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お股ポテト
29
はるにし
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王都の中央部、高級店が並ぶ通りにある洋服店。
そこで、バルトの服を何枚か仕立ててもらった。
「何を着ても似合うね。顔の造詣が美しいのは、美点だよ」
「褒めてんのか、それ」
されるがままになって採寸されているバルトは窮屈そうで、ちょっと可哀想だった。
「折角来たのだから、リンネも服をあつらえようか」
「僕はいいよ、お屋敷にいっぱいお洋服があるもの」
色んな服があるけれど。
半ズボンにサスペンダーと白いシャツ、黒のブーツがお気に入りだ。
今日はジャケットも着ているから、ちょっと暑い。
「舞踏会に出る時の燕尾服を作りたいんだよ。採寸しておいで」
「でも……」
店の人がいっぱい来て、連れて行かれた。
「シュメリ」
慌てて振り返ったら、シュメリが笑顔で手を振っていた。
やるしかないと思った。
結局、何時間もかけて、僕とバルトは服の採寸をした。
「はぁ……」
僕とバルトは、公園のベンチに腰掛けて、項垂れた。
疲れすぎて顔から生気が抜け落ちている。
「大丈夫かい、二人とも」
シュメリが飲物を差し出した。
公園に出ているキッチンカーで買ってきてくれたらしい。
採寸の後、シュメリが休憩にと勧めてくれたのは高級そうな店だった。
ジャケットを脱いで服を着崩したバルトが素通りした。
表通りから一本奥に入った、この公園を見つけて入った。
(バルトが素通りしてくれて良かった)
僕もあの店だったら、きっと寛げなかった。
「何が気に入らないんだい。あの店は料理もデザートも逸品なのに」
シュメリが不満そうにしている。
申し訳ないけど、僕はバルトの味方だ。
「疲れたんだよ、採寸が。のんびりさせろ」
バルトが飲物を煽った。
「僕も……あ、このソーダ水、美味しい」
ちょっと酸っぱい感じが、疲れた体に沁みる。
「仕方がないね、全く」
シュメリが僕の頭を撫でた。
「そういう形式的な食事も、慣れてもらわないといけないんだけれど」
「魔術師団は、そんなにお高く留まった連中なのか」
「いいや。どちらかというと変態の集まりだ。堅苦しいのを嫌う人ばかりだよ」
「じゃぁ、いいじゃねぇか」
「そうだね。バルトには居心地が良さそうだ。あーぁ、この私の紹介なのに」
「じゃぁ、シュメリの紹介とは言わねぇよ」
「騎士団長と魔術師団長がスカウトした新人だ。バレないワケないだろ」
二人が仲良くお話している。
前より、雰囲気がいい気がする。
僕は、ソワソワした。
(理想のシュメバルに近付いてきちゃった。買い物イベ、他に何があったっけ)
小説の内容を必死に思い出す。
周囲をキョロキョロした。
「なんだか、お店がいっぱい?」
キッチンカー以外にも、市のようなものがたくさん出ている。
「今日は公園でフリーの市をやっているようだよ。休んだら、店を見てみるかい?」
「うん! 見てみたい」
ワクワクしながら返事した。
「バルトも行こう!」
「そうだな。面白そうだ」
シャツのボタンを外しながら、バルトが市を眺める。
「僕もジャケット、脱いでいい?」
「仕方がないね。私の空間魔法で締まっておこう。二人ともジャケットを貸して」
僕とバルトは、素直にジャケットを差し出した。
その姿を眺めて、シュメリが吹き出した。
「二人とも、同じ動きだ。まるで親子だね」
シュメリが可笑しそうに笑う。
僕はバルトと顔を見合わせた。
「バルトがお父さんなら、僕、嬉しいよ」
「父親……みてぇなもんだからな」
バルトが照れた顔をした。
ぐぅ、と間抜けな音が鳴った。
僕のお腹の音だ。
「僕、お腹空いちゃった」
「だから、さっきの店で食べていれば」
「市に食べ物も出てんだろ。適当に歩きながら食うか」
苦言を呈するシュメリの言葉を、バルトが遮った。
「うん! 楽しみ」
僕は立ち上がって二人の手を握った。
「行こう!」
二人が、似たような顔で笑った。
「はぐれるなよ」
「何でも食べたいものを教えて。買ってあげようね」
シュメリとバルトに挟まれて、手を繋ぐ。
こんな風に三人で市を回れるのが、楽しくて仕方がなかった。
コメント
1件
**はる。だわ。** 第26話読んだよ!買い物回って最高だよね〜 バルトとシュメリの掛け合いがだんだん気軽になってきてて、しかもリンネが理想のシュメルバルに近づいてるってソワソワしてるのが可愛すぎる 親子みたいって言われて照れるバルトも、お腹鳴らすリンネちゃんも尊い。手を繋いで市を回る三人の風景、公園の陽射しみたいに穏やかでほっこりしたわ