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心臓病の彼×同居中の彼女
Side樹
今日は2回起こった。
心に一抹の不安を抱えながら、ラジオブースへ向かう。
あの場で知っているのは、今回の相棒のジェシーだけ。というか、メンバーだけ。世間にも発表していないし、自分の関係者にはごく親しい人しか伝えていない。
「今日はどう?」
こんな風にさらりと聞いてくれるからありがたい。
「うん、大丈夫」
実を言うと、自分でもそう確信はできない。
でもこれが終われば帰れるんだ。だから頑張らなくては。
普段のジェシーのバカでかい笑い声を聞いていると、すっかり「全然大丈夫」という気になっていた。
時計を見ると、そろそろ終了時刻。スタッフからも締めるよう指示が出た。
もう何十回、いや何百回も口にした台詞。
「はい、ということでここまでのお相手はっ……、SixTONES田中樹と」
「ジェシーのSixTONESでした! 逆にね!」
しまった、と思った。胸をつかんだ拍子に声を詰まらせた。
ジェシーがボケを言ったのはそれを察したからだろうが、いつもの返しができなかった。
マイクをオフにすると、ジェシーは何も言わずに水のペットボトルを差し出してくれる。苦しさに、思わず手に力が入ってボトルがくしゃりと音を立てひしゃげる。
「っ…」
ジェシーは慌てることもなく、背中に手を添えてゆっくりと撫でてくれる。こういうときはしっかりしているから、慣れていないのは自分のほうかと思う。
冷たい水が行き渡ると、速くなっていた鼓動も落ち着いてきた。
「ごめんな…ツッコミ言えなかった」
「いいよいいよ、きっとリスナーは俺のギャグのこと分かってくれる」
でも、不審に思わなかっただろうか。少なくとも、彼女なら気づいたはず……。
「帰ってゆっくりお休み」
ジェシーの優しい陽の光のような声が、耳に心地よく響いた。
続く