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「ん”っ――――、~~~~っ!!」
私はヅンッと脳天に駆け上がるような悦楽に身を浸し、頭の中を真っ白に染め上げてビクビクと体を痙攣させる。
「――――はぁっ、…………ぁっ、……あぁ、…………あ…………」
あまりに気持ち良くて恐くなってしまった私は、涙を流してブルブルと震える手で力なく涼さんの手首を掴んだ。
「ん、よしよし。気持ち良かったね」
彼はトロンとした表情をする私にキスをし、頭を撫でてくる。
「…………もうやだ…………」
気持ち良すぎてベソベソと泣いてしまった私は、手で目元を拭う。
「嫌なの?」
涼さんによしよしと頭を撫でられ、優しい声で尋ねられ、私はつい甘えたくなって抱きついてしまう。
「……気持ち良すぎるの、恐い……」
呟くと、彼は私の額にキスをしてきた。
「素直な恵ちゃん、可愛いね」
こうやってだだ甘やかしをされると、いつもならツンと塩対応していたはずなのに、快楽を与えられた時はそんな気力もなくなってしまう。
そう思うと、自分はいつも涼さんの掌の上にいて、ツンツンして私が振り回しているように思えても、すべて彼の優しさや心の広さがあって成立しているのだと痛感した。
はぁ……、と溜め息をついた私は、涼さんの胸板に額をつける。
――このまま、この人にすべて委ねてしまいたい。
そんな想いがこみ上げるほど、涼さんの優しさ、包容力は魅力的だ。
(でもそんな事をすれば、自分の頭で考える事を放棄してしまいそうで、恐い)
気持ちいい事もそうだし、涼さんが用意してくれた住まい、身につける物、その他諸々。
私は「このままでいいんだろうか」と思いながら、底なし沼に少しずつ身を浸している。
顔を上げると、私が知っている中で一番美形だと思う男性が、優しい目で私を見ている。
「……信じられない……」
こんな人の側にいるのが、私でいいのかな。
そんな想いを抱いて呟いたけれど、涼さんは先ほど言った「素直な恵ちゃん、可愛いね」に対しての返事だと思ったみたいだった。
彼は目を丸くすると、確認するように首を傾げて言い含めてくる。
「恵ちゃんは本当に可愛いよ? 全部プレゼンしようか? 俺のプレゼン能力は確かなものだと自負してるけど」
「いや、そうじゃなく……」
私は焦って首を横に振り、キュッと涼さんの手を両手で握った。
「……この数日、現実離れした日々を送っていて、酔ってるのもあるし、なんか全部夢みたいで」
言ったとおり、まだ体内にはアルコールが残っていて、少し頭がポヤポヤしている。
すると涼さんはクスッと笑い、私の手をにぎにぎと握り返して言った。
「慣れない事をされて、いまだに現実を受け入れられないのは分かるけど、人ってどんな環境にいても、一年経てば慣れるものだからね。今すぐは無理でも、いつかは必ず慣れる。それなら、色んな事を新鮮に捉えられている今を大切に過ごしてみたら?」
相変わらずポジティブに物事を捉える涼さんの言葉を聞き、尊敬の念を抱く。
「一番友好的なのは、俺と一緒に過ごす時間を〝現実〟だと分かっていく事だと思うんだ」
彼はツツ……、と私の耳の輪郭をなぞり、ビクッと反応したのを見て目を細める。
「〝優しさ〟とか〝愛情〟って目に見えないから、余計に疑い深くなってしまう。プレゼントをしても、『物で誤魔化してるんじゃないか』って疑われたらおしまいだしね。やっぱり、目に見えないものを信じてもらうには信頼関係が必要だし、君自身の問題もある。恵ちゃんは俺に優しくされて、愛されていると自覚しているだろうけど、まだ自信が伴っていないと思う」
事実なので、私はコクンと頷いた。
「でも〝快楽〟って自分の体で分かるものじゃないか」
そう言って、涼さんはやにわにキュッと乳首を摘まんできた。
「んっ……」
まだ体は敏感になったままで、私はそれだけでも下腹部にジンとした疼きを抱いてしまう。
「沢山愛されて、沢山達って『愛されてる』って実感するのも、一つの手じゃない?」
涼さんが嬉しそうに言うものだから、私はつい減らず口を叩いてしまう。
「……したいだ…………」
そこまで言い、私は口を噤む。
「したいだけじゃないですか」なんて言ったら、エッチする事を嫌がっているみたいだ。
確かに正体不明になるのは恐いし、こんなに素敵な人の前で変な顔になっているのは恥ずかしい。
(……でも、気持ちいいし、嫌じゃないし。…………もっとしてほしい、……と思うし)
――いい加減素直にならないと。
私はスゥッと息を吸うと、眉間に皺を寄せて声を絞り出す。
「エッ……」
「えっ?」
「エッチシタイデスッ」
必死に言葉にしたというのに、照れ隠しのあまりロボ子のような言い方になってしまった。