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数日後
私たちはローゼンタール伯爵邸の北棟、今は誰も足を踏み入れることのない旧図書室にいた。
窓を覆う厚いカーテンは固く引かれたまま、隙間から漏れるわずかな光が、宙を舞う埃の粒子を白く照らし出している。
それはまるで、行き場を失いこの部屋に閉じ込められた死者の魂が、虚空を彷徨っているかのようだった。
古い紙と、カビの混じった重苦しい空気が肺にまとわりつく。
「……ここにあるはずよ。父様が外部には決して漏らさず、けれど手元に置いて悦に入っていた『戦利品』の記録が」
私は、壁一面を埋め尽くす蔵書と、湿気で波打った古文書を片っ端から棚から引き抜いた。
背表紙の金文字が剥げ落ちた重厚な本を、容赦なく床へ放り出す。
アルベルトは隣で黙ったまま、事務的な手つきでそれらを受け取り、執務机の上に積み上げていく。
かつて父が栄華を誇った時代の残骸──政敵を失脚させた際の偽造書類
不当な土地売買の契約書、そして他人の弱みを握るための密告書。
それらを一つひとつ精査する作業は、吐き気を催すほど泥にまみれたものだった。
触れるたびに、指先が罪悪感ではなく、生理的な嫌悪で汚れていく気がした。
「効率が悪いですね。この年代の帳簿はすべて数字が合いません。二重、あるいは三重に改竄されている。まるで、真実を見つけ出されることを、拒絶しているかのように」
アルベルトは無機質な声で告げ、また一冊の黒いファイルを机に叩きつける。
その音が高い天井に虚しく反響した。
彼の漆黒の瞳には疲労の色など微塵もなく、ただ獲物の急所を探し当てることだけに特化した猟犬のような鋭さだけが宿っていた。
その時だった。
棚の最奥、革装丁の百科事典の裏側に、不自然な隙間を見つけた。
奥に手を伸ばすと、指先に硬い感触が触れる。
引きずり出してみれば、それはラベルも記されていない一つの古いビデオテープだった。
剥き出しの磁気テープが、窓からのわずかな光を吸い込んで、何か不吉な言葉を飲み込んでいるかのように黒々と光っていた。
「……アルベルト。これを見て」
私は無言で、図書室の隅に置かれた古いブラウン管テレビへ向かった。
アルベルトが音もなく背後に立ち、冷たい気配が私の肩を包み込む。
「それは……なにかのテープですか?」
「私も初めて見たわ。分からないけど、一度再生して聞いてみましょ」
震える手でテープをデッキに押し込む。
ガシャンという機械音が沈黙を破り、砂嵐のようなノイズが画面を支配した。
その直後、ひどく解像度の低い、ざらついた映像が浮かび上がった。
『──それで、例の「スペア」はどうだ? クロムウェル公爵』
画面の中に映し出されていたのは、数年前の私の父と
先日、私たちがその肉片まで処理したはずのアルベルトの養父……クロムウェル公爵だった。