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🍉ぷちひなフレンズ外伝:いむくんの夏恋メモリー
夏休みのある日。
いつもの公園で、いむくんはぽんたくんとゴッキーくんとアイスを食べていた。
「うわ~このアイス、溶けるの早っ!スピード勝負だ!」
「ゆっくり食べるって概念はどこいった……」
「……アイスって、心を癒すんだよね」←ぽんたくんの名言(?)
そんなにぎやかな時間のなか、ふと視界に入ったのは、ブランコに座るひとりの女の子。
白いワンピースに、麦わら帽子。
長い髪が風にゆれて、ブランコをゆっくりこいでいる。
なんだろう──
いむくんは、なぜか目が離せなかった。
「……あの子、だれ?」
ぽんたくんが言った。
「ああ、たぶん“たまちゃん”って子。最近引っ越してきたらしいよ」
「へえー」
ゴッキーくんが横目で見る。
「静かそうな子だな。いむくん、話しかけたら?」
「……えっ!? オ、オレが!? 無理無理無理、初対面とか無理、怖い、心臓が!」
「元気印が何言ってんの」
「アイスなら話せたのにね」←ぽんたくん
でも、その時は話しかけられなかった。
ただ、心の中にふわっと“雲”みたいな印象が残っていた。
数日後。
いむくんはまた、公園で見かけた。
──たまちゃんが、一人で絵を描いていた。
勇気を出して、そっと声をかける。
「……あの、こんにちは!」
「……こんにちは」
たまちゃんは、のんびりとした声で微笑んだ。
「えっと、オレ、いむっていいます!ひなこちゃんたちと、よくここで遊んでて……」
「知ってるよ。元気な子だなあって、思ってたの」
「えっ……ほんと!?」
「うん。にぎやかなの、すてきだなって思ってた」
それが、ふたりの最初の会話だった。
その日から、いむくんはたまちゃんと時々会って話すようになった。
話すのは少しずつ。
でも、ゆっくり、確実に心の距離が近づいていった。
ある日、たまちゃんが絵を見せてくれた。
「これ……お気に入りの場所。あの桜の木の下で描いたの」
水彩でふんわり描かれたその絵は、まるで夢の中みたいだった。
「すごい……きれいだね!やさしい感じがする!」
「ありがとう。いむくんも、やさしいよ。にこにこしてて、話してると元気になるの」
「……えっ!? い、いむくんが!? オレが!? え!? え!?!?///」
「ふふっ。……わたし、いむくんのこと、けっこう好きだよ」
「~~~~~!!!」
いむくんの頭は完全に真っ白。
心臓はバクバク。顔は真っ赤。
──“好き”って……そういう……“好き”!?
でも、たまちゃんはそれ以上何も言わず、また空を見ていた。
8月の終わり。
たまちゃんはぽつりとつぶやいた。
「……わたし、もうすぐ引っ越すの。お父さんの仕事でね」
「……え」
「でも、この町での思い出ができて、うれしかった。
とくに、いむくんと話した時間は、特別だったよ」
「……やだよ」
いむくんの声は、小さかった。
「オレ、もっとたまちゃんと話したい。もっと一緒に笑いたい。ずっと、そばにいてほしいって……思ってたのに……」
たまちゃんは、目を伏せて微笑んだ。
「ありがとう。いむくんが、そう言ってくれるだけで、じゅうぶんだよ」
その日は何も言えなかった。
ただ、遠くで蝉の声が鳴いていた。
引っ越しの日。
いむくんは、公園のベンチにひとり座っていた。
たまちゃんが置いていった一枚の絵。
そこには、満開の桜の下で笑っているいむくんの姿が描かれていた。
──“ありがとう。いむくんと会えてよかった。たま。”
いむくんは空を見上げて、ぽつりとつぶやく。
「……来年の夏、また会えたら、今度はちゃんと“好き”って言うからな」
風がそっと吹いて、セミの声が遠ざかる。
でも、心の中の“はじめての恋”は、ずっと、消えることはなかった。
──それは、夏が教えてくれた、やさしい気持ち。
🌻 おわり 🌻