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『……』
アリが歪んだ綺麗な羽を運んでいる
羽は歪に丸まり、所々が欠けている、羽化不全の蝶の羽だろう。
その光景に笑みが溢れる
なぜこんなにも綺麗な光景なのだろうか
醜く美しい羽、それは矛盾する言葉、だけれどこれは正にそんな矛盾した言葉をつけるのが正しいだろう。
「こんにちは!」
『あぁ、こんにちは』
「何を見ているの?」
『自然の摂理』
「わぁ、本当だね!」
ふよふよと浮いている、青髪の少年
『私はオンボロ寮の監督生だよ、キミは?』
「僕はオルト・シュラウド!よろしくね監督生さん!」
『うん、よろしくねオルトくん』
「監督生さんはどうしてここにいるの?」
『森で山菜を取ろうとして、いつの間にかここにいたんだ』
『オルトくんはどうしてここに?』
「僕は兄さんと一緒に植物園で珍しい薬草が生えて採取する為に行ったらいつの間にここにいたんだよ!」
『へぇ、キミにはお兄さんがいるんだね』
「うん!僕の自慢の兄さんだよ!」
しゃがんでいた体勢から立ち上がって、目の前の光景を見る
『さて、登ろうか』
「そうだね!」
私のつま先から小さな虫、大きな虫、動物…と坂になる様に積まれている死骸たち
坂の終わり付近には四角形の白い光。
虫たちを踏み付ける、ぐしゃ、ぱき、みたいな音がする
一歩、二歩と滑らない様に慎重に足を進める。
『オルトくんはロボットなの?』
「違うよ!僕は自律型AI搭載の魔導ヒューマノイド!」
『へぇ〜、私機械の事はよく分からないけど凄いんだね』
「うん!凄いんだよ!僕を作ったのは兄さんだからね!」
『お兄さんは凄いんだっ、と…』
足が滑り、転ける
坂から滑り落ちない様に死骸の一つを掴む。
目が、合った
人間だ、私が掴んだのは人間の足
そして目が合ったのは首から下がない、人間の生首。
ああ、よく見れば眼球はなかった
瞼が開き、空洞と目が合っただけだ。
「大丈夫?」
『うん、大丈夫だよ』
「滑らない様に僕の手を掴む?」
『あぁ、そうしようかな』
『ありがとう』
オルトくんの硬く冷たい、鉄の手を掴む。
ゆっくりと、着実に進む
下を向いて、滑らない様に死骸を踏み締めて進む。
途中…半分くらい進んだ所から虫や動物がいなくなり、人間だけの坂道になった。
『そう言えば、ここがどこか分かる?』
登るのに集中していたせいでオルトくんと会話をしていなかったと思い、聞く。
「うん!僕には5万の怪異の情報が入っているからね!」
「ここは”死骸の坂道”や”屍を超えて行け”と呼ばれている怪異だね!」
「今まで見たり、聞いたりした死骸、死体が坂道になって現れる怪異だよ!」
「複数人でここへ来る事例は珍しいね!」
「ここから出る方法は死骸、死体を踏んであの白い光を通る事だよ!」
『教えてくれてありがとう、そういう事なら簡単に出られるね』
歩きながら軽く雑談やオルトくんの兄、イデア・シュラウドの事を聞いていた。
イデア・シュラウド
イグニハイド寮の寮長、三年生
稀代の天才でオルト・シュラウドと作った張本人
かげもが好きで良く徹夜をしてお菓子やゼリーで腹を満たしている。
『あれ』
死骸を踏んで歩いていると目の端にある光が見えた
「どうしたの?」
『オルトくんと同じ髪色の光が見えて』
青い光、ゆらりと揺れる炎
「……あぁ、それはオルトだよ」
『…そう、まぁ詳しいことは聞かないよ』
『人には人の事情があるからね』
「うん、ありがとう」
白い光の目の前でオルトくんの手を離す。
「僕はもう一回登るよ!」
『なんで?』
「僕は浮いてるから踏んでない判定になりそうだからね!」
『そう、じゃあ先に戻るね』
『手伝ってくれてありがとう』
「うん!またね、監督生さん!」
情報としてインプットされてある事件の被害者達を踏む
被害者の写真と違う所は全員が全員死んだ時の苦痛に歪んだ表情だ。
機械のボディのお陰で滑るなんて事はない、パキパキと骨の折れる音とぐちゃぐちゃと気味の悪い音。
疲労がない体は止まらない、スイスイと進む
監督生と共に登った時とは数十分早く白い光の前についた。
白い光の丁度前、地面に転がっている幼く燃えている青髪の少年
___初めまして、オルト
___ごめんね、オルト
硬い機械の、感情の篭らない声でそういう燃える青髪の少年は言う
初めまして、本物のオルト__と
あなたの場所を奪ってごめんね、オルト__と
機械の硬い足でオルトを踏む、パキと骨の折れる音
__痛いよね、ごめんねオルト__
__キミに痛い事はしたくない__
目を潤すためではなく、歪んだ顔のオルトを見ないために目を瞑る
足を前に出す、ふわりと体に温かい空気が触れる。
「オルト!」
兄の声、よく聞く兄の声だ
目を開けると目から涙を流した兄の顔が映る
__あなたを泣かせなくないんだ、もう2度と…僕のせいで泣かせたくない__
『泣かないで、兄さん…兄さんには僕のせいで泣いてほしくない』
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