ……ギィー……
扉を押し開けようとしたその瞬間……
「!!」
「ニティアさん!」
アルテアが声をかけるよりも少しだけ早く、ニティアが扉から手を離し、距離を取るように後ろに飛んだ。
「どうしたんだ急に?!」
その2人の動作にびっくりする5人。しかしそれでも各々が手に持つ武器を構え、カエデはホムラを扉から遠ざけ、ホムラの前に立ち塞がっていた。
「すごい魔力……」
「ええ……魔女や魔族とは違う……異質な魔力を感じました……」
扉が魔力の流出を防いでいるのだろう。今は全くと言っていいほど魔力を感じない。
「ホムラ。この先に神……アマテラスがいるの?」
扉を見つめたまま、後ろのホムラに話しかけるカエデ。
「祭壇はあります……神様がそこに祀られていると言う話も聞きます……ですが……少なくとも今まで、直接アマテラス様を見たと言う人は……」
全員が一度身体の力を抜いて、深呼吸をする。
「神様なのか精霊なのか分からないけど、とりあえず会いに行こう」
エラリスの言葉に全員が頷き、ゆっくりと扉に手をかけた。
ブワッ……
熱い空気が開いた扉の隙間から流れ込んでくる。
熱気と共に感じる強大な魔力。
「!?」
扉の先の開けた空間を見回すと、何人もの人が倒れていた。
「人が倒れてる!」
エラリスの言葉に、全員がバラけて倒れている人の所へ向かった。
それぞれが胸に耳を当て、脈をとり、呼吸の確認をする。
「皆さん……ただ意識を失っているだけのようです……」
全員を診終えたアルテアが安堵の息をこぼした。
「にしても、この人達ってまさか……」
「ええ。前回お会いしたツクヨ様もいます。おそらく捜索隊の方達と……」
一際幼く、この場に似つかわしく無い子供に視線を送るカエデ。
「あの方が皇子なのでしょうね」
「いったい誰が……」
「それは、奥にいる誰かに聞いた方が良さそうよね」
奥に見える祭壇を睨みつけるニティア。
「ホムラ。貴方はここでこの方達をお願いします」
広間の一画に倒れている人たちを集め、その前でホムラにそう伝えると、カエデはニティア達と一緒に奥の祭壇まで歩いていってしまった。
⸻
マグマが蠢く火口。その火口の真上に形成された祭壇。まるで宙に浮いているかのように岩盤でできた橋を渡り歩き、祭壇までたどり着いた6人。
「隠れなくてもいいわよ。魔力がありえないほど漏れ出てるから」
ニティアがそう言い放った次の瞬間、下のマグマが眩しく輝きだした。そのあまりの眩しさに、皆が目の前に手を翳していると……
バサッ
聞こえる大きな羽ばたき音。
『ほぉ……』
マグマの輝きが収まり、ゆっくりと目を開ける6人。
『精霊術師に……火の妖術士の末裔もいるのか……』
祭壇の前には、紅蓮に燃え盛る大きな翼を羽ばたかせた……
『少しは退屈凌ぎができそうじゃ』
巨大な怪鳥。
「……貴方が……アマテラス様ですか……?」
カエデが前に出て、巨大な怪鳥へ尋ねる。
『アマテラス?あぁ……確かに、そう呼ばれているようじゃが……勝手に名前をつけられるわ、勝手に寝床を尋ねてくるわ……』
大きなため息をつく怪鳥。
「もしかして、あそこで倒れている人たちも?!」
『妾は神でもアマテラスとやらでも無い。それなのに、やれ国を守ってくれだの、やれ国を救ってくれだの……次から次へと性懲りも無く己の欲望のためだけに来る人間に嫌気がさしてのぉ……少しばかり脅してやっただけじゃ。それに、妾が神では無いということをお主ならわかるのでは無いかのぉ?』
怪鳥がエラリスを見つめる。
「……精霊」
そう言うと、自分の魔力を怪鳥の魔力波長に合わせ始めるエラリス。
『おぉ……そんなこともできるのか……ということはもしや……?』
「他の4体とは契約している。あとは貴方だけ」
その言葉に見るからに驚いた表情をする怪鳥。しかし、次の瞬間には大きく笑い始めた。
『アッハッハッハ!そうか!妾で最後なのか!』
笑っている怪鳥に、フィニスが言葉を投げかけた。
「あそこの人間もあんたが?」
『ん?あぁ、あそこで寝ている奴らか。そうじゃ。妾がやった。殺さずに威圧してやっただけ感謝して欲しいものじゃがの』
「あんた精霊なのに……なんで人間にあんなことしてんだよ!リヴァレーもゼフィリアもみんな人のために」
『妾は精霊。炎の精霊のニックじゃ』
フィニスの言葉を真顔で遮る。
『神でもなければ人間の願いを叶える義理もない。この場所を……この世界を守っていけるのであれば、人間がどうなろうと知ったことでは無い』
「なっ!!」
「あんた……他の精霊と比べて最悪の性格してるわね……」
睨みつけるニティアを見て再び笑い出すニック。
『アハっ♪そうかもしれんのぉ♪じゃが、妾ほど分かりやすい精霊もおらぬと思うぞ?』
じっとエラリスを見つめる。
『波長など合わせる必要はない。妾は誰とでも契約はしてやるぞ?』
「?!ほんと??」
クスッと笑う怪鳥。
『もちろんじゃ♪ただし……』
ニックの表情が変わり、より巨大な魔力が全身から溢れ出してくる。
『自分より強い人間という条件じゃがの!』
祭壇の奥をじっと見つめたあと、大きな翼を羽ばたかせはじめた。
『弱い人間と共に歩こうとは思わぬ。お主らの力を示してみせよ!』
コメント
1件
うわ、いよいよ核心に迫ってきましたね。精霊ってだけでワクワクするのに、まさか「神じゃない」と名乗る炎の精霊・ニックが出てくるとは。「自分より強い人間としか契約しない」っていう傲岸さ、逆に清々しいくらいです。他の4体は人のために動いてきたのに、こいつだけは「人間がどうなろうと知ったことじゃない」って割り切ってるのが、精霊のキャラ付けとしてすごく新鮮でした。これからどう交渉するのか、本当に楽しみです!