イリスとユノの口喧嘩は、ユノに軍配が上がった。
余としては、イリスに勝ってほしいところではあったが……。
まぁよい。
尻拭いは余が行ってやろう。
「白竜族の生き残り、ユノよ」
「……なに?」
「お前の身柄を拘束させて貰おう」
「なぜ?」
「当然であろう? これ以上、騒ぎを大きくされては迷惑だからな」
「ふーん」
余の言葉に対し、興味なさげな態度を見せるユノ。
「なら、力ずくで言うことを聞かせてみればいい」
彼女はそう言って、翼を広げた。
同時に魔力が吹き荒れ、イリスに威圧されていたワイバーンたちが戦意を取り戻す。
「言われるまでもない。【ラビティオ】」
余は重力魔法を発動させた。
その力により、ワイバーンたちは再び地面に這いつくばった。
ユノはかろうじてまだ立ってはいるが、ギリギリの状態である。
「ぐっ……!」
「なんだ。思ったより弱いではないか。お前こそハエ程度なんじゃないか?」
「くっ……。この程度の力で……ボクを支配できると思っているの?」
ユノが不敵に微笑む。
この局面で挑発的な言葉を吐けるとはな。
「ほう。ならば、もっと出力を上げようか。【ラビティオン】」
余はさらなる重圧をかける。
「ぐぅっ……!?」
しかし、ユノはそれを耐えきって見せた。
だが、その身体はすでに限界を迎えているようで、足をプルプルさせている。
「やはりハエのようだな」
「……」
「どうした? もう終わりか? それでどうやって余を支配するつもりだったのだ? んん?」
「……」
ユノは答えない。
いや、答える余裕すらないのだろう。
強烈な重力により、体を大きく前屈させた状態でかろうじて立っている。
「やれやれ、これでは興醒めだな。イリスよ、こやつを捕らえて――ん?」
「はああぁっ!!」
余が指示を出すよりも先に、イリスは動き始めていた。
彼女がユノに向かって突進する。
そして――
「とりゃああぁっ!!!」
「んほおおぉっ!!!」
ユノが絶叫する。
余の重力魔法により動きが阻害されていたところに、イリスのカンチョーが炸裂したからだ。
「ど、どうして……」
「はぁ、はぁ……。陛下をウンコ呼ばわりした報いです! あなたのケツをゆるゆるにしてやりますっ!」
「あ、あの男をウンコ呼ばわりしたのは、ボクじゃなくてあなたじゃ……」
ユノが抗弁する。
言っていることは正論だが、この状況下でそれは――
「うるさいですっ! えいっ! えいっ! それぇっ! どうですかっ!?」
「ひぎぃいっ!!!」
イリスはユノのお尻に連続で指を突き刺していく。
そのたびにユノの口から叫び声が漏れる。
どさくさに紛れて、余をウンコ呼ばわりした罪をユノに押し付けようといったところか。
少し作戦が雑すぎる気もするが、彼女がそれでいいなら余は何も言うまい。
「や、やめて……」
「まだまだ許しませんっ!! こうしてやるんですからぁ~!!!」
「あがああぁあぁぁぁ!!!」
イリスがユノの肛門を広げるようにグリッと捻ると、ユノはひと際大きな声で叫んだ。
「イリスよ、その辺にしておいてやるがいい。余のことをウンコ呼ばわりしたことは水に流そうではないか」
余は適当に場を仲裁する。
大元の非は、入学式で暴れだしたユノにある。
だが、ウンコ呼ばわりしたのはイリスなのだ。
このあたりで止めるべきだろう。
「承知しました。ディノス陛下がそう仰るのなら、そう致しましょう。――陛下の寛大な心に感謝しなさい、ユノとやら」
「…………」
「返事はどうしましたか!」
「ひぎぃ!!」
イリスの責めが再開され、ユノの悲鳴が響き渡る。
こうして、混沌に満ちた入学式は進んでいったのだった。
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