今絵を描いている、このペン。これが、すごく危険なものだったということは、後になって気づく。
「え、すっごくすらすら描けるんだけどーっ!」
言葉どうり、すごく描きやすかった。
画用紙の上をなめらかに走って行く。
さっきから夢中で描いていた。
だからなのかな。
少しずつ、体から力が抜けていく……。
疲れてるんだろうけど。
でも……
私はどうしても、描くことを止めることはできなかった。
止めたら、このペンの魔法が溶けてしまいそうな気がして。
「せっかくだから、全部描きたいよ……」
それにさっきから、描いている元になる木が、色鮮やかになっていっているのだ。幻覚かと思ったけど、まちがいなくあの木は色を取り戻している感じ……。まるで夏の木みたいだった。今は冬なのに。
でも、描いているうちに、私には気づいたことがある。
それは、
ーーこのペンは、自分のチカラと引き換えに、描いたものの命や輝きを取り戻しているーー
そんなわけないんだけど、でも一つ、証拠がある。
私の体から、力がなくなっていっているのだ。
「でも、命を分け与えていることになるんじゃ……」
「璃空ちゃんーただいまっ」
「おかえり。」
拓斗が帰ってきた。
「……!璃空ちゃん、そ、そのペンって……!」
「……え?」
続く
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