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102 ◇退院
哲司が見舞いに訪れたことで、少し元気を取り戻した雅代は、それから2日後
検査結果が出て、医師から今の状況の説明を受けることになった。
「大林さん、調子はどうですか? 顔色はいいみたいですが」
「はい。お陰様で……。
何もしないで横になっているのが申し訳ないくらいです」
「製糸工場で働かれているとお聞きしていますが、体力的にあなたの年齢だと
大変ではありませんか」
「実は事情があって最近働き始めたばかりなんです。この年になって始めた仕事
ですのでキツイと感じていたところです」
「そうだったのですか。若いころから始めて徐々に身体をならしている人に
比べると確かにきついかもしれませんね。検査の結果なんですが、過労と慣れない
仕事のストレスから倒れられたのでは思います。ご家庭の事情もおありでしょう
が、できれば工場の仕事は見合わせたほうがいいと思います。
職場を辞めにくければ私のほうから説明の手紙を書きますから、おっしゃってください。
それともう明日には退院していただいて構いません。
お家でゆっくり休養されることですね」
「先生、周囲の人たちには何と説明すればいいですか?」
「そうですね、慢性的な疲労感、身体の重だるさなどを感じているはずですから、
虚弱体質とでも説明しておくといいですよ。
これまで重労働とご縁がなくて意識せずにこれたのかもしれません。
まぁ普通に家事などぐらいでしたら動けるけれども、きつい仕事となると各々
体力の差がありますし年齢的なものもある、ということで今の仕事に体力が
ついていけとないということでしょうか」
「丁寧にご説明くださり、ありがとうございます」
「明日以降退院できますのでご家族と話し合われて決めてください。
もしも連絡にお困りのようこちらで手紙を出すこともできますからおっしゃってください」
「はい、その折には宜しくお願いします」
◇ ◇ ◇ ◇
午後から両親が来なければ病院へ手紙を頼もうかと思っていたのだが、ちょうど
いい按配に両親揃って見舞いに来てくれたため、雅代は翌日の午前中に無事
退院することができた。
――――― シナリオ風 ―――――
〇病室・診察
静かな病室、紙をめくる音。
医師「大林さん、調子はどうですか?顔色はいいみたいですが」
雅代、布団の上で上体を起こし、控えめに微笑む。
雅代「はい。お陰様で……。
何もしないで横になっているのが申し訳ないくらいです」
医師
「製糸工場で働かれていると伺いましたが、体力的に大変ではありませんか」
雅代「実は事情があって最近働き始めたばかりなんです。
この年になって始めた仕事ですので、きついと感じておりました」
医師(うなずきながら)
「そうでしたか。
若いころから徐々に慣れている人に比べれば、無理もありませんね。
――検査の結果ですが、過労と慣れない仕事のストレスによるものと
思われます。
ご家庭の事情もあるでしょうが、できれば工場の仕事は見合わせたほうが
いいでしょう。
辞めにくいようでしたら、私から説明の手紙を出します。
それと……もう明日には退院していただいて構いません。
ご自宅でゆっくり休養してください。
雅代「先生……周囲の人たちには、何と説明すればよいのでしょうか」
医師「そうですね。虚弱体質、と言えば角が立ちませんよ。
重労働に体力がついていけない、と。
家事程度なら差し支えないでしょう」
雅代(深く頭を下げて)「丁寧にご説明くださり、ありがとうございます」
医師「ご家族と話し合って決めてください。
必要ならこちらから手紙も出しますから」