テラーノベル
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次の日の朝。
「……ん」
いるまは、ゆっくりと目を覚ました。シェアハウスの見慣れた天井。体の下にはソファの柔らかさ。そして、すぐ隣から伝わってくる温もりに気づいて、はっとする。
「……あ」
こさめが、肩にもたれて眠っていた。
規則正しい寝息。
昨日、自分の隣で泣いて、笑って、「好き」と言ってくれたことが、
頭の中によみがえる。
――好きだから。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
「……ばか」
小さく呟く。
自分に向かって。
でも、嫌じゃない。逃げたいとも思わない。
ただ、こうして隣にいることが――安心できた。
そのとき。
「おはよー」
声がして、いるまの体がびくっと揺れた。顔を上げると、らんが立っていた。
いつものように、にやにやしている。
「……な、なにしてんの」
「別に?」
面白そうな顔。いるまは慌てて、こさめの手を離そうとした。けれど。
「……ん」
こさめが小さく動き、逆に、ぎゅっと手を握り返してきた。
「!!」
「……離さないで」
寝ぼけた声。無意識の言葉。いるまの顔が一瞬で赤くなる。
「ち、違う!」
「なにが?」
らんが笑いをこらえている。
「これは、その……!」
言い訳が出てこない。
そのとき、こさめがゆっくりと目を開けた。
「……いるまくん」
目が合う。そして。
「おはよう」
にこっと笑った。
その瞬間、心臓が大きく跳ねた。
「……お、おはよう」
情けない声になる。
「ぷっ」
らんが吹き出した。
「笑うな!!」
いるまが怒鳴ると、奥の部屋から声がした。
「んー……なに朝からうるさ……」
なつが、眠そうに目をこすりながら出てきた。そして、状況を見た。いるまとこさめ。繋がれたままの手。
少しの沈黙。
いるまは、怒られると思った。
でも、なつは。
「……そっか」
そう呟いて、少しだけ笑った。
「よかったな」
優しい声だった。
「……なつ」
驚いて名前を呼ぶと、なつはそれ以上何も言わず、キッチンへ向かう。
「朝飯作るわ」
その背中は、いつも通りだった。
こさめが、小さな声で言う。
「……怒られなかった」
「……だな」
いるまも、小さく答える。
少しの沈黙のあと、こさめがまた口を開いた。
「……ねえ」
「なに」
「今日も……隣、いていい?」
不安そうな目。
いるまの胸が、ぎゅっと締めつけられる。
「……ああ」
少しだけ照れながら、答えた。
「いいよ」
その瞬間、こさめの顔がぱっと明るくなる。
「……よかった」
本当に嬉しそうな笑顔だった。
それを見て、いるまは思う。
守りたい。
この笑顔を。
壊したくない。
たとえ、自分が壊れていたとしても。
そのとき。
少し離れた場所で、らんが静かに二人を見ていた。
その目は、笑っているのに――どこかだけ、寂しそうだった。
コメント
4件
らんらぁん!マジこの作品完結の時涙腺崩壊する!続き楽しみすぎる!