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カイトは、晴れて事務所への移籍が決まり、KAITという名でソロデビューを果たした。
KILLAは、シュウが再びヴォーカルをつとめるようになって、それでも衰えない人気を誇っていた。
カイトとシュウは、連絡を取り合ったりすることこそなかったみたいだけれど、
テレビ局などで会えば、互いに話すこともあると言っていた。
ソロになったカイトは、今も私のそばにいて、
笑ったり、甘えてみたり、時にはとても情熱的にもなったりもして、
相変わらず、目まぐるしくいろいろな顔を見せていた。
「ミク、俺の新曲、聴いてくれた?」
「あっ…ごめん。ちょっと忙しくて、まだ聴いてなくて……」
とっさに謝ると、私の部屋でゆったりと寛いでいたカイトが、途端に不機嫌そうな顔つきになり、
「……せっかく、サンプルCD渡したのに……ミクルに、一番に聴いてほしかったのに……」
そう拗ねたように言い、ふんと鼻を鳴らしそっぽを向いた。
「……もう、怒らないでよ、カイト……悪かったってば……」
彼の機嫌を取ろうと、顔を覗き込むと、
「ホントは怒ってないって……ミク、だまされただろ?」
ニッと笑顔になった。
彼は、以前に比べると、本当によく笑うようになったと思う。
キラにいた頃には、シュウたちメンバーとの確執から、精神的にも抑圧されて、笑顔さえも奪われていたんだと感じた。