アスタはウトゥックの顔色なんか気にしないで言うのであった。
「んまあ、あいつ等ってなんか偉そうでいつも何か企んでる感じなんだよなぁ! そこら辺が我たち新たな神と相容れない所なんだけどなぁ」
善悪がぶっこんで来た。
「ねえ、アスタ…… その新しい神って某たちも、それこそアスタやバアルもそうなのかな? よく分かんないけどさぁっ! 小生たちって悪魔じゃないの? でござる」
アスタロトは驚きに目を見張りつつ、月餅(げっぺい)を一つ飲み込みながら言うのであった。
「ん? 神は悪魔だろ? 悪魔が神だし…… 天から使わされし物、それが神とか悪魔とか言われるものじゃないか? 何言ってるんだ! 善悪?」
善悪が頭の上に『?』を浮かべながらアスタロトに言うのであった、結構焦っている様だった。
「いやいやいや、悪魔に対する者が天使であろ? 神と悪魔が一緒なんて聞いた事が無いのでござるよ? ん、んん? 説明して! 説明求む、でござるよぉ!」
アスタは当たり前のように言うのであった。
「いや待てよ、何言ってんだよ善悪、神も悪魔も天から来た物だろう? それって天使じゃんか! ここまでオケイ? 天から降ってきて、まあ、神でも宗教ってやつの便宜上(べんぎじょう)? 悪魔とか呼びたいなら呼べば良いんじゃないか? そういった意味では神も悪魔も等しく天使だけどな、ここまで…… オケイか?」
善悪はよく分かっていない感じで聞くのであった。
「うん…… それはオケイとか言われれば、まあオケイなんだけどさ…… 結局分かんないのはね、天使って良く言われるけど…… んねぇ、アスタ! 天使って物理的には何なの? 教えてくんないと判らないのでござるよ! んね、コユキ殿?」
「そ、そうそこなのよねっ! 何かそこら辺がイミフなのよっ! 説明求むっ! よっ!」
コユキも同意のようだ、良かった、仲良しだな、一方のアスタロトは驚いた顔をしたままいつになくフランクなそれでいて呆れた口調で返すのであった。
「はあぁ? 天から使わされるものって、普通に天使だろ? 空たる宇宙から地たる大地に齎(もたら)される物って、普通に我々、隕石じゃないか? 何でそんな当たり前の事を今更聞くんだよ? 若(も)しかして我の事試してんの? んねぇ、馬鹿だと思ってんの? くぅぅ~心外ぃぃ!」
言葉通り馬鹿だと思っていた為に、問い掛けには特段答える必要は無いと判断したコユキはここまでの話を纏(まと)めるのであった。
「ふむ、要約するとこうよね? 神と悪魔は呼び方だけで同じもの、そして両者とも空から降ってきた隕石で、天から使わされたから天使であると…… そう言う事?」
「だからそう言ってるだろう」
「ふむ」
やり取りを聞いていた善悪が不思議そうにしながら口にした。
「んじゃあ天使と悪魔の戦いとか、神に対して反乱を興す(おこす)悪魔とかって言う構図は無いのでござるか? それっておかしいでござろ? だってアスタ自身が封印されてたじゃん! それって天使軍と戦って敗れ…… 的なドラマでは無いのでござるか?」
「我を封じたやつらはさっきも出た『静寂(せいじゃく)と秘匿(ひとく)を以(も)って分かれ道を覆い隠す』運命神だぞ! 卑怯にも四対一だったし不意打ちでな、不覚をとったわ…… それになアイツ等いろいろ無茶苦茶なんだよ、トリックスターってやつでな、物理とか摂理とかまるで無視なんだぞ」
珍しくコユキが不安そうな顔を浮かべる。
敵か味方か定かではないが、恐らく今後絡んでくるだろう相手が得体の知れない力を持っていると告げられれば無理もなかろう。
少しでも相手の情報が欲しかったのかおずおずと聞くのであった。
「ねえアスタ、その運命神達の名前とか特徴とか分かるんなら教えてよ」
アスタロトは頷いて答えるのであった。
「奴らの名は『レグバ』ラダの精霊だ、ただしその力は他の精霊に比べると別格だな、運命を捻じ曲げ過去と未来に干渉すると言われているぞ、見た目は、まぁ爺(ジジイ)だな」
コユキは忘れないように復唱した。
「『レグバ=ラダ』、爺(ジジイ)か…… 覚えておくわ」
コユキは神妙な感じだったが、善悪はもう少し突っ込んで聞きたいようだった。
「なあアスタ、それってヤバいんじゃ? だって運命を捻じ曲げるなんてさ、相手に出来るイメージが湧かないんだけど…… ちと、チート過ぎるでござらぬか?」
アスタロトは肩を|竦め《すくめ》て答えた。
「んーそんなに心配しなくても良いと思うがな~、大体にして神って呼ばれる存在は運命を捻じ曲げてるからな、最後にこの星の運命を強引に捻じ曲げたのは善悪とコユキ自身、ルキフェルなんだから、フハハハ、考えてみればウラヌスやクロノス、もちろん原初の神々達にとってもたまった物じゃなかったろうよ」
「むむっ、またむつかしそうな名前が…… 一度全部教えて貰わなきゃ分かんないわね? ねえ、善悪? 」
コユキの言葉に満面の笑顔で答える善悪であった。
「そりゃ名案でござる! 敵を知り己を知れば百戦して危うからず、でござるな! そうしましょそうしましょ! 明日はアスタ先生から教わる座学でござるよぉ!」
アスタロトも納得したのか頷いて答えた。
「そうだな、それも必要かもしれんな、よしっ! そうするか! んじゃ明日、善悪のビリビリ訓練が終わったら座学にしよう!」
「…………ちぃっ!」
訓練はやるらしい、残念だったね善悪和尚♪
話が一旦纏まった事を受けて、この場に集った全員で月餅を堪能する事が決まった。
皆一様にうまいうまいと大絶賛の声を上げ、オルクスも顔面をアンコ塗れ(まみれ)にしながら全身で美味しさを表現するのであった。
そんな中、アスタロトは明日の座学に備えて、コユキ達の認識を聞き取っていた、主に歴史や神、悪魔に対する認識についてであった。
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