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「ジャック?」

「ルナ…?」

満月の眩しい夜。私はユリアの言葉が気になり、ジャックの部屋へと入った。

ジャックはまだ部屋着に着替えず、眠たげな顔で酒を飲んでいた。

「どうした?何か困ったことでもあるのか?」

「いや…そうじゃないけど…大丈夫かなぁって思って。」

「?、俺は至って元気だぞ…ひっく。」

「ほんとに元気なの?お酒そんなに飲んで…何か気掛かりなこととかあったりしないの?」

「??、いや…?」

ジャックは私の言葉に不思議そうに目を丸くした。彼が酒豪なのは周知の事実だし、表情も全くいつもと変わらないので、私はユリアが気にしすぎてるのか…と思い。部屋から出ようと数歩下がる。

すると次の瞬間、ジャックが立ち上がり私にゆっくりと近づいた。

「むしろ、お前の方は元気なのかよ。ルナ」

「!」

その時、私はある違和感を感じた。

…あれ?ジャックってこんなに背が高かったっけ?

ジャックは小さい頃から小柄で、背の高さはユリアより低い。それなのに今のジャックは背伸びをすれば天井に届きそうなくらいに背が高く、私が大きく彼を見上げる形になっている。

…下手したら、アルベルトと同じくらいなんじゃ?

「おい、聞いてんのかよ。」

「ジャック…厚底靴履いてる?」

「あ゛?…履いてねぇよ…ひっく。」

「?、そっか…?ごめんね。じゃあ私もう部屋出るよ。」

「?、なんだよルナ…?俺が厚底履いてないのがそんなに変なのかy「おやすみ」

パタンッ!

彼の言葉に被せるようにそう返して私は部屋を後にした。

…おかしいな、あんなに背が高かったように思えないんだけど。これがユリアの思っていた違和感なのかな?

そう感じて唇に手を当てながら考えていると、

隣の部屋からサイラス王子が出てきた。

「ルナ…。」

「あ、王子。」

「どうしたんだこんな夜更けに」

「あー実は、さっき隣のジャックと話してたんですけど…」

「ジャックと?こんな夜更けに…?」

「はい、実は……わっ!?」

グイッ…ガチャッ!!

「え?な…なに…なんですか!ひゃっ…!」

「こんな夜更けに、俺以外の男と、どんなことをしていたんだ?」

え?…な、なにが起こってるの…?

サイラス王子は苛立った様子で、強引に私を部屋に入れ。しめた扉に自分を押し付ける。

彼のギラギラとした目を見て、私はビクリと肩を振るわせ、無駄とは分かっていながらも後ろへ後退りした。するとそれを見た彼が私の顔を指で固定し、唇を自分のに押し立ててきた。

香水のような匂いとドロリとした甘さに思わず体が泡立つ。

「ん…っ!?ちょ、やめて!サイラス王子!」

「…やめない、やはりお前、ジャックのことが好きなんだろう?」

「ち、違います…!私はサイラス王子を…本気で!」

「それならなんで他の男の方に行く…!俺の方には全く来ないじゃないか!」

「それは…恥ずかしくて…」

「嘘だそんなの、ルナの馬鹿!この馬鹿者が!」

「ああ、もう!…そんな泣きそうな顔をしないでください、サイラス王子!」

彼が泣きそうになりながら怒っているのを見て、私は冷静に説明を聞かせるために、彼を落ち着かせることにした。彼がしたのと同じように乱暴に唇を彼のに押し当て、背伸びをして彼に体を預ける。

「ん…ルナ…っ、ちょ…!」

「あなたが大好きだってこの前言ったじゃないですか、サイラス王子が悪いんですよ…ほら、かがんでください。」

「ッ〜!!」

「よしよし…好き、好き好き、大好きですよ。」

サイラス王子を落ち着けるために、私は愛を囁きながらちゅ、ちゅとキスをしていく。

「…るな…ごめん…。」

「……落ち着きましたか?」

「ああ…すまなかった。」

「こちらこそ、嫉妬させるようなことごめんなさい。ゆっくりそこで話をしましょう?」

「ああ。」



「なるほど、確かにジャックの背丈については俺もおかしいと思っていた。」

「そうでしたか、よかったです。」

数分後、私の話を聞いたサイラス王子は私の頭を優しく撫でてくれた。

「でも、夜中に俺以外の男の部屋に行くのはダメだぞ。」

「はい、ごめんなさい。」

サイラス王子に頬を摘まれ、私はうっと摘まれた方に近い目を瞑る。

「…悪い子だなぁ、ルナは。」

「あはは…そうですね。」

「……わ、」

「?」

「悪い子には、お仕置きが必要だな…!」

「え?」

…こ、この王子!す、すごい言い慣れてない感じですごいことを言ったぞ。

私がそう思っているのも束の間、王子が顔を真っ赤にして私をベッドに押し倒す。

「え?え?王子」

「黙れ、大人しくしろ…お、おしおきの時間だからな!お、お前みたいな悪い子は…その、

俺のお仕置きを受けるべきだぁ!」

「やらしいことしたいだけでは?」

「な…ッうるさい!そ、そそそ…そんなわけないだろう!!ほら、俺のシャツで拘束してやるからな!」

そう言って王子は照れ隠ししてバタバタとシャツのボタンを外す。私は彼と結婚するまでにそういうことはしたくないと思っていたため、小鳥に変身して逃げるか…と真顔で天井を見つめていたが、

次の瞬間、王子の逞しい上半身をみた途端。

自分の思考回路が止まった。

「!?、ば…薔薇が…」

彼の左の脇腹の辺りにはバラのボディペイントがしてあった。そして、それを見た瞬間、私の意識がふわふわと水に入ったわたあめのように溶けていく。

「ああ、これか?…これはラバーズトーンという特殊なシールだ。これを見て意識がふわふわとした者が運命の相手だといわれてるんだぞ。


…ふふ、その様子だとルナは俺の運命の人だったらしいな。当たり前の話だが」

「う…そ…」

私は…王子を好きと言う気持ちを感じないのに。

「嘘じゃないさルナ。俺とルナが結ばれるのは運命だったんだ…まるで、


作られた物語の中で歩かされているかのように、お前は生まれてから俺と結ばれることが決まっていたんだよ

……おっと。」

「…。」

「気絶してしまったか、ふふふ。」

作られた物語の中で

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