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星崎視点
何かおかしい。
そう思った時には既に、
僕の世界は崩壊し始めていたのかもしれない。
いつもより耳鳴りの音域が高い。
それだけではなく耳鳴りのする時間が長かった。
普段であれば夜間のみだったが、
今日は仕事がある日中に起こっていた。
そのせいでスタッフの指示も耳鳴りが邪魔して、
聞き取りづらいくらいにうるさい。
全く聞こえないわけではないが、
雑音が不快だった。
「TASUKUさん⋯大丈夫ですか?」
暴行された場所は足や鳩尾と、
幸にも服で隠せる部位だった。
腕は流石に隠せなかったので、
湿布と包帯で、
ギターの練習をしすぎたと誤魔化し、
誰にも言わなかった。
理由は絶対に心配させるから。
「今日はちょっと耳鳴りがひどくてね」
隠し事をする時いつも心苦しくなるが、
本当のことは言えなかった。
会社のイメージに響いてしまい、
他の誰かが責任を負わされる羽目にはなってほしくない。
「え!?
病院は行きましたか?」
そう言ってスタッフに大層驚かれた。
ああ、
そういえば今までは大丈夫で誤魔化して、
一度も調子悪い時に弱音を吐いていなかったなと思い返した。
だからこんなにも自分以上に、
スタッフの方が慌てているのか。
正直あまり行きたくはないけど、
心配させるくらいなら検査くらいはしておくかと思い、
仕事が終わったら行くと答えた。
「ぜひそうしてしださいね。
TASUKUさんには笑顔が一番ですから!」
本当は女性嫌いではあるが、
スタッフは身内なので、
一緒にいても安心できる存在だ。
彼女の笑顔を見て、
つられて僕も笑う。
こんな日常が愛おしい。
この時はまだ知らなかった。
何気ない日常なんて一瞬で壊れてしまうことをーーーー
「は?
今⋯⋯何て?」
「ですから星崎さん、
あなたはーーーーー」
『将来的に突発性難聴を発症する疑いのある予備軍です』
そう言い直されても、
全く理解なんか出来なかった。
暴力とアンチの次は突発性難聴?
この僕が?
僕の世界から音が消えるかもしれないってこと?
耳が聞こえなくなったら音楽はどうすればいい?
続けられなくなるってこと?
そんなことになればまたアンチで叩かれるの?
僕は絶望した。
愛おしいと思えていたはずの世界が、
罅割れて壊れていく気がした。
いや、
僕は確かに壊れる音を聞いたんだ。
「うああぁっ!!!」
嘘だ。
誰か、
嘘だと言ってよ。
何で僕を選んだの?
どうして僕がこんな目に遭うのだろうか。
何か悪いことした?
息苦しい世界がさらに息苦しくなって、
酸素の取り込み方すら分からなくなるほど、
僕は思い切り泣き崩れた。
僕の取り乱し具合に主治医の表情が曇った。
ああ、
そうか。
病気って申告する方もされる方も傷つけるのか。
その表情で僕はやけに冷静になれた。
これは嘘じゃなく、
紛れもない現実なのだとーーーー
こういう時真っ先に声を聞きたくなる人は、
優里さんだったはずなのに、
僕は何故かーーさんに会いたくなった。
雫騎の雑談コーナー
はい!
いかがでしたか?
星崎の体調不良ネタでございます。
まあ俺も28の夏頃だったかな。
突発性難聴予備軍の診断を受けて、
いっそのこと自殺したろうか?とか、
音楽を嫌いになってやろうか?とか、
本気で思ったんだよ。
でもどっちも無理でさ。
ああやっぱりそれでも俺は、
『音楽って存在を心の底から愛したいんだ』
って気づけたから。
予備軍になってよかったよ。
だってならないままだったら、
そのことに今も気づけないでいたかもしれないからね。
病気に感謝だよな。
つーことで本編行ってみますか。
いつもとは違う不自然な耳鳴りの不快感から、
嫌々ながらも病院に向かった星崎は、
難病の予備軍と診断されてしまうんです。
病気って一人じゃ立ち向かっていけないですからね。
誰かに縋りたくもなります。
果たして星崎が会いたくなった人物とは?
次回もお楽しみに〜♫