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「佐久間くんが好きだよ、・・・恋愛対象として」
すごいスピードで楽屋を出ていった
荷物全部置いていっちゃったけど、大丈夫かな・・・?
今日はもう仕事ないって言ってたから、あとは着替えて片付けるだけだと思うし、他に影響はないかも
引き金を作った俺に責任があると思うけど、たぶん今は追いかけないほうがいい気がする
望んだ結果にはならないかもしれない
それでも、どうしても、もう抑えきれなかった
ずっと心の中で燻っていた想いだった
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俺が事務所に入所した時には、佐久間くんは今の前身であるグループの1人だった
数あるデビュー前のグループの中でも、ダンスパフォーマンスは圧倒的
それゆえステージに対する思いが大きく、時には先輩・後輩関係なく厳しい言葉をかけることもあってか、いつしか恐れられるようになった
その先入観もあってか、少し近寄りがたい人だった
ある日、事務所でレッスンが終わったあと、帰り際に何気なく覗いたスタジオで、彼が1人で練習をしていた
トランポリンを使った、空中でのバク転
その美しさに、思わず息を止めた
1回飛んだら、録画しているスマホで自分の姿を確認して、また再び宙に舞う
同じ舞い方なんて1つもない
どんな姿でも目が離せなくて、見惚れてしまっていた
遠くから同期に声をかけられるまで、その場にどのくらい見ていたのかわからない
「何見てんの??」
こっちに向かってくるのを、慌てて誤魔化した
あの美しさ、自分以外には見せたくない
舞台が始まれば、大勢の人がその姿に魅せられるんだろうけど、今見た彼の姿は自分の心の中だけに留めたかった
同時に言葉に表せない衝動のような感情が、心の片隅から沸々と湧き上がっていた
一目惚れだったって、今ならわかる
あれから数年後、俺は彼と同じグループへの加入が決まった
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同じグループになってから、佐久間くんとの距離は一気に縮まった
途中加入のメンバーということもあって、相当気遣ってくれたと思う
怖い先輩という印象を感じなくなるくらい、親しくなっていった
嬉しいことも悔しいことも分かち合って、風呂友になって、時には真面目にお芝居について語り合ったりして、いろんな時間を彼と共有してきた
ただ、交友関係が多い彼にとっては、俺はメンバーの1人であり、後輩の1人という認識だったかもしれない
でも俺はいつの間にか、先輩後輩という垣根を超える感情を佐久間くんに持ってしまってた
これは自分の中だけに留めておかないと
絶対にバレちゃいけない
なんとかこの想いにフタをして、人前には出さないように、どこか一線を引いているように接してきたつもりだった
(後でわかったけど、全くできていなかったと思う)
今はそれぞれ個人の仕事が多くなって、グループ全員での仕事も月に2、3回あるかの状態だ
全員じゃなくても佐久間くんと一緒になる仕事は、前に比べると確実に少なくなってると思う
だから今日は久々に彼の姿を見ることができて嬉しくて、ついつい顔が緩みそうになる
今日初めて俺の姿を見つけた佐久間くんは、ダッシュで俺の元に来て、笑顔で抱きついてきた
照れ隠しにウザがりながらも、彼を受けとめる
彼が使っているシャンプーの香りが、仄かに鼻を掠めてきてなんだか心地いい
こんな感じでメンバー全員での撮影中も、お互いにちょっかいを掛け合っているもんだから、翔太くんがニヤついて
「なんだよ、そこのロミジュリ。 あいかわらず、お熱いねぇ」
冷やかしの言葉を投げてきた
どっちがロミオで、どっちがジュリエットに見えるのかな?
そんなことを考えている間に、翔太くんは舘さんが回収していた
その後、個人撮影が一番最初に終わって、誰もいない楽屋で気を抜いていたら、彼がテンション高く楽屋に戻ってきた
どんな仕事も100%で向き合う彼は、アドレナリンがまだ残ってるんだろう
『あ、めめ、おっち〜』
手を振りながら、笑顔で話しかけてくる
「お疲れ様、佐久間くん」
その笑顔に釣られて、俺も思わず笑みが溢れた
彼は鏡の前にある椅子に座って、一息ついてからスマホを取り出した
『ねぇ、めめって、この撮影終わった後はまた別の現場?』
「うん、佐久間くんは?」
『オレはねぇ、もう今日は終わり〜』
「いいなぁ、どっか行くの?」
『ん〜、特に決めてないけど、久々に親友に声かけて飲みに行こうかな〜』
「・・・ふーん」
・・・いいなぁ、俺も佐久間くんと飲みに行きたい
食事じゃなくたっていい、彼と2人だけで過ごす時間が数分だけでいいから欲しい
ここ最近、お互いの全然予定が合わなさすぎて、お互いの家すら行き来することもできなくなった
仕方ないと思いながらも、俺じゃない別の人と会うということを聞いた瞬間、フタをしていたはずの感情がいつの間にか溢れてしまって、
「・・・ねぇ、佐久間くん」
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[・・・・・・何やってんだよ]
「・・・俺もよくわかんなかった」
深夜2時の電話相談
相手は俺よりも年下なのに、妙に大人びいた雰囲気と感覚をもつラウール
佐久間くんへの想いを、唯一打ち明けたのは彼だった
打ち明ける前には、なんとなく気づいていたようだったけど
佐久間くんが楽屋を飛び出した後、次に戻ってきたのは彼
「・・・ねぇ、なんかあったの?」
たぶん、彼は怒涛のように出ていった佐久間くんを見ていない
でも楽屋に漂う不穏な雰囲気を感じ取っていた
俺は説明も、誤魔化しもできず、ただそこに立っていた
「夜、電話してあげるから」
俺の肩を叩き、そう言い残して、彼は次の仕事に向かっていった
そして宣言通り、電話が来たのは午前2時になろうとした時だった
[ 勢いだけで告ったんじゃないよね? ]
「・・・」
[ え・・・? まさかマジで勢いだけなの・・・? ]
「・・・そうかも」
[う〜わ〜・・・]
電話の向こうで彼がドン引いている顔が浮かんだ
[ 佐久間くん鈍いから、めめの想いに全然気づいてなかったでしょ ]
大当たりだけど、一応先輩だぞ、彼は
[ 佐久間くん大混乱してるんだろうな〜、今頃 ]
「寝てるんじゃない? 2時だぞ」
[ ・・・そうじゃなくて、さぁ!!! ]
電話でよかった
目の前で言ったら、頭叩かれていたと思う
「・・・これまでの関係が崩れるかもしれないかったけど、もう抑えられなかった」
[ ワガママだね、めめは。 自分以外の人と会うのを聞いて、イヤになっちゃった? ]
「イヤというか、なんか悔しいというか・・・」
[ ・・・気づいて欲しかったんでしょ、俺が佐久間くんを独り占めしたいって ]
図星だ
佐久間くんには、俺だけを見て欲しい
どんな表情も、俺だけのものにしたい
彼を、自分の腕の中に閉じ込めてしまいたい
こんな独占欲が自分にあったのか・・・と、初めて気づいた
自分にこんな感情を向けられていたら、怖くて仕方ない
もしかしてストーカーって、こんな気持ちなのかな?
[ もう言っちゃったことは無かったことにできないんだからさ、どんな結果になっても受け止めなよ ]
「・・・そのつもりだよ、ダメでも佐久間くんはこれからも大切な先輩だし、大切なメンバーだよ」
[ ・・・あ〜・・・時間かかりそう、これ ]
「・・・・・・?」
[ まぁ頑張って、おやすみ ]
あっさり電話は切れた
そういえば、舘さんにも同じことを言ってた気がする
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ラウールが楽屋を出て、再びぼんやりしていたら、今度は舘さんが入ってきた
「あ、お疲れ様、佐久間の荷物ってコレだよね」
手早く佐久間くんのカバンや着替えをまとめていく
舘さんが佐久間くんを捕まえたんだろう
きっと他にも誰かいるんだろうな
ラウール以外にも俺のことがバレるのは、時間の問題かもしれない
そんなことを考えていたら、佐久間くんの荷物と着替えを持って楽屋を出ようとする舘さんが、チラッと振り返って
「・・・頑張ってね」
そう言って、扉を閉めた
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あの告白劇から2週間
相変わらず分刻みのスケジュールをこなす日々が続いていた
でもふとした時に、告白した時の佐久間くんが頭をよぎる
俺の言葉を聞いた時、驚きと戸惑いで見開いた目
理解した瞬間に、恥ずかしさで動揺する表情
ダッシュで去っていく後ろ姿
困らせちゃった
でも言ったことに後悔なんてなかった
知って欲しかった、俺のこと
今日は雑誌の単独インタビューと撮影
撮影の合間の休憩中、スマホを見てはため息ばかりが出てくる
返事は欲しいけど、連絡する勇気が出ない
あんな唐突なことをかましてるのに、なんでこんな小さなことに勇気が出ないんだろう
佐久間くん、俺のことをどう思ってる?
これだけなのに
文字は入力してるのに、送信ボタンが押せない
中高生だったら、先のことも考えずに勢いでいけると思うのに
大人になってから、怖くなることが多くなった気がする
あれこれ考えていると、スマホが震えた
仕事の連絡かな?と思って画面を確認すると、今、俺が一番求めている人からのメッセージだった
“ 次の休み、会える? ”
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「・・・お邪魔します」
偶然にもお互いオフがあるのを、佐久間くんが見つけていた
あれから2週間とちょっと、忙しさもあったんだけど、いつも以上に食があまり喉を通らなかった
原因は一つしかない
連絡が来てから今日までの3日間なんて、ほぼ絶食に近かったかもしれない
玄関で俺の姿を見た佐久間くんは、なんだか不安そうな顔をしていた
『あ、あがって・・・』
「・・・うん」
靴を脱いだら、妙な緊張感が襲ってくる
どうして俺を呼んだのか、理由はわかってる
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ソファに座って待っててと言われて、素直に従う
コーヒーの香ばしい香りと共に、カップに注ぐ音だけがリビングに響く
やがてマグカップを2つ持った佐久間くんが、俺の隣に静かに座った
「いただきます」
『・・・どーぞ』
俺も佐久間くんも、まっすぐ前を見たまま、カップに口をつけた
あ、美味しい
でも、これ今言うことじゃない
お互い無言のままコーヒーを啜っていたが、最初に沈黙を破ったのは佐久間くんだった
『・・・オレね、あれからずっと考えてた』
「・・・うん」
『ずっと、めめはオレのそばで、オレのことを一番に考えてくれてたんだって』
「・・・うん」
『みんなが気づくくらいオレのことを思ってくれてたのに、オレ、全く気づいてなくて』
・・・・・・ん、今、なんて??
「・・・え? みんな??」
『・・・・・・あれ?』
思わず佐久間くんの顔を見た
佐久間くんも俺の方を向いていた
「み、みんなって、メンバーの!?」
『うん・・・』
え、じゃあ舘さんが楽屋を出ていく時に言ってたのは、全部わかってたってこと?????
俺が佐久間くんに何したのか
急に恥ずかしくなって、口を手で押さえた
『・・・なんか、みんな知ってるみたい』
「えぇ・・・・・・」
それって、あべちゃんも、こーじも、ふっかさんも、岩本くんも、翔太くんも・・・?
あ、翔太くんが揶揄ってきたのも、気づいてたから・・・?
俺、そんなに顔に出てた?それとも行動に出てた??
でも一番伝わって欲しい人には、全く伝わってなかったのか・・・
それはそれでショックかも
そんなことを思ってると、佐久間くんが小さく笑った
『ごめんな』
「・・・うん」
笑っちゃうよね、バレバレだったなんて
すっげぇ、恥ずい
『それでね、ずっと考えてたことなんだけど・・・』
「・・・うん」
『あれから、めめのことばかり考えてた』
「・・・」
それって、大丈夫だった?
佐久間くんの仕事の邪魔にならなかったかな?
『オレさ、経験少ないからさ、この気持ちが何なのかはわかってないんだけど・・・』
「・・・」
『めめが隣にいてくれることが、オレにとってすごく安心できる場所なんだっていうのはわかったんだ』
心臓の鼓動が速くなっていく
まさか、そんなことってさ
「佐久間くん・・・」
『だから・・・これからも、めめの隣にいることができたら嬉しい』
「うん・・・」
自分が想定していた以上の答えを、佐久間くんからもらえるとは思ってなかった
拒絶されるのかも、もう一緒に風呂も入れないかも
言ったことに後悔はしてなくても、この2週間はネガティブな思考ばかり支配していて、不安の波に飲まれそうだった
その波が穏やかなものに変わって、心に小さな暖かさが生まれた気がする
「ありがとう、佐久間くん」
優しく受け止めてくれる佐久間くんに甘えるように、ゆっくり手を伸ばして抱きしめた
佐久間くんも答えてくれるように、俺の背中に手を回してくる
あったかい
このまま溶けてしまいそう
そんなゆっくりした時間が流れるなか、佐久間くんが放ったセリフが俺に衝撃を与えた
『・・・隣にいるのもいいけど、抱き合うのも気持ちいいんだね』
え?
今、なんて言った?この人
何、その殺し文句
ダメじゃん、それ
身体をゆっくり離すと、佐久間くんは頭に「?」がついてるような表情で俺を見ていた
わかってない
佐久間くん、絶対わかってない
今、俺は必死に理性を保ってるのに
優しい気持ちのままでいたいのに
佐久間くんの言葉が、俺の小さな下心の導火線に火をつけてしまった
「・・・佐久間くん、それダメだよ」
『へ・・・』
ごめん、もうダメだ
気づけば、唇を重ねていた
さすがに佐久間くんも、いきなりのことに驚きすぎているのか、顔も身体も固まったまま
抵抗がないのをいいことに、そこにつけ込んでしまった
触れ合うだけのキスから、ちょっと強引に唇を押しつけるように、少し開いた口の隙間から舌を入れてみたり
逃がさない
絶対に離さない
ようやく佐久間くんが焦り始めて、小さく抵抗し始める
『め、めめっ・・・!! ちょ、ちょっと、まっ・・・・!!!』
「佐久間くん、ほんっっとにもう、ダメだから」
『えっ・・・っと、ま、まって、マジで! あっ・・・!!!』
・・・・・あ
逃げようとする佐久間くんの身体を抑えようとして、バランスが崩れてしまった
その結果、ソファに押し倒すような体勢になった
もうこの時点で理性なんて無くなっていたと思う
俺を見上げた佐久間くんの顔は、少し怯えているようだった
『わ、わわわわわわわ!!! まって、蓮、まって!!!!! これはまだダメだから!!!』
・・・ん?
「・・・・・まだ?」
『まだ!!!!!! もうちょっと、まって!!!!!!』
え、いいの?
それって、未来があるってこと?
この状況から逃れるために咄嗟に言ったかもしれないけど、俺は良いようにとらえちゃうよ?
佐久間くんの顔が真っ赤になっていて、すごく可愛い
なぜか笑いが込み上げてきて、佐久間くんの肩に顔を埋めて堪えた
「・・・・・・く、くくくくくっ」
『え・・・?』
「ご、ごめんね、くくっ、・・・急ぎすぎちゃったかもね」
『・・・ちょっと怖かったぞ』
「ふふっ、ごめん」
止めてくれてよかった
このままだと、本当にただの獣になるところだった
つい笑っちゃったのは、そうでもしないと理性が戻らないと思ったから
佐久間くんの体を抱き起こして、ピンクの髪の毛を撫でてみた
乱れていた吐息も、徐々に落ち着いていくのがわかる
目を合わせてみたら、何を思い出したのかはわからないけど、瞬間湯沸かしのように佐久間くんの顔はまた赤くなった
やっぱり、可愛い
その顔を見ると、ついつい顔が緩んでくる
ごめんね、佐久間くん
『・・・おい』
「ごめんって」
『もー・・・ほんとに勘弁してくれよ・・・』
呆れるような口調で訴えてきた
でもさ、未来があるんだったら、もっとスゴいことすると思うよ、きっと
時間はかかると思うけど、一つずつ進んでいけるかな
あんなキスをしといて、順番はおかしいけど、とりあえずもう一つだけお願いしてみようかな
「・・・ねぇ、もう一回、俺のこと呼んでくれる?」
『え?・・・めめ』
「違うよ、そうじゃなくて」
はて?と言う顔で、考え始めた佐久間くん
少しして思い出したのか、両手で顔を覆ってしまった
その顔、もっと熱くなってそう
今日はもう無理かな
でも、いつか「蓮」って呼んでくれるのを、日常にしたい
その時はもちろん俺も、こう呼ぶから
「じゃあ、その時まで待ってる、大介」
『不意打ちするな』と口を尖らせるけど、ソワソワし始めた佐久間くん
佐久間くんが点けた俺の下心の導火線の火は、爆発するまでまだまだ長くかかりそう
とりあえず、俺も佐久間くんに宣戦布告しておこうかな
もう我慢する必要なんてないし
そっと耳元に近づいて、囁いてみた
「絶対、俺が落とすから、覚悟して」