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#ホークアイズ、スワロウテイル、ナイトアウル
塩
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もう、疲れた。
他人から向けられる期待の視線も。
仲間から向けられる感嘆の言葉も。
みんなが欲しいのは、太陽のような存在。
俺は、月――いや、星にも及ばない。
ああ、俺が生きている意味は、あるのだろうか―――。
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あたりを滝のような雨が白く覆う。
確か、今日は記録的豪雨とニュースキャスターが話していたような…
そう考えて、虚ろな笑みを浮かべる。
「…もう、どうでもいい」
ポケットからナイフを取り出す。
今日、ここでこの苦しみを終わらせるために―――。
すると、雨のせいか手が滑り、腕に赤い鮮血が散った。
「…ん、仁!」
懐かしい旧友の声が聞こえる。
幻聴か―――仁は、微かに笑みをこぼした。
「もう、いやだ」
二人とも、じゃあな。
しかし、その刃が突き刺さることはなかった。
急に力が抜け、自分の体が傾ぐのを感じる。
遠くから誰かが呼ぶ声が聞こえる。
仁はゆっくりと意識を手放した。
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高校生時代からともに過ごしてきた親友――元、親友は公園のベンチに座り込んでいた。
顔色は紙のように白く、瞳には何の感情も浮かんでいない。
その手に銀色に鈍く光る刃物が握られているのを見て、大地は咄嗟に駆け出した。
「仁!仁…!」
「もう、嫌だ…」
零れ落ちたか細い声が耳に届く。
その言葉に籠もっている絶望感に、大地ははっと息を呑む。
そして仁は再び、刃を首に充てがう。
「やめろ、シバ!」
縦人が慌てて駆け寄って、その手を捻り上げた。
「…っ、痛…っ」
掴んだ仁の腕から流れ落ちた血液が、雨に濡れた地面を朱に染める。
傷口が開いた痛みに、仁は意識を失いぐらりと倒れかかる。
「仁…っ、…!?」
抱きとめた彼の手のひらは氷のように冷たく、驚くほど痩せていた。
大地と縦人は、旧友の変わり果てた姿に驚き、そっと俯いた。
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あの後、なんとか大地の家まで二人で連れてきて、縦人も泊まることになった。
―――大地の寝室。
白い額をあらわにして眠る仁の寝顔はまだあどけない。
「…ごめん、仁」
親友でいてあげられなくてごめん。
いつも傍にいてあげられなくてごめん。
あの時、仁の手を離してごめん。
こんなになるまで、放っておいてごめん。
―――君は、ずっと辛かったんだね。
誰にも頼れずに、独りで。
大切な仲間を守るために。
大地は仁の目尻に浮かぶ涙をそっと拭い、頭を撫でる。
かつてよくやったように。
仁は子供扱いするなって怒っていたっけ。
大地は仁が落ち着くまで、ずっとそうしていた―――。
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「…寝たか?」
「…うん」
静かに頷くと、縦人は俯いたまま低い声を零した。
「あいつ…許せへん」
「…縦人」
そんな事を言っていられないでしょ、と言おうとし…
続いた言葉に、口を噤む。
「何で、頼らないんや?」
「……っ」
「あいつが、あんな重圧に耐えられるわけないやろ…!」
いくらませていても、あいつはまだ18歳だ。
俺たちと変わらない、子どもなんや、と拳を握った縦人の瞳が潤む。
「すまん…堪忍なあ、シバ…」
縦人の静かな泣き声が、夜の闇に溶けていった―――。
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あくる朝、寝室のカーテンを開け放った縦人が、大地を揺り起こした。
「…ん、縦人…?」
「テンメー!
俺、いいこと思いついたんや!」
その顔は昨日とは比べ物にならないくらい明るい。
「今日は、あの日のことを忘れて、遊びに行こうや!」
「いい考えだね!
…あれ、でも…どこに行くの?」
そう尋ねると、計画性とは無縁の男が珍しく得意げに胸を張る。
「それはこの縦人ちゃんが夜更かしして考えたんや!」
確かによく見ると縦人の目には微かに隈ができている。
よほど悩んだのだろう。
布団の中で悶々としている縦人を想像して、大地は思わず笑ってしまった。
「…ん…、ここ、は…?」
二人の話し声で起きたのか、ゆっくりと仁の瞼が開かれる。
そして暫くの時を要し―――仁は勢いよく飛び起きた。
「………っ!?
な、何で…」
「何で、やと〜?
シバ、夢でも見とるんか〜?」
縦人ちゃん、ご立腹やで、と言いながらもどこか楽しそうに笑う縦人を見て、
大地は穏やかに微笑む。
その笑顔につられたのか、仁は微かに泣きそうな笑みを浮かべた。
思えば久しぶりに見た笑顔だった。
「さーて、ほら、はよ支度するで!」
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「今回のファーストアクティブ?は…」
「アクティビティ、ね」
「あ、そ、そうやった!」
てへ、と舌を出す縦人に、大地は苦笑を漏らす。
「ここ、遊園地や〜!」
仕切り直して叫んだ縦人に、大地は緩やかに目を細める。
「…懐かしいね、ここ」
「せやろ〜?
3人で遊んだもんなあ…」
「じゃあ、まずは…やっぱりあれや!」
縦人が指さしたものを恐る恐る振り返る。
忘れもしない。
―――あれは一種の拷問器具な気がする。
「…っ…何でだよ…!」
かわいらしいユニコーンがつぶらな瞳でこちらを見る。
「……はあ」
仁は溜め息を吐き、手招きしている縦人に大人しくついていくことにした。
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「はあ〜!
めっちゃ楽しかったな!」
「…そうだな」
頷くと縦人が目を見開く。
「おっ、シバが素直や!
珍しいな!」
にやにやとしながら突っついてくる縦人を押しやり、尋ねる。
「次はお化け屋敷か?」
「せやで〜!
よっしゃ、行こか!」
「ええ〜…怖いよ、縦人…」
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帰りの電車の中。
閑散とした車内で、3人は身を寄せ合って座っていた。
遊び疲れたのか、仁は瞼を完全に閉ざす。
「いや、だ…
もう、おいてかないで…」
ぽつり、と小さくこぼされた寝言。
誰に聞かせるものでもないだろう。
が、大地は力強く頷いた。
「もう、独りにしないよ」
「しゃあないなあ、縦人ちゃんが傍にいたるわ」
3人を、春陽があたたかく照らしている。
その温度が、3人の糸の絡まりをほぐしていた―――。
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それから1,2週間後。
仁は少し淋しそうな面持ちで大地の家の玄関に立つ。
「…世話になった」
「…仁」
「なんだ」
深く、息を吸う。
そして、目を真っ直ぐに見返し、仁の大きな手を握った。
「辛かったら…また、戻ってきて。
仁は、みんなの太陽じゃない、俺たちの親友だから」
仁は大きく目を見開き―――ふわりと笑った。
「ああ…覚えとく」
「覚えとく、やないねん!
どれだけ心配したと思って…」
「すまない」
しゅんと項垂れる仁に、大地は首を振る。
「違うよ、仁」
そういうときは、
―――『ごめん』じゃなくて、『ありがとう』。
「懐かしー!
よくゆり子先生が言っとったな〜!」
高校の先生の口癖。
懐かしい、と3人で笑い合う。
「…ありがとう、大地、縦人」
口の中で、言葉を転がすように味わう。
久しぶりに呼んだ親友の名前は、さくらんぼのように甘酸っぱい、春の味がした。
コメント
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みぅだよ🤍🥀 読んだよ、第1話。冒頭からすごく重くて、仁の「もう、どうでもいい」って台詞が胸に刺さった…。でも大地と縦人が駆けつけるシーンで、ちゃんと温かさもあって、つい引き込まれた。遊園地で久しぶりに笑う仁、電車での寝言…すべてが切なくて、でも3人の絆がじんわり伝わってきた。最後の「ありがとう」、本当に良かった。この先も気になるよ🌙