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女の子みたいな男の子は数多く存在する。
私の隣にも今、それが存在している。
でもそれは、”女の子みたいな男の子” どころではなく、 “女の子より女の子な男の子” だ。
流「リップはちゃんと塗れって言ったやろ!!」
貴「いでっ!ご、ごめんって!」
流「またカサカサになってるやん…絶対ダメ!ちゃんとぷるぷるにしとかんと可愛くないやろ!」
貴「はい…塗ります」
彼は大西流星くんと言って、女の子よりお肌はツルツルでもちもち、唇もむにむにのプルプル、髪の毛はサラサラの黒髪で、全体的にふわふわとした空気をまとって生きている女の子より女の子な男の子である。
更に男女共にモテにモテまくり、もはやこの世の女全員落とせるのでは?と言うほどのスペック。
ノリが良くて美容に詳しくてメイクも好きで、いい匂いがしてイケメンでさらに腹筋は割れている。
好きにならない人はなかなか居ない。
そんなやつの幼なじみが、私。
流「帰るでー!さっさと荷物もってやー!」
貴「はいはい…お嬢様は今日も元気だねぇー」
流「お嬢様ってなんやねん、とりあえず今日はクレープ買って帰ろ!」
貴「女子か…!」
流「?なんか言った?」
貴「…別に?」
こんなきゅるんきゅるんな毎日をおくる彼だが、可愛いと言われることを嫌う。
それも私からの可愛いにいつもブチ切れて来るのだ。
他の子は連発しても大丈夫なのに。
実際に声をかけてみましょう。
貴「…流星ってほんと可愛いよね?」
流「…あ?あんた分かってんのになんでそれ言うん?喧嘩したいん?なあ」
こういう感じで、ブチ切れモード全開になる。
流「嬉しくないねん」
貴「…他の子に言われた時はありがとうって返してるくせに。」
クレープを食べながら喋る。
私たちは幼い頃から一緒で、お互いの人生をだいたい知っている…つもり。
私は昔から雑で、流星とは真逆の男っ気の強い女だった。
今は頑張ってるけど、結局は流星より可愛くなんてなれない。
流「…他の子は別にええの」
貴「なんかショック…」
流「…かっこええとか思わんの?」
貴「え?思わないけど?」
流「…マジでコロス」
貴「え?!なんでよ!!?」
ポツッ…..
貴「あ、雨?」
流「ちょ、待ってやばい!走るで!」
貴「ちょっ、いてててて強い!引っ張る力強い!!」
喧嘩が始まるかと思えば土砂降りの雨。
全速力で自分たちの家まで走る。
家は隣なので、普通にバイバイして終わりで良かったはずなのに…
流「…あ、引っ張ってる勢いでそのまま連れてきてもうたわ」
貴「私は物か、はぁ”、はぁ”、きっつ…」
何故か引っ張られながら流星の家にぶちこまれてしまった。
流「雷…凄いなぁ」
貴「めっちゃ鳴り出したね…変な天気」
流「とりあえず…お風呂入る?」
貴「え、いいの?」
流「いいよ、今日みんな帰るの遅いし。」
貴「やったー、あっでも着替えないや」
流「洗面台まで持っていくよ。僕のジャージでいいよね?」
貴「まじ?ありがと〜、じゃあお先に」
流「ん、上がったら僕の部屋来て」
貴「はーい」
と、流れでお風呂を借りたけど冷静に考えたら家主の流星が先に入るべきだった気がする。
貴「あがったよー、ジャージめっちゃピッタリ、上はちょっとでっかいけど。」
流「…髪の毛乾かさないの?」
貴「あー後でいいかなって。寒いでしょ?早く入ってきなよ」
流「ふーん、、じゃあ入ってくる。」
上がったあとすぐ2階の流星の部屋に行って、お風呂に入るように言った。
ここからは流星の部屋に私だけ…
貴「よし!いやらしいものが無いかしっかり探そう!!これは私の使命だ!!」
訳の分からないクソみたいなことを意気込んで、あちこち勝手に散策する。
触るなとは言われてなので、、という言い訳を胸に、引き出しやらベッドの下の箱やらを漁る。
貴「…ベッドの棚って絶対なんかあるよな」
ぶっちゃけ、探してはいるけどホントに見つかった時の絶望は半端ないだろう。
私は彼の部屋からエロ本を見つけた場合、どのような反応をすれば良いのだろうか。
貴「…よし、とりあえず見よう」
私は彼の可愛い顔を思い浮かべながら、ベッドの引き出しを開けた。
貴「…ぁ」
流「あがったよー髪乾かし…て…何してんの?」
貴「…いや、ごめん髪乾かすね、ありがとう」
流「いや、うん…行ってらっしゃい」
とんでもないものを見た。
まさか彼女いるの…?
知らなかったなぁ。
流星side
僕の幼なじみは、女子だけどガサツでとても大雑把な子だ。
高校に入って、身なりに気を使い始めたときはびっくりした。
おすすめのリップを教えて欲しいと言われて、プルプルになる良いリップを教えた。
アイロンの使い方を教えて欲しいと言われて、ストレートアイロンを使ってストレートにしたり、コテでくるくる巻く方法を僕が知ってる限り教えた。
気付いたら、彼女は色んな男から言い寄られていた。
でも彼女は気づいていない。
僕のなのに、僕の好きな人なのに、隣は僕のもの、どんな形でも僕が隣じゃないと行けない。
それなのに、彼女は他の男とヘラヘラ笑って喋ってる。
流「ふぅ、余裕ないな…」
今日もわざと家に連れ込んだ。
家族はみんな遅く帰るって言ったけど、本当はみんな用事で明日のお昼頃に帰る。
今日、捕まえたい。
絶対逃がさない。
僕が分からせないといけない。
君は僕のだって。
流「あがったよー髪乾かし…て…何してんの?」
部屋へ戻ると、何やら僕のベッドに乗りあげる彼女。
背が向けられていて、何をしているのか視覚で見えない。
声をかけると、そそくさと彼女は下へ降りていった。
荷物はここにあるし、出ていくことは無いはず。
彼女が先程いた場所にもう一度目をやる。
流「…..!!」
一瞬でわかった。
彼女はベッドの引き出しを見たんだ。
少し開いていて、まさかと思い引き出しを自分で開ける。
流「…ああぁああ”!!」
それは、0.1とかかれた箱。
僕が何故これを友達に貰った。
“モテるんだから持っとかないと大変だぜ!?”
と言われ、謎に持たされたそれを使うことは無いと思いベッドの引き出しへと入れていたのだ。
流「まさか…ここに来て漁られるとは思わんかった…」
だが、バレてしまったことは仕方ないのでそっと閉じて冷静になろうとエアコンの温度を下げた。
貴「ねぇなんか寒くない?この部屋」
自分の中で起こった先程の混乱を、髪を乾かしながら少しずつ整理して流星の部屋へ戻った。
すると、何故かとんでもなく部屋の温度が下がっていた。
流「…..みたんやろ」
この一言とこの部屋の寒さで、自分の体温は一気に下がった。
死ぬんじゃないか私。
貴「えぇー…ナニヲ?」
苦しすぎるカタコトな喋り方で、向こうはドン引きの顔。
そんな顔で見ないで…分かってるからえんぎへたなのは…。
流「…はぁ。これ使ってないから1回も」
貴「へ…そうなの?」
流「箱空いてなかったやろ。ちゃんと見た?」
貴「いや…でも、何箱も持ってた可能性も…」
流「あーめんどくさい」
貴「そ、そんな事言わなくても!!」
流「こっちきて?ちょっと話そ」
貴「で…電気付けていい?とりあえず」
流「ダメ。はよきて」
雨は未だに強く降っている。
薄暗い部屋
ベッドの上
引き出しにはゴム。
これって…
貴「いや私相手にあるわけないだろ」
流「何1人で急に喋ってんの?とりあえずこっち向いて」
貴「はいっ、」
流「…好きやねん」
貴「…その、えっち…が…?」
流「はぁ!?何言ってんねん!?」
貴「いやいやいやいや今の流れだと!?今の流れだとそうかなって!?」
流「違うやろ!?目見て言ってんねんあんたの事が好きって話やろ!?アホやん!」
貴「あんたの事なんてそんなの言ってくれなきゃ分かんないよ主語がないのよ!主語大事だよ!?」
流「分かったから早く返事せぇやぁ”!!」
貴「分かったからちょっと待ってよ!?こっちは考え…て…返事?」
流「好きやって言ってんねん、告白してんのやけど?まだ分からんのポンコツ」
貴「…誰が誰を?」
流「…俺が、あんたを」
貴「流星が…私を?」
流「うん」
貴「…奥さーんご冗談を〜」
流「誰が奥さんやねん。冗談ちゃうわ」
貴「…えっと、、?」
流「そっちはどうなん。好き?」
貴「…すき」
流「ッ…どういう好きなん?」
貴「…分かんない」
流「…やったら分からせたる」
近くて、なんか時間がスローに感じた。
一瞬触れた唇は、ふっと一瞬震えた。
カッと熱が顔に集まって、彼の目を見れなくなった。
流「…可愛ええ」
貴「な…なん…いやゃ…」
流「いや?俺とは違う好きなん?」
貴「わか…分かんない、」
ふわふわした甘ったるい空気に酔いそうで、なんか嫌だ。
流「まだ分からんなら、分かるまでしようや?」
貴「…うん、」
流「口、開けて?」
貴「…あー」
流「そんな開けんでええねんなんか食うんかアホ」
貴「え、どのくらい?」
流「ぁ、こぉくはひ(このくらい)」
貴「…こお?」
流「ん、じょうず」
貴「ぁぅ…んぅ♡」
流「は、可愛ええ、何その声」
貴「や、、もういい」
流「もう分かったん?」
貴「…うん」
流「返事、聞かせて?」
貴「ぅ…す…好き…だとおもう」
流「ほんま?」
トロトロして、もっともっとって思って、ギュッと彼の服の袖を握る。
貴「ほんと…」
流「目溶けちゃいそうやん、眠い?」
貴「ううん…眠くない」
甘い雰囲気が私の心を押してきて、気持ちが押し出されそうで、何とか飲み込みたいのに喉から出た。
貴「もっと…」
流「ッ…え?」
貴「…もっと先もできるよ?」
体全体に熱が走って、何も考えられないぽわぽわした頭で口から出た言葉は、彼のエンジンの燃料には多すぎたようで。
流「…俺もできるよ」
ドサッと倒れたベッドはふかふかで、あのキスの先を見るにはとてもいい場所だと思った。
貴「同じか、良かった」
流「さっき濡れたから、風邪ひかんように2人で暖まろうや」
私の上に居る彼の顔はいつもの可愛いとは違う、男の子の顔。
私は今からこのオオカミに食べられてしまう。
貴「うん、ちょうどいいね」
流「うん、ちょうどええ」
そう言って私達は、強い雨が止み始めた夕方の光をカーテンでさえぎって、ベッドに沈んだ。
《男の子》