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「あの、そういえば事前に聞き忘れちゃったんですけど、貴仁さんって嫌いな食べものとかありますか?」
本来ならお弁当を用意する前に訊いておくべきだったよねと、今になって打ちひしがれる。
「嫌いなものは、特にないな」
彼の返事に、凹みかけた気分が一瞬でパァーッと華やぐ。
「……それに、君が作ってくれたものを、嫌いなわけもないだろう。どれも好きに決まっている」
照れた様子で少しぶっきらぼうに、思わず頬が緩んじゃいそうな言葉をかけてくれる彼に、朝早く起きて一生懸命に作ったかいがあったなと、胸にしみじみと感じ入る。
──やがて公園には一時間足らずで着いて、荷物を手に園内に入った。
大きな木が影を作る芝生の斜面を見つけ、シートを広げて並んで座る。
「運転お疲れさまでした。お昼にしましょうか」
時間は十一時を回ったぐらいで、まだ少しばかり早いけれど、ランチタイムにすることにした。
「先にお茶でも」と、紙コップに注いだ冷茶と取り皿とを渡して、バスケットからいくつもタッパーウェアを取り出していく。
全部のフタを開け終わると、私にも水筒からお茶を注いでくれていた彼が、
「これは、すごいな……」
と、感嘆の声を漏らした。
「ふふっ、ちょっと頑張っちゃいました」
照れながら口にする。
「どれも美味しそうで、迷いそうだ」
「お皿を貸してくれたら、私が取りますよ?」
「ああ、お願いする」
受け取った紙皿に、手まり寿司に唐揚げに、アスパラのベーコン巻きと、同じくプチトマトのベーコン巻き、ピックに刺したうずらのゆで卵にと盛り合わせていく。
「とりささみと水菜のサラダも、どうぞ」
ごはんと肉系のおかずに、サラダも添えて、彼へ差し出した。