第19話:「解放の光」
🚷 シーン1:赫の最後の砦
星峰特区、中央演習場。赫軍兵団の最後の拠点がそびえていた。黒鉄の要塞が大地を割るように築かれ、その周囲には使い捨てにされた碧族兵士たちの灰素の山が広がっている。
その前に、ナヴィスたちの影が浮かび上がる。
ナヴィスは深い青の軽装鎧に身を包み、肩に装着したカメラユニットが戦場の風を受けて微かに唸る。ゼインは黒いコートを風にはためかせ、眼光鋭く要塞を見上げていた。
「これが最後の壁か……」
ナヴィスがぼそりと呟く。
すずかAIの声が、ナヴィスのイヤピースから滑らかに届いた。
「ゼイン、ナヴィス。要塞の南壁は既に損壊しています。突入ルートを案内します」
「了解、すずか。ギアは?」
「地下の通信塔で電磁妨害を継続中。あと5分が限界です」
ゼインがフッと笑った。
「なら、その5分で十分だ」
🚷 シーン2:赫軍兵団、決戦
赫軍兵団の幹部が叫ぶ。
「反逆者どもを撃て!碧素の力、見せてやれッ!」
だがその叫びが響ききる前に、ゼインの足元が青白く光る。
「行くぞ──」
《シンギュラリティ》
一瞬、時間が歪む。ゼインの姿が霞のようにぶれ、赫兵たちの間を音もなくすり抜けた。斬撃が閃光のように走る。
「なっ……!? 視認できない……!」
ナヴィスはその背を追いながら、支援型フラクタルを展開する。
《サンクチュアリ・コード》
広がる碧色のドーム。その内側では、ゼインの動きがさらに鋭くなる。ナヴィスは腰のカメラを構え、戦場の一部始終を撮り続けていた。
「これが……本当の“解放”ってやつかよ」
要塞の装甲が剥がれ落ちると、奥から赫軍の大型兵器が姿を現した。赫共産部隊が誇る**“碧素兵器・型式999”**。
「こいつで、すべて灰にしてやる……ッ!」
だが、その瞬間、空が割れるような爆音。
《ヴォイド・エコー》
ジャムツァのフラクタルが炸裂する。黒と金のローブを翻し、腕を天へ掲げる彼の姿はまるで神の使いのようだった。
「これは“浄化”だ。赫なる者たちよ、過ちを悔いよ」
赫の兵士たちは震え上がり、撤退を始める。
🚷 シーン3:終焉と始まり
砦が崩れ、赫軍兵団は壊滅。通信塔からギアが合流し、ナヴィスに小さなデバイスを手渡す。
「ここに全部ある。証拠も、音声も、戦闘記録も」
ナヴィスは頷き、胸のカメラを指で叩いた。
「……これが、星峰特区の真実だ」
ゼインは剣を背に納め、振り返る。
「これで、カムリン族は……」
「まだ終わっちゃいないさ」
ジャムツァが前を向き、静かに言った。
「“タムジェン”として、これから信じさせていく。人は碧族を恐れるが、同時に、導き手として見るようになる」
ナヴィスの背中越しに、朝日が星峰特区の上空に差し込む。
すずかAIが静かに言葉を送る。
「戦闘終了。星峰特区、実質的に解放されました」
ゼインが微笑む。
「ようやく、一歩か……」
ナヴィスも肩のカメラを外し、空へ向けた。
「ここからが、本当の始まりだ」
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