《彼女の㊙️思考回路》
ー0.1ー
「お姉ちゃん、どこ行くの?」
…
「、」
何で悲しそうなの?
僕なんか悪いことした?
してたら、ごめんなさい
いやだ
行かないで
出ていかないで
待って…____________________
-①-
ガチャ
「行ってきまーす」
僕は今、祖母の家で静かに暮らしている。
姉や両親は、小さい頃に僕を捨てたらしい。
そのまま家に残して…
「はぁ」
白い息が空気を揺らし、青い空に消えた。
冬。
僕はこの田舎の中で一番近い学校に通っている。
田舎なので電車は町の方へしか通っておらず、僕はこののどかな景色を、ゆっくりと歩いて堪能するしかなかった。
しかし、それも楽しみと言えるほど、この村は豊かだった。
ガラッ
「よっ!」
同じクラスの梨川 夕斗が、僕の首の後ろに腕を絡ませた。
「わっ……………おい、いきなり来るなよなぁ」
笑いながらため息をつくと夕斗は悪戯に笑った。
「なぁなぁ、知ってるか?」
鞄の中の教科書やノートを机にしまいながら、僕は夕斗の雑談話を聞いた。
「何が?」
「今日、転校生が来るってよぉ。こんな田舎なのにさ」
「へぇ」
「……驚くのはここから何だよ」
「どうしたの」
「それがな………その転校生、めっちゃ美人らしいぜ」
「…………………………女子…?」
「女子!」
僕は静かにガッツポーズをした。
夕斗も真似して喜びのポーズを掲げた。
先生「おーい、席に着けー」
先生の合図で、皆が一斉に席に着き始めた。
先生「今日は転校生が来たぞー、紹介するから、静かにしてろよ」
先生はまるで生徒がざわつくことを予想したように声をあげた。
ガラリ
「____________________」
「初めまして。時鉈 楓(ときなた かえで)です」
その瞬間、クラスの時が止まったかのように、辺りが静まり返った。
「これから宜しくお願いします」
その人は、僕の想像をも越える、絶世の美女だった。
一限目。
転校生は少しも恥ずかしそうな素振りを見せることなく、沢山の視線のなか、彼女にとって初めての授業を受けた。
(人類にこんな整った顔立ちの人がいるなんて…)
僕は……いや、このクラスのだれもが、彼女に惚れただろう。
一限目と二限目の間の予鈴が鳴り響いた。
彼女の周りには、もう既に、人だかりが出来ていた。
「ありゃあ、しばらくは近づけんわなぁ……」
夕斗が呟いた。
「そうだな…」
僕は肩をがっくりとおとした。
昼休憩になり、彼女は集団を連れて、何処かへ行ってしまった。
「あ…………………」
僕はため息をついた。
そのまま、食べ終わり、カラになった弁当箱をしまい、机に突っ伏した…………。
……………
ねぇ
起きて
「う ……、………」
寝惚けながら、顔を上げた…………
すると、
転校生、時鉈 楓……彼女の顔があった
「え……………………?」
僕はまだ寝惚けているのかと、目を擦った。
「貴方が、嘉音(かのん)くん?」
「え……………カノン…………………?」
「……、違う?」
目の前の整った顔が、一瞬こわばったように見えた。
これ以上持ち前の顔を崩さないようにと、僕は一生懸命『カノン』という名前を見かけたか、考えた。
「……………………………う~ん」
「もしかして…………分からない…?」
「うん……ごめん。分からないや。カノン?っていやつ?探しとくよ」
「…いや、探してるわけではないの」
「へ、?そうなの?」
「まぁ、考えてくれて、ありがとう 」
彼女はそう言って、弱々しく笑った………。
「う…………………」
いつの間にか、寝てしまっていたようだった。
(あれ………変な夢を見た気がする)
(なんの夢だっけ……)
転校生と大勢の生徒は、相変わらず教室に戻ってきていなかった。
………、夕斗も、トイレに行ったのか、居なくなっていた。
キーンコーン………
五限目 が始まっても、彼女以外の出ていった人だかりは教室に戻ってこなかった。
ガラリ
「自習!テス勉忘れんなよなー」
一瞬、やるはずだった授業の担任が顔を出した。
その後は、一切顔を出すことはなかった。
「何で先生、自習にしたんだと思う?」
まさかの。
夢にまで見た、転校生の顔が、目の前にあった。
勿論、それを羨ましそうに見つめる痛すぎる視線も………。
「な、何で………?」
(こんな僕なんかに……話しかけて………)
「それはねぇ」
彼女は、ニヤリと笑って、こう告げた。
「私が、みぃんな、眠らせちゃったからだよ」
続く
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