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コメント
1件
うわっ……読んでて心臓がギュッてなった……。春菜の「大丈夫」を繰り返すところ、すごくリアルで胸が痛かった。佐久間の優しさと怒りのギャップがたまらないね。あの場面、彼がいてくれて本当に良かった……。守られるだけじゃなくて、彼の震える手にも春菜への想いが溢れてて泣けた。るるさんの描写、めっちゃ好きです。続きも読ませてください🌙
💙青椒肉絲🧡
99
#あべさく
うめぼし
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楪羽*yuzuriha*
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不器用で愛おしい告白を交わしてから、早くも2ヶ月の月日が流れていた。
季節は移り変わり、あのときは肌寒いくらいだった空気も、今は太陽がさんさんと降り注ぎ、じんわりと汗が滲むほどになっている。
「たまにはお家で、時間を忘れてたくさんお喋りするのもいいよね」
そんな風に始まった、春菜の小さなマンションでの「お部屋デート」。
2人で買い込んだお菓子やジュースをつまみながら、お互いの話をたくさん話した。
佐久間はよく笑い、春菜の拙い話を、キラキラとした瞳で全部愛おしそうに聞いてくれた。
おだやかで、優しくて、幸せな時間がそこには流れていた。
気づけば、壁の時計の針は21時半を回っている。
「あーあ、楽しい時間は一瞬だな。そろそろ俺、帰らなきゃ……」
寂しそうに眉を下げた佐久間が、ソファで伸びをした、まさにその時だった。
ピンポーン、と静かな部屋にチャイムが響く。
インターホンの画面を確認すると、そこには宅配便の制服を着た男性が映っていた。
春菜は首を傾げた。
荷物を頼んだ覚えはない。
何より、宅配便が届くには時間が少し遅いような…?
「ん? こんな時間に? ……俺、対応しようか?」
佐久間が心配そうに声をかける。
けれど、彼は日本中が知るアイドルだ。
もし万が一にでも、こんな時間に一般女性の部屋から彼が出て来たことが公になれば、取り返しのつかない大騒動になってしまう。
春菜は首を横に振った。
「いつも荷物を届けてくれる人だし、大丈夫!座ってて」
春菜はひとりで玄関へと向かった。
「はーい」
パタパタと小走りに玄関へ行き、鍵を開け、扉を少しだけ押し開く。
――その瞬間、世界が歪んだ。
「え、」
ガツッ、と鈍い音を立てて、外から頑丈な靴底が扉の隙間にねじ込まれた。
驚く間もなく、インターホンに映っていた男が、力任せに扉を押し開けて室内に滑り込んでくる。
「っ、いや――」
悲鳴をあげようとした瞬間、男の大きな掌が春菜の口を強く塞いだ。
声が、喉の奥へと押し戻される。
そのまま勢いよく玄関の床へ押し倒され、春菜は腰を強かに打ちつけた。
ジンとした激痛が走り、完全に身動きが取れなくなる。
男は春菜の体の上に馬乗りになり、ニタニタと歪んだ笑みを浮かべながら、乱暴にその体をまさぐり始めた。
「いつも荷物運んでるときからさ、あんたのこと可愛いと思ってたんだよね。好きになっちゃってさ」
耳元で囁かれるねっとりとした声。
口を塞がれたまま、春菜は必死に手を動かして抵抗したけれど、恐怖と強烈な嫌悪感でパニックになり、全身がガタガタと震えて力が入らない。
(嫌だ……っ!!助けて___)
心の中で叫んだ、その時だった。
「春菜? さっきの音なに___って、何してんだてめぇ!!!!!」
リビングのドアが勢いよく開き、地鳴りのような怒号が響き渡った。
普段の明るく優しい佐久間からは想像もつかない、低く、激しい怒りに満ちた声。
佐久間は猛烈な勢いで駆け寄ると、春菜に跨っていた男の胸元を、容赦ない蹴りで見事に吹き飛ばした。
「がはっっ!?」
床を転がった男は、まさか部屋に別の男がいるとは思わぬ誤算だったのだろう。
佐久間の、獲物を射抜くような鋭い眼光に完全に怯え、這うようにして開いたままの玄関扉から逃げ去っていった。
「待てっ……!」
佐久間は一歩踏み出したが、すぐに思い直したように足を止めた。
玄関の隅で、呼吸の仕方も忘れたようにガタガタと震えている春菜の姿が、目に入ったからだ。
「春菜……!」
すぐに彼女の元へ膝をつくと、壊れ物を扱うように優しくその体を抱き起こした。
「ごめん……ごめん、春菜。気づくのが遅くなった。怖い思いさせて、本当にごめん……」
差し伸べられた佐久間の手が、微かに震えている。
春菜はパニックで頭が真っ白になりながらも言葉を絞り出す。
「大丈夫……まだ、何もされてないから……大丈夫, 大丈夫……っ」
その言葉は、佐久間にというよりも、もはや自分に言い聞かせているようだった。
ただそれ以外の言葉を忘れてしまったかのように、「大丈夫」を繰り返すことしかできない。
震えが止まらない。
呼吸が浅くなり、苦しい。
怖い、怖い、こわい___
佐久間は何も言わず、ガタガタと震える春菜をきつく、だけど傷つけないようにぎゅっと抱きしめた。
彼の激しい胸の鼓動が、温かい体温が、ダイレクトに伝わってくる。
「もう大丈夫だから。俺がいる。ここにいるからね、春菜」
その耳元での優しい声が、春菜の心の堤防を完全に決壊させた。
「……っ、ごめ……っ!!大丈夫……じゃ、ない……っ!!」
口にできなかった言葉が、大粒の涙とともにボロボロと溢れ出す。
春菜は佐久間の背中に必死で手を回し、服を破れんばかりに掴んで、彼の胸に顔を埋めた。
「怖かった……!! 本当に、怖かったぁ……!!」
子どものように声を上げて大泣きする春菜を、佐久間は「うん、うん」と何度も深く頷きながら、彼女の背中を優しく、トントンと大きな手で叩き続けた。
彼女の心が少しでも落ち着くまで、何分も、何十分も、ずっとそうして自身の温もりを分け与え続けた。