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ruruha
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#読み切り
ruruha
965
ここは仏間だ。仏壇前の畳には、ヒトガタの影と血が染み付いている。
「さて。仏壇を調べてみたいとな?」
「…………」
「さっきの男が一生懸命漁ってたもんな。何かイイモノあるかな?」
腕まくりしそうな勢いで、桐島が仏壇へ近づく。……こいつには血溜まりが見えていないのだろうか。どんなに視界の端に追いやっても激しく自己主張をしてくる、この赤いシロモノが。
「あの斧娘は幽霊みたいだが」
桐島が血の染み込んだ畳に顔を近づけた。
「……う!」
なぜか俺の気分が悪化する。
「血は本物みたいだな」
「うう……!」
「……アレは危険な気がする。迂闊に近寄るなよ。オマエの頭も真っ二つだぞ」
「…………」
「……香住!さっきっから黙りこくって、なんだ! 聞いてるのか!」
「……聞、いて、マス……」
「? さあ、仏壇を調べるぞ。手伝うのだ!」
俺たちは仏壇を調べてみることにした。桐島が顔を突っ込むようにして、仏壇の下の棚を漁っている。
「あの男はなんで仏壇なんか漁ってたのかなあ」
「……さあ」
「お供えのおまんじゅうとかのストックがあったりするのかなあ」
「……ないんじゃね? まんじゅうって、そんなに日持ちしなさそうだし。お供えにストックとか聞かないし」
手伝えと宣った桐島だったが、俺は手伝えずにいた。
仏壇に近づくためには血溜まりに近づかないといけないので、それが嫌で躊躇っているせいもある。が、それ以上に手伝う隙を見つけられずにいた。彼女が棚の中の引き出しやら箱やらを、ぽいぽいと引っこ抜いてはぶちまけていくので、手が出せない。しかし……。
(雑だ……)
俺は次第に強盗に入られたようになっていく仏間を、半分感心しながら眺めていた。雑さもここまでくれば、いっそ清々しい気がしてくる。だが、あまり感心してばかりもいられない。これじゃ、見つかるもの見つからない。しかし、あの血溜まりの畳には近づきたくない……というか、近づけない。さて、どうしたものか。
葛藤を続けていると、ひらりと風呂敷が降ってきた。一心不乱に仏壇を荒らしている桐島が放ったものだ。お、いいものが。
俺は風呂敷を広げると、血の染みついた畳に被せる。よし、これで俺も参加できる!
「桐島! 引き出し、引っ張り出してもいいからぶちまけるなよ! こっち渡せ。中は俺が調べるから」
「うー!?」
がむしゃらに棚の中に頭を突っ込んでいた彼女が、わかってるのかわかってないのかよくわからない唸り声をあげた。
(やれやれ)
俺はぶちまけられたものを拾い集めながら、適当に箱や引き出しに戻していく作業へ取り掛かる。
桐島の望むおまんじゅうのストックは、当然ない。あるのは、線香やロウソクなどのストック。チーンと鳴らすアレや数珠などのお仏壇グッズばかりだ。奥の方から二つのほど掛け軸が出てきたが、俺にも彼女にもその価値はまるっきり分からない。役に立つとは思えないので、霧島に命じて棚の奥へと戻させた。
「ほら、この箱も棚に戻して」
「うーん? なんか全部入らない」
「入ります。入ってたんだから。適当に入れない。一つずつちゃんと詰めて入れろ。全部、ちゃんとあった場所に戻すんだぞ」
「香住、細かい」
「お前が雑なの。妙な状況といえ、ひと様のお宅なんだし……ん?」
最後の箱を渡していると、自分の膝元に小さなカギが落ちているのに気づく。今まで箱の下敷きになっていて、気づかなかったようだ。
「……カギだ」
「ん?」
箱を棚に突っ込み終わった桐島が振り返る。
「カギ?」
「何のカギだろう」
「どこかのドアのカギかな?」
「わりと小さいから、カギのかかった箱とか引き出しって可能性もあるよな。探してみるか」
「うん」
俺はジャージのポケットにカギを入れると、立ち上がった。
「よし。じゃあ、行こうぜ」
「あ、待った」
立ちあがろうとしたら桐島は、ふと気づいたように広げられたままの風呂敷に手を伸ばす。
「これもしまわない」
「! 待った!!」
俺は咄嗟にその手を掴んだ。
「何だ!?」
「それはしまわなくてもいいんじゃないか!」
「何を言う。全部ちゃんとあった場所に戻せと言ったのは、香住だろ」
「言ったけど! でもこれは目的があって広げたままにしておくわけだから……!」
「ダメだ! 他は全部戻したんだから、これも戻さなきゃダメだ!」
「いや、でも……」
「ダメだ! これだけ仲間はずれなんて……可哀想だ!」
「…………」
なんなんだ、その風呂敷への思いやり。
かくして風呂敷は棚に戻され、俺は再び血を吸い込んだ畳と対面することになった。……余計なことを。
仏壇を調べてみたが、仏壇には鍵穴のようなものは見当たらない。
「このカギ、仏壇のカギじゃないみたいだな」
「うん。他の部屋かな?」
他の部屋も調べてみるか……。
コメント
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第7話、読ませていただきました。仏間の血溜まりを「見えていない」桐島と、それに怯える香住の温度差が絶妙ですね。あの風呂敷を巡るやりとり——「これだけ仲間はずれなんて可哀想」という桐島の奇妙な思いやりに思わず笑ってしまいました。結果的に香住が血溜まりと向き合わされるオチも含めて、キャラの個性がしっかり立ってるなあと。ラストの小さな鍵、これからどう使われるのか気になります。続きが楽しみです。