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ルシファーの一撃がマデスの体を貫いた。魔力の奔流があたり一帯を揺るがし、地面が裂け、空間が歪む。マデスはよろけながら膝をつき、鮮血が地面に滴り落ちた。しかし、その顔には悔しさよりも、どこか安堵に似た表情が浮かんでいた。
「さすがだな、ルシファー…」
彼は力なく笑い、前のめりに倒れそうになるのを必死で支えた。
ルシファーは剣を降ろし、息を整えながらマデスを見下ろした。彼の目には冷徹な光と、かすかな悲しみが混ざっていた。
「マデス、いつまでお前はそんな無謀なことを続けるつもりだった?」
「無謀…か…」マデスは苦しそうに笑いながら、血を吐きつつ言葉を紡ぐ。「無謀だとわかっていても、誰かがやらなきゃならないこともあるんだよ、ルシファー。俺らがそうだったろ?」
その言葉にルシファーはしばし黙った。彼らはかつて親友だった――いや、単なる親友以上の絆を持っていたと言ってもいい。神と悪魔の壁を超えた関係。その記憶が、ふと蘇った。
「変わらないな、お前は。」ルシファーは静かに言った。「だが、それが命取りになる。」
マデスは最後の力を振り絞り、片手を上げた。ルシファーはその動きに気づくが、あえて止めようとはしなかった。むしろ、その行為を見守るように立ち尽くした。
「これは…友情の証だ。」マデスの声は微かだが、力強さを失っていなかった。
突然、空気が凍りつくような冷気が辺りを包み込んだ。マデスの冷凍だ。氷の結晶が瞬く間に広がり、ルシファーの足元から身体を徐々に覆い始めた。
「お前に…最後のプレゼントだ…」マデスの瞳には、笑みとともに涙が浮かんでいた。
ルシファーはその冷気に囚われながらも動じなかった。彼の体が完全に凍りつく直前、静かに言葉を放つ。
「マデス、お前は愚かだ…だが、それが俺たちの道だ。」
マデスが力尽きて倒れるのと同時に、ルシファーも氷の中で一時的に動きを止めた。その姿はまるで、二人が同時に戦いを終え、互いの意思を伝え合ったかのようだった。
静寂が訪れる中、残された者たちはその場の光景に言葉を失った。
タクトがその場に駆けつけ、崩れ落ちたマデスを見下ろした。彼の表情には怒り、悲しみ、そして困惑が入り混じっていた。
「なんでだよ…」タクトはつぶやいた。「なんで、あんたがここまでして…」
マデスはかすかに目を開け、微笑んだ。
「親友なんだよ、タクト…あいつは俺にとって、ずっと…」
その言葉を最後に、マデスは静かに目を閉じた。
ルシファーの氷はゆっくりと溶け始めた。彼が再び動けるようになった時、そこに立つ姿には、かつての冷徹さではなく、どこか哀愁が漂っていた。
「これが、俺たちの選んだ道だ。」
彼は静かにそう言い、背を向けて歩き出した。
戦いは終わったが、その背後には、親友としての深い絆の記憶が残された。