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夜。仕事終わり、2人で一息つくリビング。柔太朗がソファの横の小さな袋を持ってきて、仁人の隣に腰を下ろした。
「ね、これ。」
「ん?」
差し出されたのは、小さな透明の瓶。
ラベルもまだ貼ってない、試作品の香水だった。
「これ、試作なんだけど……これで決定したから。じんちゃんに先行プレゼント。」
「え、香水?まじ?!ちょうど俺、買い変え時だと思ってたんだよね〜」
仁人が目を丸くして笑うと、柔太朗は少しだけ口元を緩めた。
「ほんと?でも、じんちゃんの好みかはわからないけどね」
「え、何それ笑。自信ない感じ?」
「いや、俺が好きな匂いすぎるんだよ。完全に自分基準。」
「なるほどね〜。柔太朗ブランド出すならそりゃそうでしょ。」
仁人は嬉しそうにキャップを外して、手首に一度プッシュ。
ふわっと部屋に広がる香りは、清潔感があって、でも少し甘くて。 肌の上で柔らかく広がっていく。
仁人はその手首を軽く擦り合わせて、鼻に近づけてふっと笑った。
「お〜、柔太朗の匂いする。」
「俺の匂いではないだろ、それw」
「いや、でもほんとにそんな感じする。柔太朗好きそうね〜この匂い。」
柔太朗はちょっと照れたように笑って、視線を逸らす。
「まぁ……好きだね。なんか落ち着く匂いにしたかったんだよ。」
「へぇ〜。いいじゃん、落ち着くよ。俺も好きかも。」
「ほんと?」
「うん。……なんか、柔太朗の部屋の匂いみたい。」
「それ褒めてんの?」
「もちろん。だって俺、あの匂い結構好きだもん。」
そう言いながら、仁人は香水の瓶を手の中でくるくる回して、
ラベルが貼られていないその無垢なガラスを見つめる。
「……ちゃんと売り出すとき、名前つくんだよね?」
「うん。まだ秘密だけど。」
静かに視線が合って、
仁人が「ふーん、明日これつけてこ」と笑うと、
柔太朗の耳のあたりがほんのり赤くなった。
「……宣伝担当、ありがと。」
「俺がつけてたら売れるでしょ?笑」
「売り上げダウンかも」
2人の笑い声が重なって、
香水の甘い香りが、夜の空気の中にゆっくり溶けていった。