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「ねえ、真希ちゃん夜泣きはどうしてる? うちの末っ子、夜中に突然スイッチ入ったみたいに泣き出してさ、抱っこでユラユラしてるけど、腕がもう限界!」
私が笑いながら言うと、真希ちゃんも目を丸くして笑った
「わかる! うちの子も夜泣きすごいよ! 抱っこしてトントンして、ようやく寝たと思ったらまた泣いて・・・もう、ママって戦士よね!」
彼女の大げさな身振りに、私はクスクス笑った
「ほんと、戦場よ! うち、三人もいるから、夜中に順番に泣かれたら、もう朝までノンストップ」
と私は肩をすくめた、幸い最近の康夫は最近仕事が忙しく、毎晩遅くまで帰ってこない
「食べてくるから晩ご飯は作らなくていいよ」
と言ってくれる彼の優しさに、特に感謝していた、家が散らかっていても、文句一つ言わず、毎日黙々と働いてくれる康夫・・・出産後、初めて彼の深い愛情に触れている気がして私は胸が温かくなる瞬間が増えていた
ただ、一つだけ心に引っかかることがあった。私の見た目だ。帝王切開から二か月経っても、体重は10キロ増のまま、お腹の傷口の絆創膏を取り替える度に鏡に映る三段腹にため息が出る
妊娠で伸びたお腹の皮は、まるで元の形を忘れたかのようにたるんだままだった、胸もいくら授乳期だからといっても三人も吸わせていたら、乳首は真っ黒の巨峰の様になっていた
病院の先生は次第にもとに戻ると言ったが、子供を産む前のスリムな体型が、遠い夢のようだった
チラリと真希ちゃんを見ると、彼女の姿に目が釘付けになった。信じられないことに、彼女のお腹はぺったんこで、まるで出産なんてしていないかのようなスリムな体型だった
タイトなTシャツが、引き締まったウエストを強調していて、羨ましさを通り越して軽い嫉妬が胸をよぎった
「真希ちゃん、ほんとスタイル良すぎ! 出産したなんて信じられないよ。どうやって戻したの?」
私は思わず本音を口にした。真希ちゃんは照れくさそうに笑った
「え、ほんと? ありがとう・・・でも、ほんと大変だったんだから。産後、晴美ちゃんに教えてもらったヨガにハマって、毎日30分やってるの、それと・・・授乳でカロリー消費してるのかも! 晴美ちゃんも、時間できたらヨガいいよ」
「ヨガやりたいけど、お腹の傷がいたむの・・・だからいつも食べちゃ寝てばかり・・・こんなのじゃダメなのは分かってるんだけどね・・・何をするにも傷が気になって・・・」
「まだしょうがないよ・・・お腹を切るって大変だよ」
と私は苦笑いしたけど、彼女のエネルギーに感心していた
「でも、授乳ってほんと不思議だよね。赤ちゃんと繋がってる感じがして、疲れるけど幸せなんだよね」と私は話を続けた
「そうそう! 授乳の時間、なんか神秘的じゃない? うちの子、ゴクゴク飲んでるときにじーっとこっち見てくるの、あの目、ほんと愛おしくて、なんでもしてあげたいって思う」
と真希ちゃんの目がキラキラ輝いた
「わかる! うちの末っ子も、飲んでるときにちっちゃい手で私の指握ってくるの、あれ、反則だよね、心溶けるよ」と私は笑った
「ねえ真希ちゃん、産後の体ってほんと不思議だよね、なんか自分の体が自分じゃないみたいで、でも赤ちゃん見てると、全部報われる気がするよね」
「ほんとそれ! 妊娠中、お腹大きくなってくとき、なんか自分の体が宇宙船みたいに感じたもん、で、今は赤ちゃんが自分の一部みたいで、不思議な感じ」
と真希ちゃんは私の話に全部共感してくれる、本当に真希ちゃんは良い母親だ、その真希ちゃんの純粋な心に思わず心が苦しくなる・・・
あたしは・・・真希ちゃんに比べたら穢れている
さらに真希ちゃんがたたみかける
「晴美ちゃん、三人のお母さんなんてほんとすごいよ、どんな大変なことも康夫さんの愛で乗り越えちゃうんだから! 晴美ちゃんこそ妻の鏡で母親の鏡だよ!」
真希ちゃんの言葉は、彼女らしい純粋な温かさに満ちていた。いつも明るくて、どんなときも前向きな彼女の笑顔がリビングに柔らかな光を添えていた
でも、その言葉が私の心の奥に突き刺さった、まるでずっと隠してきた秘密の扉を無理やりこじ開けられたような感覚だった
もう耐えられなかった。生まれてから二か月間、胸の奥に押し込めてきた重い秘密が、まるで鉄の塊のように私の心を押し潰していた、私は突然ワッと泣き出した、叫び出さない様に下唇を嚙むのが精いっぱいだった
八方ふさがりだ、過去の過ちが私の中で大きくなって時限爆弾みたいに刻々と時を刻んでいる
康夫がどれほど優しくしてくれてもどうにもならない、康夫と出会ってから康夫だけを愛して来た、小さい頃から私は両親の自慢の子供だった
交通違反もしたことないし、大学卒業から康夫を心から愛して来た、康夫の姑に意地悪な事を言われても笑って過ごした、康夫の家族ともいつもうまく行くように死力を尽くした、康夫に全力で尽くして来た、尽くして尽くして、たった一度きりの過ちだった、私は康夫と喧嘩して怒っていたし、和樹に会いに行ったのも康夫が彼に私の事を何か言ってなかったか聞きに行っただけだった
そりゃ少しは和樹に優しくして欲しいと思ったけど、あそこまで望んでいなかった、私は和樹にお酒を飲まされてセックスした、シラフだったら絶対あんなことしなかった、本当にバカな事をした