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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第143話:空飛ぶ光の奇跡。ハリウッドの資本で描く、神獣とモフモフたちの光のアート
俺が完璧な需品科スキルで打ち上げた、十年ぶりの復活花火。
そのあまりの美しさに広場が感動の渦に包まれている中、夜空の彼方から、さらに異質な『ブン……ッ』という無数のプロペラ音が重なり合って聞こえてきた。
「なんだ……? まだ打ち上げ筒は残っているはずだが、この音は一体……?」
俺が眉をひそめ、インカムで小春ちゃんに状況確認をしようとしたその時だった。
突如として、十勝の漆黒の夜空が、数万の星々よりも鮮やかな光の粒子で埋め尽くされた。
「えっ……!? 嘘……空が、空が光ってる!?」
小春ちゃんが絶句して指差す先、数百メートル上空の夜空で、数千、いや数万という小さな光の点が、まるで意思を持っているかのように一斉に整列を始めたのだ。
それらは最新鋭のドローン編隊だった。
「アハハッ! マスター、私のサプライズはどう!?」
祭りの広場で、いつの間にか法被姿になっていたシャーロットが、何食わぬ顔でスマートフォンを操作しながら高笑いをする。
「このドローン五千機は、私が全米の最新技術をかき集めて特注した世界最高峰の光のアート部隊よ! 今夜の祭りのために、特別にプログラミングさせておいたの!」
彼女の指先が動くたびに、夜空の光の点が複雑な軌道を描き、巨大な『何か』を形作っていく。
最初はただの光の奔流だったものが、一瞬にして輪郭を成し、浮かび上がったのは――。
「……ッ!?」
それは、夜空を駆ける純白の神獣シロ様の、あまりにも壮麗で、あまりにも愛くるしい巨大な姿だった。
夜空の星々を背景に、シロ様が空中でゆったりと欠伸をし、その周りには星の光を纏ったコン吉とコン次郎のキツネ兄弟、そして巨大ヒグマが、まるで銀河を遊泳しているかのように描き出されている。
高さ三百メートルにも及ぶ、光で描かれた『神獣とモフモフたちの巨大アート』だ。
「わ……あぁ……っ、シロちゃんが、空に……っ」
村のおばあちゃんたちが、膝を崩して空を見上げ、ボロボロと涙を流し始めた。
「なんてこと……。夢を見ているのかい? こんな綺麗なもの、一生に一度だって見られるとは思わなかった……」
「ああ、綺麗だ……。本当に、神様が見守ってくれているみたいだよ……」
村人たちの瞳が、感動の涙で輝いている。
十年前に祭りが消え、過疎化で村から光が失われ、ただ寂しさに耐えるだけだった彼らにとって、この光のアートは、空からの祝福そのものに見えたに違いない。
ジンバルにセットされたiPhone miniの向こう側で、一千万人を超えるリスナーたちが沈黙し、次の瞬間、絶叫に近い熱狂でコメント欄が爆発した。
『空にシロ様が浮かんでる……!?』
『ドローンアートの規模がバグりすぎてて開いた口が塞がらない』
『これ、一体いくらかかってるんだよww』
『涙腺が崩壊した。村の人たちの涙と、空の光が綺麗すぎて……』
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)=”Bravo, Charlotte! You used the budget better than I did! A masterpiece for the sanctuary!“(ブラボー、シャーロット! 私よりも予算を上手く使ったな! 聖域のための最高傑作だ!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$50,000MeTubeギフト)=”For our King and his fluffy guardians! This is my Hollywood soul!“(我らが王と、そのモフモフの守護者たちのために! これが私のハリウッド魂よ!)』
世界中のVIPたちが、資本の力で描かれた空の奇跡に喝采を送り、祭りの夜空はもはや地球上で最も豪華な展示会場と化していた。
そんな、空を飛ぶドローンが数千台も乱舞し、数億円単位の光のアートが村人を号泣させているカオスな状況下で。
俺は折りたたみチェアで、いつものタッパーを開けていた。
中に入っているのは、完璧な水加減で炊かれた『冷やし玄米』と、自家製の『大豆ミートとレンコンのきんぴら』である。
「……よし。夜空の視覚エンターテインメントは正常に推移している。これより、指揮官の通常エネルギー補給を開始する」
俺は、夜空のシロ様(光のアート)と、それを見上げて号泣する村人たちのど真ん中で、一切の感情を排した顔で大豆ミートを咀嚼し始めた。
「ちょっ、お兄さん!? 今この空中で奇跡が起きて、みんなが感動して泣いてる最高潮のタイミングで、なんで一人だけ『レンコンの歯ごたえがいいな』みたいな顔でストイックに玄米食べてるんですか!?」
小春ちゃんが、空の神獣アートを眺めながら信じられないものを見る目でツッコミを入れてくる。
俺は冷たいほうじ茶で喉を潤し、涼しい顔で答えた。
「当然だ。どれほど空が光り輝こうとも、村人が感動で号泣しようとも、俺の代謝サイクルは一定だ。この状況下で血糖値を安定させ、いかなるイレギュラーにも即座に対応できる心身を維持する。これが需品科の鉄則だ」
俺はカメラの前に向き直り、キリッとした真顔でいつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。空中に浮かぶ神獣の光のアートを見て、ハリウッド級の感動を覚えられているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『空に光るシロ様を前にして、まだ言い訳する気か!!!』
『主の限界言い訳タイム・空飛ぶモフモフアート編ww』
『さあ、この数千機のドローンをどう論破するつもりだww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは、ハリウッド女優が私費を投じて空に描いた感動的なアートではありません。あれは、最近増加している『十勝地方の山間部における野生動物の個体数調査』のための、最新鋭高精度センサー搭載ドローン編隊です。光っているのは単なるディスプレイ用のLEDではなく、赤外線と紫外線で山林をスキャンするためのアクティブ・センサー。たまたま飛行プロトコルがバグり、編隊の軌道計算が誤作動を起こしてシロのシルエットを形成してしまっただけ。ええ、ただの『野生動物調査の誤作動』と『無駄に高いスキャン機器の残像』ですね」
「んなわけあるかあああ!!!」
小春ちゃんが、屋台の余り物の『特大サイズの団扇(うちわ)』で、俺の後頭部に完璧な一撃を見舞った。
「センサーがなんでシロちゃんの顔の形になるんですか!! 誤作動でそんな芸術的な夜空が描けるわけないでしょうが!! シャーロットさんがドヤ顔で『私の魂よ!』って叫んでたでしょうが!! 素直に『ハリウッド女優の愛が重すぎて空に浮かんだ』って認めなさいよ!!」
『小春ちゃんの団扇スマッシュ炸裂www』
『野生動物の個体数調査(ただの光のショー)』
『アクティブ・センサーの誤作動(シロ様の超絶アート)』
『適応力バグおじさん、ついに空のアートまで調査機器の残像だと言い張るww』
『言い訳が無理矢理すぎて笑いと感動が同時にくるのやめてww』
俺の理不尽極まりない、調査機器としての限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレのツッコミに、感動の涙を流していた一千万人を超える視聴者たちは、その涙も吹き飛ばして大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(ほんと、空を飛ぶまで私の虜ね、人間たちは)』
空の光のアート(シロ様)が欠伸をすると、それを見上げていた地上のシロ様も神秘的な『オッドアイ』の瞳――左目のサファイアブルーと右目の琥珀色――を細め、シンクロするように「ニャーン」と鳴き、満足げに喉を鳴らした。
「……まぁ、理由はどうあれ。村の皆が、あんなに嬉しそうな顔をしているなら、それが一番だ」
俺は苦笑いしながら、十勝の夜空に浮かぶ光のシロ様を見上げた。
激務に潰されて逃げ込んできたこの限界集落。
最初は一人で静かに暮らすつもりだったが、今では世界一尊いモフモフたちと、騒がしい女子高生、そして一千万人のリスナーたちに囲まれた、世界一バグった聖域になってしまった。
ハリウッドの資本で描かれた光の奇跡と、俺の鋼のような大豆ミート咀嚼。
限界集落の夏祭りは、大爆笑と温かい涙に包まれながら、伝説の夜の果てへと力強く続いていくのだった。
コメント
1件
わあ……空にシロ様のドローンアートが浮かんでる光景、想像しただけで鳥肌が立ちました! 村の皆さんが涙を流すシーンに、私もじんときました……。それなのに主人公の需品科魂炸裂で、玄米と大豆ミートの咀嚼を始めるギャップが最高です(笑)。「野生動物の個体数調査の誤作動」って言い訳、もう芸術の域ですね。ハリウッドの資本で描かれた光の奇跡も、鋼のメンタルで流さない主人公も、どちらも愛おしいエピソードでした!