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夜明け前の錆の都は、薄く霞んだ朝霧に包まれていた。鋼谷は歩き慣れた廃工場の道を進みながら、ホロウギルドのアジトを目指していた。昨夜、急ぎの報せを受けてここに来たが、真嶋に会うのはこれが初めてだった。
廃工場に入ると、そこにはいかにも年季の入った面構えの男が鋭い目をこちらに向けて待っていた。彼こそが、ホロウギルドのリーダー、真嶋だった。真嶋はその場に佇む鋼谷をじっと見つめ、やがて口元に小さな笑みを浮かべた。
「…よう、錆の都の有名人が来たってわけか」
「やかましいな。どいつもこいつも、俺を見下してんのか?」鋼谷は軽口を叩きながらも、視線は鋭いままだ。
真嶋は肩をすくめ、「見下してなんかいないさ。ただ、うちのギルドにまで来るってことは、よほどの覚悟があってのことだろう?」と言いながら、彼に向かって手を差し出した。
鋼谷はその手を握り、やや驚いたような顔をした。「覚悟、か。お前たちはただ、ここで生き延びようとしているだけだろ?」
真嶋は静かに笑って答えた。「その生き延びるための覚悟がどれほどのものか、分かるか?仲間を信じて、裏切り者の影に怯えながらも、毎日を踏ん張るんだ。それは簡単なことじゃない」
鋼谷はその言葉に、少しばかりの敬意を抱いた。彼は戦場で多くの仲間を失い、戦うことしか知らないゴーストバスターだが、こうして弱き者が必死に生き延びようとする姿には、何か共鳴するものを感じたのだ。
二人はしばしの沈黙の後、少し険悪ながらも共に作戦を練り始めた。骸教団が壊滅したものの、依然として錆の都には不穏な動きが見え隠れしている。その中心に、ホロウギルドが狙われていることも間違いないと、鋼谷は考えていた。
「真嶋、お前らはなぜ、ここに留まるんだ?他に逃げ場はいくらでもあるだろうに」
真嶋は少し遠くを見つめるようにして、「俺たちは、錆の都を知り尽くしている。それに、ここでしか生きられない者もいるんだ」と静かに言った。「ここにいる仲間たちを守りたい、それだけだ」
その言葉を聞き、鋼谷は無意識のうちに頷いた。自分もまた、かつては誰かを守るために戦っていた時期があったかもしれない。それがいつだったのかさえ、もはや思い出せないが…。
「…分かったよ。俺も少しは協力してやるさ。せっかくこの腐った都に来たんだ、何かしらの意味があるんだろうよ」
そう言って、鋼谷は不敵に笑った。
その後、二人は夜明けの薄明かりの中で次の行動計画を練り、錆の都の闇に潜む脅威に立ち向かう決意を新たにした。ホロウギルドを守るため、そして、彼ら自身の「覚悟」を示すために。