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数日後
「出たぞ!火を吹くドラゴンだ!」
「ユリア!全員に加熱耐性魔法をかけろ!
ジャックは弱点の尻尾めがけて走れ!それから……ルナはドラゴンの気を引け!」
「「「了解!」」」
私達、アルベルトを除いたパーティは攻略速度こそ遅いが着実に魔王城への道を辿っていた。
アルベルトのような破竹の勢いを失って、
モンスターを一体ずつ慎重に近づいては倒すようになった私達は
毎日へとへとになりながらボロボロの体を使って先へ進む。
…でも、このしんどさも慣れてきた。
「…よし、」
風水魔法【ダイヤドロップ】
私は、耳を塞いで集中力を研ぎ澄まし見事強力な魔法を唱えることに成功する。
私の呪文にドラゴンがいる洞窟の中の鍾乳石がダイヤに変わり、鋭利な棘がドラゴンの体に落ちていく。
「ギャオオオオ!!」
「ルナ!ナイスだ!」
「ジャック、トドメをお願い!」
「よぉーし!任された!くらぇええ!」
ユリアとサイラス王子の援護を受け、ジャックが勢いよくドラゴンの尻尾に剣を向ける。
スパッと尻尾が切れたと同時にドラゴンは地に轟くような鳴き声をあげて地面に倒れた。
そして体はドロドロの溶岩となり、洞窟の奥にある凹んだ地面に溜まっていく。
「や…やったか…?」
「どうやら、倒したみたいね…。」
「ルナ、大丈夫か。」
「私は平気です。」
王子のそばで私はそう返し、マグマを見つめる。マグマに不審な気配はない、どうやら倒したらしい。
「やったぁぁあ!!これで魔王が侍る四天王も終わり!あと魔王城の魔王だけだ!」
ジャックが剣をしまい、両手を上げて喜ぶ。
それを見たユリアがまだ喜ぶ元気があったのね…と呟いてゆっくりとしゃがむ。
「ユリア、大丈夫?」
「ふふ…ごめんなさい、ちょっと疲れちゃったわ。」
「王子とジャックの回復でだいぶ魔力を消費したもんね、今日はもう休もう…いいですよね、王子」
「ああ、もちろんだ。」
汗をかくユリアを支えながら私達は近くの村に戻り、宿に入る。村の人々は私たちがドラゴンを倒したと知るや否や英雄様!と私達を讃えてお祭り騒ぎになった。
そこで、祝いの宴を設けるから参加して欲しいと言われたが私はジャックと王子に参加を委ね、ユリアの看病をすることにした。
「ユリア、大丈夫?」
「平気よ…ちょっと寒くて、眠いだけ」
「そう…ちょっと待ってね風水師の魔法で私があっためてあげる。」
「しなくて大丈夫よ、むしろ…そんなことをしたらあなたの魔力も無くなっちゃう。」
ベッドで目を細めるユリアが弱々しく見えて私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。少しでも温めようと布団の中で彼女の手を握ると、彼女の指先は氷のように冷たかった。
「…アルベルトの祟り、かもしれないわね。」
静かな空気の中、ユリアがそう言った。
「アルベルトの?なんで?」
「私が…あなたとアルベルトの縁を断ち切ったから。この冷たさはアルベルトの恨みなのかもしれないわ」
「そんなことあるわけないよ、だって、もしそうだとしたら私が恨みを背負うはずだもん。
ユリアは何一つ悪くない」
「……そう。」
「うん、私が1番悪いの
……あんなに慕ってくれたアルベルトとお別れしたんだから。
だから、私はもう地獄に落ちてもいい覚悟でいるの。
この先の怨みも、憎しみも、全部背負って、王都(王子)からユリアとジャック、アルベルトを守るって、彼と別れた時に私はそう決めた
それが叶うなら地獄くらいなんの苦じゃない。
私が全部悪いの…だから、
ユリアのせいじゃないよ。」
「ルナ…」
ユリアに話したことは本心だった。風水師は清き人間がなるべき職業と言われている。自分はアルベルトと出会って、彼に別れを告げてからはとても清き人間とはいえない行動をとってきた。
王子の恋心を利用し、嘘をつき、仲間を守るために地位を得ようとする…これのどこが清き人間だろう。
…でも、今更引き返す気はない。
私にはもうこれしかなかったのだから。
「ルナ…ありがとう。
でも、あまり罪悪感に押し潰されちゃダメよ?ルナだって悪くない部分もあるんだから。」
「ユリアは優しいね、ありがとう。」
「ふふ……
…あ、そうだ。そういえば」
「?」
何かを思い出したのか、ユリアがゆっくりと起き上がり、私に耳打ちする。
「最近、ジャックの様子がおかしいわ…
…私のことはもういいから、彼の様子を見てきて頂戴。」