あれから一週間経った
俺はあの三人と再会してから外には一歩も足を踏み出すことはなかった。
外に出ようとすると、突然あの時起きた恐怖が一気に襲いかかってきて思考を恐怖で埋め尽くしていく
そのせいであのカスすぎる軍に居た時の記憶がフラッシュバックしていく
それでも何度も、何度も何度も彼奴等の邪魔な国を滅ぼそうとするため
俺の大切な人がこれ以上居なくならないようにするために何度も全て壊そうと行動するも、全て完結した
この山の奥深くにある家の狭い部屋で。全部。
まるで俺の行動も、存在も、全て無駄だったと思う程真っ暗な部屋
あの人の”色”が染まるこの部屋に居ること自体苦しかった。でも何故か足が動かなくて毎日此処で苦しみ続ける
限界が来て意識が落ち、結局その部屋で寝てしまうことに抵抗は無かった。
俺の存在を消してくれるようなそんな感覚がしたから
でも、夢の中で出てくるんよ
アンタが、あんたらと共に過ごした日々に炎がついて全てが燃えて真っ暗な闇に落ちていく
そこから顔も知らない誰かに罵声を浴びせられ、誰かに殴られているような光景が目に映って
それが嫌でそこから抜け出したとしても彼らに惨めな俺の姿を見られて捨てられる
非現実的だけど……何処か現実味を感じるそんな夢
そんな経験もしとらんし彼奴等がそう簡単に捨てるわけもないって分かってる
分かってるのに、脳が勝手にネガティブな思考に行き着いて息すら出来ないほど心が苦しくなる
そして目を覚ます
明かりを灯すことのない真っ暗な部屋の壁についている窓から差し込む月の光
その優しく包みこんでくれるような月の光が唯一心を救ってくれる
そのお陰で昼夜逆転してきている、勿論生活リズムは戻さないといけないことは分かっているが……
太陽が昇り輝き続ける時間帯が、俺には非常に生きづらかった
理由なんて知らない、というか知る必要もないと思ってる
「 ……ははッ 」
乾いた笑いが思わず口から零れていく
今の俺は既に狂ってしまっているのだろうか
うまく笑うことも出来ないし泣くことも出来ない、なんなら怒ることすら忘れた
流石に感情を忘れることはないやろ、って油断?って言えばええんかなw
そんなんしとったけど小説でよく見るこんな感じのやつってほんまにあるんやな、実感したわ
「 …ごめんな、こんな奴で 」
「 ほんま、あの屑より迷惑かけてる自信しかないわw 」
一人しか居ないこの真っ暗な部屋で静かに呟く
このままパッて消えることが出来たらどれほど良いのか、闇に溶けていけばどれほど良いのか
そんなことは人間には出来るわけがない。マジシャンとかじゃないしなそもそも
というか今の自分はどれほど醜くなっているのか、それが一番俺の中でずーっと気になっていた
「 まぁ…自分の姿なんて見る気ないんやけどなw 」
「 …ふぅ……さっむ 」
冬が近づいているこの時期、山奥にいるせいか街に降りたときより寒い気がする
ただ、俺はこの寒さが好きなんよなぁ
まるで故郷を思い出す──────
俺が引き抜いてきたあの新人と共に過ごした北の大陸……今は亡き故郷やけども
あの寒い白銀の世界で過ごした日々は忘れることはない
あれも嫌な思い出が沢山あるけれども
そう脳内で懐かしい記憶を辿っていっていると、無意識に自分の首の方へ手を伸ばしていた
ずっとマフラーを付けていたのか、首に巻いていないと落ち着かない
ほんまに置いてきたことに後悔しまくってます。せめて置いていくならどっかで買えばよかったな…
いや、付けてたほうが目立ちやすいか
今まではそんなことはなかったのにこの頃は色々と考え込んでしまう
……まぁ、少しぐらい考え込んだりしてもいいと思う
つーか俺何考えてんだろ、寒さで脳がおかしなってて草生えるわ
「 はぁ……なんか食えるもんあったっけな… 」
動きたくないと叫ぶ足を無理やり動かして、部屋を出る
重い足取りだが、ゆっくりと一歩一歩進んで冷蔵庫の近くまで行く
ほんまにこの小さい家に台所とか普通の一般家庭にありそうなもん全部揃っててビビるし綺麗やし…
俺が来る前は誰か住んどったんかな、そう無駄なことを考えながら冷蔵庫から適当に食料を取り出す
その時だった
コンコン
「 ッ……は、? 」
扉を叩く音が鳴り響いた
誰も来るはずもないこの山奥に誰か来たのか?
追手かなにかか?それとも旅人とか?
先程壊れた機械のようにあまり動かなかった思考が直ったように、素早く動きまくる
人が外にいる、その事実から逃げたかった。今の俺は指名手配されていたっておかしくない
どうすればいい?
どうしたらこの状況を逃れることが出来る???
分からない
なにもわからない
どうしたら
どうやったら報われる
なんで、なんでひとが
上手く呼吸が出来ない
これが全部夢であれば良い、早く去って欲しい
生憎電気はついていない…つけてなくて良かった。だって人がいるんだろうなって気付かれるから
このまま去ってくれ、俺に構わないでくれ
そんな願いは
叶うはずもない
ガチャ……
「 ッ、 」
ガタッ
体が勝手に動き、咄嗟に物陰に隠れる
この家に入ってきた人物を警戒するように、見つかりたくなかったから
?「 ……鼠かなんかか? 」
聞き覚えのある声だった気がするが、それは気の所為だろう
入ってきた人物は荷物を置いて家中をウロウロ徘徊していく
多分…前の家主なのだろう、家の中を知り尽くしているような行動をしている
部屋の方に行ったことを確認し、急いでこの家から出ようと扉の方へ物音を立てないように静かに進み続ける
今頃部屋の中に入って、身に覚えのない荷物があることを確認していると思う。
なので確実に俺が住んでることをバレたであろう
ならいち早く去っていけば良い
何故か過去の俺が隠してあった予備のフードマントを手にとってすぐに身に着ける
顔を見せないよう、フードで隠す
手を伸ばせば扉に届く所まで進み、走り出そうとした瞬間、手を掴まれた
「 ッ、?! 」
部屋の方を徘徊していた筈の此処の家主が戻ってきたのか
にしても早すぎる、まるで俺が居たことを知っていたかのような行動……バレとった???
最悪や
どうすればいい、これはどうすれば……
俺は何をしたらこの現実から逃れることが出来る?
またネガティブな思考へと動いてしまう
どうしたら良かったのだろうか、俺は
……いや、もう考えるだけ無駄か
そう思って手を掴んできた奴の方へ振り向く
「 ……ぇッ、? 」
「 ……ッ?! 」
「 ……ni…? 」
「 …と、tn…… 」
なんで、日記を残して静かに去っていったアンタが
いつも相談にのってくれた兄のような存在であるアンタが
「 なんで…此処に居るん…ッ、? 」
「 … 」
コメント
2件
よかった敵じゃなくてッッッッッ! (´;ω;`)
n、ni~.....。゚(゚´Д`゚)゚。