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htra/菊さんと日帝さん(ここでは椿さんとお呼びします)の話/新参者なので解釈違いあったらすいません/※非公式の設定増し増しです。忠実寄だけど捏造ばっかし※
私はあなたを捨てた。というよりは、捨てざるを得なかった。祖国の為、として刀を振るうあなたを薦めたのは確かに私だった。私が始めたことだった。しかし、それを私は忘れていた。申し訳ないと思っている。謝って、済むことでもないと。あなたを血に染めてしまったことより、それを忘れていたこと。それが、よっぽど悪いことだったと、つい最近気付いたのです。そんな私をあなたは許してくれますか?許してくれない、からここに居るんでしょうか。ねえ、椿さん。あなたは私を憎んでいますか?殴りたいと思っていますか、殺したい、と。
「…答えて、くれませんか」
目の前の闇へそう声を送る。正しく言えば、闇の前に立っている、己とよく似た、しかし明確に違うよく知った人物に、だった。黒い軍服に身を包み、今にも闇へと溶け込みそうな彼を唯一区別つけるのは、真っ赤に染った瞳だった。瞬きもせずにこちらをじっ、と見つめている。なぜか、目を逸らしたら彼が消えてしまう気がした。その圧に耐えながら、こちらも負けじと見つめ返す。ふと彼は、顔をぐい、とあげ少し見下ろすようにして口を微かに開いた。
「私は、あなたを忘れたことは1度たりともな かった。私の行動は、総て、あなたのためでしたから。」
しかし、あなたは違ったらしい、と少しだけ自虐気味に彼は呟いた。違う、と反論したかった。あなたを忘れたことはない、と。ずっとあなたの勝利だけを願っていた、と。口を開きかけて気付いた。私が願っていたのは、ただの独りよがりなわがままじゃないか、と。それが彼を苦しめたんだろうか。あの瞳に光が宿らなくなったのは、 そのせいなんだろうか。立ち尽くす。俯いて床を見ていれば、視界の端から黒が近付いてきた。ざわ、ざわとまるで何か生き物のように動く影。そして近づく足音。彼が、目の前にいる。
そう思ってぐっ、と頭を勢いよく上げれば、確かに彼はいた。それも目と鼻の先に。思わぬ近さに息を呑んだ。彼の瞳に気付く。あぁ、これが、深淵。底が見えない。もし、飛び込みでもしたら、一生沈み続けそうだ。一言もはっしない私を意に介さず、彼はこちらへ手を伸ばした。頬に革の質感が触れた。彼の手だ。体温がないのだろうか、伝わってくる熱は少しひんやりとして冷たい。
「あの…なにか…」
「今、幸せですか、御国様。それとも、敗れた私に、もうあなたへ問いかける権利はありませんか」
「そんなことは…!!」
「なら、答えてください。」
仮面のように、微塵も変化しない顔を張りつけて彼は問う。その問の答えは、彼の存在に大きく影響を与えるのだろうか、などと面倒なことを考えて返答に困った。逃げようにも逃げられない。ここで逃げたら彼はおそらく……。何度か視線を迷わせても、彼の瞳はじっとこちらだけを捉えている。覚悟を決めて口を開いた。
「…えぇ、幸せです。皆さんに良くしてもらって、とても…毎日が楽しいですよ」
そう答えると、少しだけ彼の顔が変わった。ほんとに、少しだが口角を上げたように見えた。笑って、いるのだろうか。
「そうですか、それは良かった。なら、私はもう必要ないでしょう。敗れた過去はあなたに相応しくない」
彼の手が離れる。ダメだ。ダメ。あなたが消えたら、私は……
思わず彼の手を掴んでしまった。なんと言うのかも考えていないのに。掴まれたのは想定外だったのか、彼にしては珍しく肩を揺らし、目を微かに見開いていた。少しの沈黙。の、後彼が口を開く刹那、大きく声を張上げて言った。
「っあなたと!!今を…すごしたいです。…あなたが、いなければ、私は存在してない。だから、あなたと…」
「私がいては、邪魔でしょう。あなたの印象が悪くなる一方ですよ。」
「それでもいい。あなたをそう示したのは私だ。私の責任です、だから、最後まで責任を取らせてください。」
「……」
「お願いです…。……私は、ずっと考えていました。あなたのことを。あなたにした、仕打ち全てを謝りたかった。あなたが笑える時代を、創りたかった。…あなたとは思い方が違うでしょうが、私もあなたを一時たりとも忘れたことはありませんよ。」
ぎゅう、と握った手に力を込める。痛いくらいでもいい。彼を行かせたくはなかった。視界が歪む。顔を伝って、彼の革手袋へと私の涙が落ちた。止められなかった。まるで壊れた蛇口のように、涙が出続ける。「ごめんなさい」と小さく零せば、彼の手は私の拘束を滑り抜けていった。やってしまった、と思って未だぐちゃぐちゃな顔のまま目の前の彼を見上げれば、ふと彼に包まれる 。…抱きしめられたのだ。
「…あなたを泣かせるまではしたくなかった。ただの冗談だったのですが」
「……あまり、にも、タチが悪いです」
「ふふ、しかし泣いてる姿も美しいですが、似合わないですね。あなたは笑っている方がいい。」
そう言ってかれは身を少し引き、私の目元を拭った。
「なら…あなたも、笑ってくださいよ」
「なぜ私が?私は顔を威圧的に固めている方が似合う、と自負しているのですが…」
「嫌だ、笑ってください。あなたが笑うまで私は決して笑わない」
「おや、飛んだわがままですね。御国様にしては珍しい……」
じっと見つめれば、彼はため息をつき、「その顔には弱いんですよ……」と零して頭を抱えた。そして数分したあと、少しだけ恥ずかしそうにして、彼はぎこちなく微笑んだ。
「…慣れていないようですね」
「あー、もう。だから嫌だったんです。」
けれど、笑っていた方がいい。と彼の頬へ手を伸ばして、微笑んだ。彼の瞳が開く。それを光が照らし、瞳が光に透ける。……あぁ、やっと、ソレが見れた。
「私はあなたを忘れない。ずっと、覚えていると約束しましょう」
「……信じていいんですか」
「信じてください。あなたが私を忘れなかったように、私はあなたを忘れない。確かに、あなたと私は違いますが、本質的には同じです。私はあなただし、あなたも私です。だから、これ以降、居なくなった方がいい、などと考えてはいけませんよ」
「……はい、承知致しました、御国様」
忠誠の姿勢を取った彼に苦笑する。まだその素振りは抜けていないんですね。
……そして1回の瞬きの後、目の前の空間は跡も残さず消えた。困惑していれば、目に入ってきたのはよく見なれた顔だった。
「お、菊。目、覚めたあるか?おめー突然倒れたあるよー」
心配させるな、と耀さんは私の額へデコピンをして来た。…それなりに痛い。
「…すいません、その、大事はなかったでしょうか」
「悄悄。おめーが心配するようなことは起きてないある。まだ寝てるがよろし」
しかし、と起き上がろうとすれば、彼の見た目に似合わないとてつもなく強い力で体を押さえつけられた。……しかし、椿さんは消えてしまったのだろうか。嫌な思考がよぎる。それを頭の中から消そうと思っても、嫌な事ばかり思い出して、浮かんで、消えない。彼は忠誠を誓ったら、破らないと分かっている、けど。
「おい、また変なこと考えてるか?愚蠢的孩子…早く寝ろ、言っただろ」
「その、しかし……」
「は·や·く·ね·ろ!!!」
「は、はい…」
はあ、と彼はため息をついた。…耀さんにため息をつかれた……。別に珍しいことじゃないけど、ちょっと、ショックだ。耀さんの言う通りにするか、と思って目を閉じる。すると、袖に違和感を感じた。落とさないように近付け、手を入れ、ソレを取り出す。
「おや…これは……」
丁寧で繊細な堀の入れられた金のブローチだった。懐かしい…。これ、私が椿さんにあげた…。…なぜここに?もしかして、あの時……。
ふと思って破顔した。夢じゃ、なかったらしい。太陽に輝くそれが、美しく見えた。…でもやっぱり、彼の胸元にあるほうがよっぽど美しい。
彼の透けた瞳を思い出し、夢へと漕ぎ出す。また会ったら、彼へこれを返そう。持ち主へ返された方が、こいつも嬉しいだろうし。儚いひと時を思い出し、夢へ飛び込み、目を閉じた。あのぎこちなく咲いた花を浮かべながら。