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玲央の心臓が一瞬、跳ね上がる。
(……まずいねぇ。)
振り返ると、そこにはゼノの助手の一人であるジョエルが立っていた。
「こんな時間に、何をしている?」
ジョエルは鋭い目で玲央を見つめている。
(……うまくごまかさないと、ここで終わるねぇ。)
玲央は一瞬の間を置いて、無邪気に笑った。
「いやぁ、ちょっと眠れなくてねぇ。だから、この古い装置が動くかどうか試してみたのさ。」
ジョエルは腕を組み、じっと玲央を見つめた。
「……本当にそれだけか?」
玲央は肩をすくめてみせる。
「他に何があるっていうんだい?」
ジョエルはしばらく玲央を見つめていたが、やがて小さくため息をついた。
「……まあ、君が何をしようと興味はない。だが、ゼノの研究に支障をきたすようなことはするな。」
玲央は笑顔のまま頷いた。
「もちろんだ。」
ジョエルは一度玲央に背を向けてから、ふと振り返った。
「それと……もし何か知りたいことがあるなら、私に聞け。ゼノの許可が必要ない範囲でなら、答えてやる。」
玲央は驚きつつも、すぐに表情を変えずに軽く手を挙げた。
「そりゃあ、ありがたい。」
ジョエルはそれ以上何も言わずに去っていった。
玲央は静かに息をつき、改めて周囲を見渡す。
(危なかったな…。)
だが、これで分かったことがある。
(ジョエルはゼノほど冷酷じゃない。場合によっちゃ、利用できるかもしれないな。)
玲央は静かに研究所へ戻ることにした。
⸻
玲央からの通信が途絶えた後、千空たちは無線機の前で沈黙していた。
クロムは興奮気味に叫ぶ。
「玲央、生きてたんだぞ!?すげぇよな!」
ゲンは顎に手を当てて考え込む。
「だけど、ちょっと気になることがあるねぇ……玲央ちゃん、どこにいるのか全然教えてくれなかったよね?」
「確かに。」
千空は腕を組み、目を細める。
「……玲央の言い回しからして、単に迷子ってわけじゃねぇな。」
クロムが驚いたように振り向く。
「どういうことだよ?」
「少なくとも、自由に動ける状況じゃねぇってことだ。」
千空はゆっくりと答えた。
「つまり、玲央は——監視されてるか、囲まれてる。」
その言葉に、一同が息をのむ。
スイカは心配そうに顔を上げる。
「じゃあ、玲央、危ないの?」
千空は短く答えた。
「……分からねぇ。」
ゲンは肩をすくめる。
「でも、彼女は戻るって言ってたよね?だったら、きっと手がかりを探してる最中なんじゃない?」
クロムは拳を握る。
「だったら、俺たちも何かできねぇのか?」
千空は少し考えたあと、静かに答えた。
「玲央の通信が来たってことは、向こうに何かしらの通信設備があるってことだ。」
ゲンは目を輝かせる。
「なるほど、それを逆に利用するわけだね?」
千空はにやりと笑った。
「そういうことだ。玲央が次に通信できるチャンスを逃さねぇように、こっちも準備しておく。」
クロムはこぶしを握る。
「よっしゃ!玲央を迎えに行く準備だな!」
千空は静かに空を見上げた。
(……玲央、無事でいろよ。)
風が強く吹き抜けた。
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