テレビの明かりだけがぼんやりとついたリビングで、俺はラグの上に寝そべっていた。
るかはソファにうつ伏せで寝てる。
いつの間にか、ほんの少しだけ眠ってたらしい。
カーテンの隙間から、薄い光が差し込んでいて、
それで目が覚めた。
ゆっくり起き上がって背伸びをしたあと、
キッチンで水を飲む。
その音で目を覚ましたのか、
るかが小さく声を漏らした。
「……ん。朝?」
「朝。たぶん、6時くらい」
「早。最悪」
「知ってたけど、寝るタイミング失ったな」
「うん……」
るかは顔を枕に埋めたまま、うめくように返す。
「ご飯どうする?」
「いらない……」
「じゃあ俺だけ食べる」
「ズル……でもいいや。あとで起きたらなんか食べる」
俺は冷蔵庫から卵とご飯を取り出して、
雑に卵かけご飯をつくった。
キッチンの向こうから、
るかが顔だけ出してこっちを見てた。
「……食べすぎてない?」
「俺の勝手だろ」
「そのうち太るよ」
「放っておいてくれ」
「……でも、ちょっとうまそう」
「ほらな」
⸻
そのあと、ふたりとも口数少なめに、
朝の空気の中でなんとなく動いていた。
まるで、さっきまでの夜のことなんて、
最初からなかったみたいに。
でも、テレビのリモコンがそのままだったり、
ソファのクッションの乱れとか、
静かに冷めたカフェオレの缶とか――
ちゃんと「夜がそこにあった」痕跡だけは、残ってた。
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