テラーノベル
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集会所で遅めの昼食をとった。野菜の入った薄味のお粥だ。梶は相変わらずお茶にすら手をつけていなかった。
あれから島は戻って来ない。沢村は口数少なく暗い顔をしていたが親分やミサは島がいなくなったことを気にしている様子はなかった。
食事を終えると努はお堂に行きパラパラと書物を眺めたり昼寝をしたりして過ごした。消えた島の事や森の妖怪の事は気になったけど考える事に疲れていた。
そして夕方。集会所に戻るとヤクザ達とちぃこと一緒に奥原と数人の村人がいた。
「ちょうどいい、長岡、お前も来い」
質問する間もなく梶に連れられて奥原のあとに続いた。
「梶さん、どこに行くんですか?」
なんとなく小声で訊いた。
「儀式だ」
「儀式? ああ……」
夕方に生け贄の儀式があることを思い出した。そして、拷問屋敷の老婆を思い出して嫌な気持ちになる。もうあの光景は見たくなかったけど梶の誘いを断れるはずもなかった。
努は梶とミサ、そしてミサの護衛だろうか長髪の木村も一緒に拷問屋敷のある広場までやってきた。広場には三人の老人と二人の少年、ホタルとセイジがいた。これで村人は10人ほどになる。
「これから儀式をやるが……村を守るための大事な儀式なんで邪魔はしないでおくれよ」
そう言って奥原が村人を集めると奇妙な儀式が始まった。
『アオ様に捧げます。赤い美酒を捧げます。赤い肉を捧げます。月満ちる夜に見つけても、どうか私たちに祝福を』
そんな祝詞だか呪文だかわからない言葉を唱和すると、拷問屋敷の周りを歩き始めた。奥原を先頭に老人三人と二人の少年が続き、残っていた村人は松明を用意していた。
何歩か歩くと止まって柏手を叩き『よぉ』だの『ほぉ』だの奇声をあげる。そうして屋敷を三周すると奥原は松明を受け取って少年たちと屋敷の中に入った。
「いよいよねぇ」
ミサはワクワクした顔で中に入る。努は入るのを戸惑ったが梶に睨まれて渋々屋敷に入った。
拷問屋敷には小さな窓しかなく夕刻の陽の光はあまり入らなかったが今は壁に掛けた松明で中の様子がよく見えた。
床に敷き詰められた黒くて丸い石の中央に変わらず全裸の老婆が椅子に拘束されている。クギがついた器具を目の前につけられて小声で「助けて」と何度もつぶやいていた。
中に入ってきた村人は少年二人を除けば奥原と老人三人だった。彼らは棚を物色するとそれぞれ道具を手にして老婆に近づく。
歩くたびに床の石がギシギシと鳴り、その度に老婆が小さく「ヒッ」と声を出した。
最初の老人はすり棒のようなものを持っていた。老婆の前でしゃがむとその棒で脛を叩いた。ゴンッと鈍い音がするたびに老婆は「ギャッ」と小さな悲鳴を上げる。痛みが想像できるだけに努の脛もなんとなく鈍痛を感じた。
20回は叩いただろう。地味だが嫌な拷問が終わると次の老人は木製のノコギリを持っていた。切れ味の悪そうなそのノコギリの刃を老婆の肩に当てるとゆっくりと手前に引く。
「ギャアアアアアッ!」
老婆は大きな悲鳴をあげた。努が目を反らすとミサの姿が見えた。
「ぁぁぁ……いいわぁ……」
ミサは右手で自分の股間をまさぐり左手は木村の股間を握っている。呆れて少年に目を向けると二人とも真面目な顔で拷問の様子を見ていた。村人である少年にとっては人ごとではないのだろう。
ノコギリは三往復したが切れ味の悪い木製の刃は致命傷を与えることなく痛みは十分に与えられたようだ。
老婆の悲鳴が収まると三人目の老人が小さな熊手のような道具を老婆の頬に当てた。さぞ痛いひっかき傷が出来そうな道具だったが老人はしばらく爪先を頬に当てただけで引っ掻かずに離した。
躊躇する人もいるんだ。努は一瞬そう思ったが老人に笑顔が浮かんでいるのに気づいて弄んでいることに気づいた。
その老人だけではない、先の二人もけして辛そうではなくむしろ子供が昆虫をいたぶるような顔をしていた。
二度三度熊手の爪を当ててようやく引っ掻いた。老婆は猿の鳴き声のような悲鳴を上げた。痛みより恐怖でおかしくなったのだろう。
最後は奥原だった。奥原も感情を隠しもせずにニヤニヤしながら老婆を見下ろしていた。手には10センチほどの太さで長さは30センチほどの木でできた像を持っていた。人が直立したような形をしているがその顔はやけに大きく歪だ。
奥原はその頭の部分にツバを吐きかけると老婆の股間にあてがい……一気に押し込んだ。
「ウギャアアアアアアアッ」
今日一番の悲鳴があがった。男性の努にはわからないが、それでも相当の苦痛だろうと想像できた。
奥原が木像を抜くとやっと拷問が終わる。死なない程度に治療するのか、あとの処理をするという少年たちを残して努たちは外に出た。
何時間も経った気がしたけど外はまだ夕陽が残っていた。太陽を見て努はホッと息をつく。
「儀式はこれで終わりじゃ」
奥原はそれだけ言うと外で待っていた村人たちとそれぞれの家へ帰っていった。
「木村ちゃん、ちょっときて」
ミサは木村の手を引いて外車のあるトンネルのほうへ向かった。梶はミサを目で見送ったあと努に顔を向ける。
「長岡、ついてこい」
想像通りの言葉だったがどこに行くかまではわからなかった。
#怪異
イキリ火の玉
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コメント
1件
うわ……読んでて身体が固まった。 生贄の老婆の描写、地味でゆっくりな拷問の手つきが逆に怖かった。叩く、ノコギリを引く、熊手を弄るっていう順番も、儀式って言葉で合理化されてるのが背筋冷える。あのミサが興奮してるところもゾッとした……ちゃんと闇を書ける人だなあって思いました。努が「見たくないけど断れない」立場ってところも、続きが気になる。