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エルフの国に辿り着いたレビンは、王の好意により部屋を貸し与えられていた。
そして翌日。また3人で集まり、話合いが始まっていた。
「99レベルだから99日寝る?うーん。数字は合っているけど…そんな安易に考えてもいいのかな?」
レビンはずっと考えていた。そしてその考えを二人に伝えた。
「何?魔王様の奥方の強さであるか?……確か同じくらい強いと、伝記に記述があったはずである」
「やっぱり…その奥方?さんもやっぱりヴァンパイアだったんですか?」
「いや…赤髪であるから黒髪しか存在しないヴァンパイアではないのである。代わりにというか、魔王様は黒髪であったな。もちろんヴァンパイアではなかったはずである」
レビンは確信した様に一度頷くと、二人に説明を始めた。
「今の話で確信しました。やはり魔王様の奥さんはミルキィと同じハーフだったのでしょう。エルフとのハーフかまでは分かりませんが、恐らく。
そして、ずっと魔王様のレベルをドレインしてきた。そこでレベルが限界値を迎え、眠りへと就いたのです。
レベル99なのに、100を優に超える魔王様と同じ強さ。
今はミルキィが起きたところで、僕とミルキィには明らかな強さの差が出ます。同じとは誰も言えないくらいの差が。
では、どうやってミルキィが僕と同じ強さになれるのか。
ミルキィは今、レベルを消化しているんだと思います。
ヴァンパイアは血を摂取しないと生きていけません。ミルキィは血とレベルを摂取しないと。でも99からはあがらないとしたら?」
レビンはそこまで言うと、二人の顔を見回した。
レビンは血だけでもミルキィは生きていけると思っているが、どんなモノであれ、身体に溜まったモノは消化しないとダメな気がした。
現在ミルキィはレベルが溜まっていて、お腹いっぱいなのだ。だからレベルを消化している。レビンは今の状態をそう捉えている。
「なるほど。では私からの質問をいいかな?これは二人になんだけど、レベルドレインは誰にでも可能なのかな?」
「我はそもそもレベルドレインを知らぬ。あくまでも、魔王様がレビンと同じくレベル99を遥かに超えた強さだと知っているのみ。
あぁ。魔王様の奥方もであるな」
「僕も知りません。ミルキィは僕以外の血を摂取しませんでしたし。あっ。それとは話が違うかもしれませんが…」
そう前置きをし、レビンが話を続ける。
「レイラさんが、僕の血はおかしいって言ってました。何かあるのかはわからないみたいでしたが」
「レイラが……早く会いたいな。二人に」
ボソッと呟かれた言葉だったが、その重みからレビンもゲボルグも何も言えなくなり、広い部屋を静寂が支配した。
「本当に、もう行くのかい?」
さらに数日後。話に進展はなく、レビンはここにいても仕方ないと思い、ミルキィの元へと帰ることを決意した。
「はい。ゲボルグさんの話の通りだと、僕に出来ることは待つことなので。
レイラさんには必ず手紙を渡します」
「世話になったのである」
「うん。頼むよ。ゲボルグさんもありがとう。レビンくん。二人をよろしく頼むよ。頼むといっても手を出したら……」
バーンナッドから黒い何かを幻視したレビンは、挨拶もそこそこにエルフの国を発った。
急に急ぎ出したレビンにゲボルグは焦ってついていく。
二人は多くのエルフに見守られながら、魔の森へと戻っていった。
恐らく好奇の視線だろうが……
「えっ?来ないのですか?」
ゲボルグと出会った付近まで帰ってきた二人。そこでゲボルグはお別れだとレビンへと告げた。
「そうである。これから向かうのは、あのエルフの奥方の所であろう?流石に人妻の…」
「そうですか。ではまた会いましょう!」
「えっ!?おい!ちょい待てっ!?」
引き留められると思っていたゲボルグは、あっさりとお別れを告げたレビンを呼び止めた。
「何か?」
「何か?じゃあるまい!なんかこう……死線を潜り抜けたパートナーに、もっとこう……」
「死線…?」
「…なんでもない。まぁこれから向かう場所とエルフの国の場所はわかるのだ。用が出来たらどちらかに連絡を入れることにしよう」
レビンにとっては死線どころかただの散歩。その認識を思い出したゲボルグは、友好を温める機会を放棄した。
「…そうですね。いつか魔族の国に行きたいので、その時はよろしくお願いします!」
「こやつ…我を便利な案内係と勘違いしておらんか?」
「何か言いましたか?」
「……何でもない。では、またな」
「はい!ゲボルグさん。お元気で!」
瞬く間に視界から消えていったレビンの後ろ姿。その姿が見えなくなっても暫くそちらを向いていたゲボルグは、一つ溜息を吐いた。
「妙齢の女性がいなければついて行きたかったのである……」
国に残した妻の怒りが怖く、ここで別れる決意をしたのだ。
レビンと居れば、色んな出来事が舞い込んでくる。怖かったが、それ以上に新鮮で楽しかったと、少し年寄りくさいことを思うゲボルグであった。
今は中年に差し掛かった二児の父。思い通りにはいかないのである。
レビンの初めての一人旅?は終わりの時を迎えた。
「あっ!レイラさんだ!」
家の外に出ていたレイラを偶々見つけたレビンは、笑顔を浮かべながら駆け寄っていく。
「ただいま戻りました!ミルキィは?」
「…ふぅ。レビンくんで良かったわ。お帰りなさい。ミルキィは相変わらずよ。まずは会ってきなさい」
「はい!」
レビンは家の中へと飛び込んでいく。
「ふぅ。まだ緊張しているわ…相変わらずレビンくんの気配は身体に毒ね…」
この旅でもかなりのレベルが上がった。さらに凶悪になった気配に、魔の森で長く暮らしているレイラであってもドキドキが止まらない。
「あの人に会った時以来のドキドキね…意味は全く違うけど」
恋のはずがない。
とんでもない気配に家を飛び出したレイラだったが、それはレビンだったというわけだ。偶々家の外に出ていた訳ではなかった。
レイラは他に異常がないことを確認すると、飛び出して出たのとは逆に、ゆっくり家の中へと入っていくのであった。
「予想していたより早かったわね」
リビングでテーブルを囲んだ二人は、早速報告会を始めていた。
「一月半くらいかな?あっ。これバーンナッドさんからミルキィママさんに」
「懐かしい筆跡ね…後で読ませてもらうわ。それとバーンのことはパパと呼ぶ様に」
外堀から埋めていこうとするレイラだったが……
「それは無理だよ…だってね!………」
積もる報告により、バーンナッドの気持ちを知った。
(あの人…意外に亭主関白なのよね…子煩悩でもあるし…)
そして大切な報告を済ませると、二人は確認のための行動をするかどうかの話しをした。
「した方がいいわね。わかったところで結果は変わらないだろうけど、私達の安心感が違うわ」
「じゃあミルキィには悪いけど、これからしてみよう」
二人はリビングを後にして、ミルキィが眠っている部屋へと向かった。
「じゃあ刺すわ」
レイラは針を持っている。
「ごめんね。どうしてもミルキィに傷を付けられなくて……」
「そんなレビンくんだから、安心して娘を託せたのよ。さっ。アレを出して」
ミルキィの指に針を刺したレイラは、気落ちしているレビンを優しく促した。
レビンはミルキィの冒険者タグに、ミルキィの血を垂らした。
「レベル…48だね。うん。記憶違いがなければ1日1レベル下がってる。予想が的中したみたいだ」
「タグの数字が下がるのを初めて見たわ…ここに来た時のミルキィの魔力と今の魔力に大した違いはないから、レビンくんの言っていた通り、レベルだけが下がっているようね」
話には聞いていた。そして、低レベルであっても自身より遥かに格が高いレビンを目の当たりにもしていた。
しかし、人は自分の人生で経験したモノが唯一の物差しである。故に、言葉だけでは信じることが難しい生き物でもあった。
それも、長く生きれば生きるほどに難しさを増していく。
「ミルキィが起きるまであと48日かぁ。ミルキィママさん。それまでここにいてもいい?」
「当たり前よ。そんなことを聞く必要もないわ。タグの確認は10日後にもう一度行いましょう。
レビンくんはまた力仕事を頼むわね!」
「ありがとう!頑張るよ!」
村にいた時から、レイラはレビンの事を実の息子の様に可愛がっていた。
本人は、実は男の子が欲しかったのかしら?と考えているが…他の要因はまだわからない。
レベル
レビン:74→79(178)
ミルキィ:48(100)