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見合いは、錦藤家の茶室で行われた。
振り袖姿の紗姫が、信也にお茶を振る舞った。
信也の父は、小柄で気の弱そうな人だ。
母は、優しそうに見えた。
信也は、理知的な男性だった。
かなり緊張しているが、紗姫もドキドキだ。
目が合った瞬間(素敵な人)と思った。
父の隣に後妻が座っているのが嫌だった。
母親気取りで微笑んでいるが、紗姫には不気味に見える。
だが正座が苦手で、足が痺れたらしく途中で退席した。
お茶の作法も、付け焼刃で自信が無いようだ。
「そうだな。後は二人で話しなさい」
妻の退席を『気を利かせた』と思った父は、席を立って茶室を出た。
信也の両親も、慌てて後を追った。
紗姫と信也は、正座したまま向きあった。
「錦藤家の姫とお見合い、と聞いたときは驚きました」
「伊崎さんは、素晴らしい御方と伺っています」
「私は国政に進出して、日本を動かすリーダーになりたいと思っています」
「とても大きな夢ですね」
「夢ではなく目標です。一緒に目標を達成してくれませんか?」
家に〈後妻〉と〈連れ子〉が来て、紗姫の居心地が悪くなった。
一緒に住むのが嫌だった。
これは運命かもしれない! と紗姫は思った。
(日本のリーダーを目指す人の妻が務まるのか?)
不安はあるが、結婚するなら、それくらい大きな目標を持つ人がいい。
(この人を選ぼう!)
紗姫は決心した。
3ヶ月の交際期間を経て、紗姫と信也は婚約した。
その半年後に、盛大な結婚式が挙げられた。
出会って9ヶ月のスピード婚だが、「藩主 錦藤家の姫」と「嘱望される若手議員」
の結婚は、多くの市民に祝福された。